2009年3月28日土曜日

人材投資の重要性 企業は再認識を

(日経 2009-03-16)

東大教授・高橋 伸夫氏
東北大経済学部助教授などを経て98年から現職。
専門は経営学、経営組織論。
著書に「虚妄の成果主義」などがある。51歳。

----近年、企業の人材育成がおろそかになっているのでは?

「バブルが崩壊して以降、ここ10-15年はそういう面はあった。
派遣社員など非正規従業員が増加したのは、
人材育成がおろそかになっていた1つの証拠。
製造業の工場では、若い正社員が非常に少なくなっていた。
同じ経営資源であっても、金は簡単に集まるが、人は育てるのに時間がかかる。
経営者はそれを理解していながら、実行してこなかった。
横並び意識の強い経営者が(コスト対策などのために)、
他社をまねて派遣を使うようになった面も」

----不況の今、人を育てる重要性を見つめ直す好機では?

「IPO(株式新規公開)ブームに見られたように、
もうけたいだけなら人材の育成を考えなくて済む。
ある時代だけを謳歌するこうしたキリギリス型でなく、
ずっと生き延びるアリ型の企業を望むなら、人を育てなければならない

「経営戦略論の分野では、利益の源泉を企業自身に求める流れができた。
企業が持つ人材、歴史、ロケーションなどに利益の源泉があるという
考え方で、リソースベース理論。
それまでは、自社製品の市場シェアなどで戦略を決める考え方が強かった」

----人材が育つシステムとして年功制を支持。

「人が働くのは、仕事が面白いから。
年功制では、最初は未熟で仕事がつらくても、頑張れば面白い仕事ができる
見通しを新入社員が持てる。
『未来』の重みがあり、安心して働けるシステム。
私は、『未来傾斜の原理』と呼んでいる

「単に賃金を増やしても、不満を防止できるだけ。
だから成果主義は間違っている。
必要なのは、人件費にコスト意識を持つことではない。
10年後、20年後の未来を見据えた人材への投資こそ求められている」

----人材への投資とはどんなことか?

「職場の内外での教育は、重要な投資だが、それだけではない。
人が真剣に働くのは、尊敬する人のように自分がなりたいから。
その人の近くで一緒に働かせるのも、会社を成長させる投資になる」

リソースベース理論の源流の1人、ペンローズという学者は、
これを『隠れた投資』と名付けた。
1人で大企業を管理するのは無理で、経営幹部を意味する
マネジメントチームが育てばよい。
これには、仕事を共にする経験が必要であり、
様々な費用は投資でなく、通常の当期費用として計上されている。
視点を変えれば、人が育つ投資には色々あるということ」

----海外企業は世界的規模の人材確保に躍起。

「日本企業が世界から人材を集めるといっても、
現実には日本語が1つの壁になる。
グーグルなど海外のグローバル企業は、英語圏から広く採用できる強み。
日本企業は対抗するなら、日本語ができる優秀な外国人を雇うとか、
日本語を教えてでも、優秀な人材を取り込んでいくという発想をすべき」

「優秀な人やスタープレーヤーばかり集めても、会社は成り立たない。
サポートする人たちがいてこそ、初めて活躍できる。
研究の世界でも、チームとして成立しているところほど研究は進みやすい。
優秀な学生たちによく言うのだが、うらやまれる仕事をする立場になっても、
自分は助けられて成り立っていることを忘れてはいけない

http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/world/world_2nd/wor090316_2.html

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