2009年3月25日水曜日

クローズアップ2009:温室効果ガス削減、日本の中期目標 6案並び検討迷走

(毎日 3月16日)

2020年までの温室効果ガス削減目標を話し合う
「中期目標検討委員会」(座長・福井俊彦前日銀総裁)は、
いくつかの選択肢を示す方向で、議論が進んでいる。
麻生太郎首相は、6月までに目標を決めると明言。
六つの案は、90年比で7%増から25%減まで幅広く、着地点は見えない。
遅れる決定は、温暖化対策の国際交渉をリードしたい日本の思惑に暗い影

「世界に通用すると同時に、実行が可能なこと」
中期目標について、麻生首相はこんな条件を挙げる。
産業界と環境団体の意見の隔たりは大きく、条件を満たすことは簡単ではない。

選択肢のうち、最も厳しい「温室効果ガスの排出量を、90年比の25%削減」
国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が、
「温暖化の影響を最小限に抑えるには、
先進国で25~40%削減が必要」との指摘に対応。

実現には高いハードルがある。
国立環境研究所の試算では、一般家庭1770万戸に太陽光パネルを設置し、
電気自動車など次世代自動車が新車販売の約8割を占めることが必要。
環境省などによると、05年現在の太陽光パネル設置世帯は約32万戸、
次世代自動車の割合も2%以下。

電力会社で組織する電気事業連合会は、
「太陽光パネルを設置できる住宅は、新築を含め約2000万戸。
9割近い住宅への設置が必要、強制的な措置がないと困難」
日本自動車工業会も、「20年までの次世代自動車への切り替えは限定的」

「90年比6%増」は、現在の省エネ努力を続けるだけの場合に相当。
この案は、「国際的な批判を浴びる」との声が強い。
最新の省エネ技術が最大限導入された場合の「4%減」案は、
「努力できるぎりぎりの数字」(電力会社)として有力候補の一つ。
IPCCの指摘からすれば、「世界に通用する」案とは言えない。

福田康夫前首相は昨年6月、「50年までに60~80%削減」という
長期目標を表明、行動計画が閣議決定。
厳しい中期目標にしないと、長期目標の達成もおぼつかない。

◇ポスト京都枠組み交渉、主導権争いで出遅れ

中期目標は、京都議定書の期限が切れる13年以降の温暖化対策の
国際的枠組みを決める交渉の焦点の一つ。
各国は、12月に開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議
(COP15)での合意を目指す。
自国に有利な決着を狙う交渉の主導権争いが本格化する中、
日本は出遅れ感が否めない。

EU(欧州連合)は昨年、域内全体の排出量を90年比20%減とする
中期目標に合意。
「先進国全体で30%減」など、積極的な提案。
途上国は、「地球温暖化を招いた先進国」が率先して、
「25~40%減」の厳しい目標を持つよう求めている。

世界自然保護基金日本委員会は、温暖化の影響を受けやすい
小島嶼国などから、「25~40%減でさえ不十分」との声。
日本の選択肢に「40%」がない点に、
「世界をリードする意欲が欠落していると見られかねない」と批判。
90年比増加の案を検討していることだけでも、国際交渉の妨げに。

EU議長国、チェコのブルシーク環境相は、
「IPCCが『25~40%』という数値を先進国に突きつけた今、
いくつかのシナリオを議論している時間があるのか。
EUは、拘束力のある目標を示した。
他の先進国も同じようにしないと、途上国に責任ある貢献を頼んでも、
『責任はそちら(先進国)にある』と言われかねない」

ブッシュ政権時代、温暖化対策に後ろ向きだった米国。
オバマ大統領は、「90年比プラスマイナス0%」に相当する中期目標を提案、
環境・エネルギー政策で景気回復と雇用創出を目指す
「グリーンニューディール」を掲げる。
太陽光など再生可能エネルギーの拡大が柱で、温暖化対策と共通点が多い。

環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、
「再生可能エネルギー分野は、産業としても世界の主流になりつつある。
日本のように導入に後ろ向きだと、産業の成長の芽をつぶしてしまいかねない」
==============
◇中期目標

温室効果ガスの2020年ごろまでの排出削減目標。
日本の目標は、「中期目標検討委員会」が示した選択肢を基に、
地球温暖化問題に関する懇談会」(座長・奥田碩トヨタ自動車相談役)で協議、
国民の意見も募った上で政府が決める。
13年以降の国際的な温暖化対策の枠組みでは、
先進各国に削減目標を割り当てるが、日本の目標と一致するとは限らない。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/03/16/20090316ddm003040087000c.html

0 件のコメント: