2009年3月24日火曜日

学士力(11)欧州大学協会(EUA) スーソック事務次長に聞く

(読売 3月20日)

欧州では、学生も改革を担い、プラス思考の評価が後押しする。

欧州の高等教育に共通の枠組みを作るボローニャ宣言の推進機関、
欧州大学協会(EUA)のアンドレー・スーソック事務次長は、
欧州の大学教育の質向上に、学生自身も大きな役割を果たしてきた。

「フランスでは、学生が副学長を務める大学が珍しくない。
ポーランドやイタリアでも、学生の自治会が大学の理事会に参加」
教職員と対等の構成員として、理事会にも参加させる風潮は、
1968年の5月革命以降、顕著になった。

「学生に権限と責任を持たせることで、学習環境づくりが進み、
授業により積極的に参加する雰囲気ができる。
受け身の授業より、実のある学びとなるのは自明だろう」と効用を強調。

リーダーシップや交渉術など、社会人になってから役立つ技術を、
大学経営への参画を通して身に着けることができるという利点。

スロベニアでは、学生の組合が奨学金サービスを開始。
欧州学生連合はボローニャ宣言以来、2年ごとに進展状況を確認し、
意見を表明してきた。学生の活躍は、欧州全体に広がっている。

EUAへの加盟には、日本円に換算すると約32万円、
評価を1回受けるには400万円以上かかるが、
ボローニャ宣言に29か国が署名した9年前には
500だった加盟校は、800まで増えた。

「他の大学のコピーをしていれば、すむ時代ではない。
良いも悪いも全部さらけ出し、大学同士で学び合うことが
質保証につながることなのだと理解」

EUAの評価プログラムは、<対話>を最も重視。
「学内外の関係者が改善に向けて対話する――
それがあるべき大学評価の姿だ。
多様性を認めながら強みを引き出すには、対話が不可欠だ」

大学が用意する自己評価は、約20ページ分。
日本と比べて、はるかに少ないと言っていい。
それを大学関係者らで構成する評価チームが査読した上で、調査に入る。
最終的に出すのは、「大学強化案」だ。
「自分たちの大学に比べ、この点が優れている。
もっとここを伸ばした方がいい」といったプラス思考の評価。
それに向けて、関係者の徹底的な対話が積み上げられる。

「評価疲れ」
日本の大学関係者の間には、そんな言葉がある。
日本の大学には、学校教育法に基づく認証評価機関の評価が
義務づけられ、大学としての適合・不適合を見定める評価が下される。
「膨大な準備作業に比べ、大学が得るものが少ない」
EUAのプログラムには、アジアの大学も関心を示し始めている。

小手先だけの授業改善では、学生を伸ばせる大学には変われない。
大学の評価方法も、再考する必要はないだろうか。
欧州の取り組みは、そのことを示している。

◆アンドレー・スーソック

EUAで高等教育機関の評価制度開発担当。
米カリフォルニア大バークレー校、スタンフォード大などで教べん。

◆5月革命

パリ大学の学生運動が、リセ(高等中学校)や地方へ飛び火し、
フランス各地で警官隊と衝突を引き起こした。
学生への支持は、当時のド・ゴール政権への不満を持つ労働者階級にも広がり、
欧州史上最大と言われる200万人規模のストライキに発展。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090320-OYT8T00294.htm

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