(サイエンスポータル 2009年3月12日)
一度体内に侵入した抗原を、ずっと覚えている生体防御の仕組みに
欠かせない免疫記憶機能の担い手が、
「ホスホリパーゼCγ2(PLCγ2)」と呼ばれるリン脂質分解酵素であることを、
理化学研究所の研究チームが突き止めた。
同研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの
黒崎知博・分化制御研究グループディレクターと疋田正喜・上級研究員
(現・京都大学医学研究科)らが着目したのは、Bリンパ球の働きに
欠かせないことが知られている酵素であるPLCγ2をつくるPLCγ2遺伝子。
Bリンパ球は、体内に侵入してきた異物(抗原)を認識して、
それらを排除するためのタンパク質である抗体を作りだす役目。
Bリンパ球が、抗原と出合って活性化したとき、
PLCγ2遺伝子だけが機能しなくなるようなノックアウトマウスを開発、
ウイルスなど抗原の代わりになるタンパクを投与して、
PLCγ2の役割を詳しく調べた。
この結果、2度目に抗原を投与するとそれに反応して増えるはずの抗体は、
通常のマウスに比べ最大10分の1しか産生されず、
抗体を作るBリンパ球も最大20分の1に激減。
最初の免疫で、免疫記憶を正常に形成した後、
PLCγ2遺伝子を機能しなくさせることができるノックアウトマウスも開発し、
同じ解析をしたところ、最初の免疫応答の際に生成し記憶機能を持った
Bリンパ球は、PLCγ2遺伝子の機能喪失後に約6分の1に減少。
これらの結果から、リン脂質分解酵素「PLCγ2」が免疫記憶の形成に加え、
維持にも不可欠であることが分かり、
今後、高性能なワクチンや免疫賦活剤の開発への応用が期待される。
http://www.scienceportal.jp/news/daily/0903/0903131.html
0 件のコメント:
コメントを投稿