(日経 2009-03-09)
環境管理の国際規格である「ISO14001」が、1996年にスタートして12年。
国内の認証取得組織数は、3万件近く。
多くの企業の審査をしてきたが、CO2削減成果につながっている例は少ない。
環境ISOは、脱炭素社会の実現に役に立たないのだろうか?
「ISOを取得した企業で、経営に役立てているのは2割もない」
多くの企業では、ISO14001がお飾りに。
製薬会社の環境担当者から、内部監査機能があるISO14001認証を取得したが、
「環境リスクマネジメントのために、グローバルな環境監査をしたい」
という希望を聞き、驚いた。
ISOの環境マネジメントシステム(EMS)が機能すると見られていなかった。
ISO14001は、自主的な取り組みなので、認証取得という目的達成後は
無理に努力しないというのは、一種の合理的な経営判断かも。
ISOの仕組みは、マネジメントサイクルやチェック機能などよくでき、
うまく使えば環境パフォーマンスの向上に。
取得に相当な費用と時間をかけながら、ISOを生かしきれないなら、
結果的に大きなムダ。
CO2削減の目標設定を挙げよう。
2006年JAB環境マネジメントシステム運用状況調査報告書によると、
ISO14001取得組織(回答1142組織)のうち、
86.2%はCO2排出抑制活動を実施。
総量や原単位を何%削減すると掲げるだけの企業も多く、
どのくらいが実際に効果を上げているかは疑問がある。
ISOの強みは、しつこい管理の仕組みにある。
目標を言いっぱなしにせず、進ちょくを管理するだけでなく、
内部監査や外部の認証機関によりチェックする。
問題があれば、仕組み上の根本原因を探しだして、改善する。
類似の問題点を検討し、発見した問題を「しゃぶりつくす」ように徹底的に生かす。
この強みを生かすには、設定の根拠や、取り組み努力との因果関係を
明確にする必要。
絶対量の削減か、絶対量を売上高などの事業活動の量で割った原単位の削減を
目標に設定すると、売り上げ動向により達成度が左右。
削減目標が達成できなくても、「売り上げが増えて、稼働率が上がったから」、
「夏が暑くて空調の負荷が大きかった」といったように、
気温など他の要因による説明がされ、原因の追求が不十分に。
結局、次の改善策に結びつかず、対応策として目標を緩くする方向に。
具体的な節約量を目標とすべき。
実際の削減総量や原単位がどうなろうと、手段・努力をきちんと実行して
結果を出したかどうかが反映されやすい。
細かい事例を積み上げて目標を作ることも重要。
400ワットの水銀灯の無駄な点灯を外すなど、年間延べ1000時間削減すれば、
400キロワット時の節電となり、1キロワットあたりCO2排出係数が
500グラムとすると、CO2削減量は200キログラム。
ある企業は、年間70万円を節約し、CO2量も削減。
積み上げ計算をすると、達成できなかった場合、
原因を追究して粘り強く改善できる。
ISOの真骨頂を生かしやすい。
簡単なことを言っているようだが、こういう計算をしている企業はまれ。
大概は最初からあきらめ、空調の温度を何度に固定するとか、
機械の動きの無駄をなくす、といった手法に走る。
これだと大ざっぱな計算しかできず、削減率目標を決めてあとは頑張ろう、
ということになってしまう。
どこに改善余地があるかを追究し、要因分析ができる管理体制が
整備できれば、ビジネスの効率化だけではなく、まだ達成企業が少ない
「事業活動そのものを、環境配慮型に転換する活動(資源循環型事業など)」
にも取り組める。
社会全体の環境負荷を減らす「省ビジネス」などのチャンスも、
見つかるかもしれない。
CO2削減は、各企業が取り組まなければいけないこと。
せっかくのISO取得を、成果に結びつける重要性は今後高まる。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090305.html
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