2010年12月4日土曜日

総合学習を生かす(3)「聞き書き」で言語力養う

(読売 11月24日)

京都府の山間部にある南丹市美山町。
全国有数のかやぶき職人、中野誠さん(42)の自宅で、
同市立美山中学校3年の竹内愛さん(15)が質問。
「職人になるのを家族に反対されても、
なぜそこまで強い思いがあったんですか?」

「不安はあった。
だけど、生きてきた証しとして、人の役に立ちたいという思いはあった」。
かやぶき屋根の土間でたき火を囲み、会話がはずんだ。

美山中では7年前から、3年の秋に地域の人の生き方を取材する
「聞き書き」に取り組んでいる。
地域の魅力を見直す一方、過疎化や高齢化などの課題に接し、
自らの進路を考える機会にしようというもの。

今年は、生徒28人が林業家や町おこしの起業家、
看護師ら15人を取材。
「すごく面白かった」と、すがすがしい表情で学校に戻ってきた。

聞き書きは、2003年、同中が国の「国語教育推進校」となったのを
機に始まった。
「言語力の向上」を総合学習の柱に据え、3年間に習得した読解力や
表現力を活用する場として、聞き書きを位置づけた。
「体験で終わりがちだった総合学習に、しっかりした軸が生まれた」、
中村恵子・教務主任(60)。

事前に資料を調べ、質問項目を相手に手紙でわかりやすく
伝えるのも学習の一環。
取材後、メモをいったん文章化し、足りない点を電話や手紙などで再取材。
約1か月半かけて、「私」を主語に語る形の文章に仕上げる。

相手があるだけに、完成度が求められるが、
教諭らの丁寧な赤ペン指導が支える。
視点はズレていないか、文章は論理的か。
手間はかかるが、文章のくせや好みが偏らないよう、
一つの作品を複数の教員が目を通す。

体験は、思考を経て文章にして初めて自分のものになる。
一人称で語ることで、取材相手の人生を追体験できる」、中村教諭。

全学年共通で年15時間、言語力の基礎を培う「輝きの時間」と題した
独自の時間を確保し、図解表現や要約、説明法まで、
実践的に学ぶ時間にあてている。
生徒会には「文集部」があり、生徒は行事のたびに文章執筆を求められる。

町内には塾もないが、京都府内でも学力はトップレベル。
弁論大会などの入賞者も多く輩出。
「総合」を戦略的に活用しつくすことで、学校の底力を育てている。

◆聞き書き

語り手と聞き手が対話を重ね、人生経験や思いを文章化する活動。
庶民の知恵や技術を歴史に残す意義とともに、
言葉の選び方や聞く姿勢を育てる教育効果が注目、
地域学習やキャリア教育に取り入れる学校も多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101124-OYT8T00203.htm

企業が社員の禁煙支援 くじけにくい工夫で 値上げも契機に

(2010年12月1日 共同通信社)

10月に大幅に値上げされたのを機に、
たばこをやめようと思っている人も多い。
禁煙補助の内服薬を使った医療機関による治療を受ける患者は急増、
医薬品メーカーの製造が間に合わない事態も。
企業が、社員の健康などに配慮し、
禁煙を支援する取り組みが広がっている。

「始めて2週間くらいは仕事中にいらいらすることが多くて
つらかったけれど、その後は楽になった」
東京海上日動火災保険の本店で営業を担当する岩瀬靖史さん(32)は、
10~12月、同社が実施する禁煙支援プログラムに参加。
1日10本程度吸っていたが、「10月以来1本も吸っていません」。

2007年から毎年実施、ことしは全社で過去最高の146人が参加。
1人ではくじけやすいのでは、と原則2人一組で禁煙に
チャレンジしてもらうのが特徴。
岩瀬さんは同じ課の後輩、竹内将史さん(24)を誘った。
「値上げがちょっと痛いな、と思っていたところに
先輩から声をかけられ、決心した」と竹内さん。

参加者には、ニコチンガムなどの禁煙補助剤を使ってもらい、
徐々にニコチン依存度を低下。
看護師が、生活で気をつける点や気分転換の方法などについて、
きめ細かくメールを送って応援。
昨年までの達成率は、参加者の30~40%台、
「今年は、ぜひ50%を超えてほしい」、
健康管理室でプログラムを担当する保健師の太田一果さん。

来年4月、グループ企業のほぼ全事業所で、
休憩時間以外の就業時間内の全面禁煙を決めたのがオリックス。
三十数社の社員約1万3千人が対象。
7月から、各事業所で喫煙室を1カ所に集約。
来年7月、すべての喫煙室を閉鎖する方針で、
事実上、職場ではたばこを吸えなくなる。

担当する人事部所属の産業カウンセラー藤田万寿美さんによると、
「医薬品や食品メーカーでは、全面禁煙を実施する企業も出てきているが、
まだ非常に珍しい措置」
もちろん締め付けるだけではなく、サポートも拡充。

病院の禁煙外来で治療を受け、完治したとの終了証明書をもらえば、
健康保険治療の自己負担分の約2万円のうち、
1万円を会社が補助する「卒煙キャンペーン」を10月から導入。
来年3月までの予定、その後は健康保険組合が主体となり、
継続することも検討中。
産業医によるセミナーや個別面談なども実施。

オリックスグループの喫煙率は男性43%、女性18%、
ここ数年低下傾向にある日本人の喫煙率に比べ高い。
「いつかはやめようと思っていたので、いい機会だ」、
喫煙派の反応は肯定的なものが多い。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/1/129107/

臓器模型 歯科技工生かし 大津の入れ歯メーカー、手術練習用に開発

(2010年11月30日 毎日新聞社)

義歯や入れ歯を作る歯科技工士(国家資格)の技術を生かし、
大津市内の企業が、臨床医向けの手術練習用臓器や
血管模型の開発に成功。

従来のシリコンなどの模型は、1個数十万円と高価だったが、
コンタクトレンズなどに使われる特殊樹脂で安価に実現。
国の「地域産業資源活用事業」にも認められ、
来年度の実用化を目指す。

同社は、龍谷大瀬田キャンパス内に本社を置く入れ歯メーカー
「聖和デンタル」。
歯科技工士は、金属加工や製陶などの各技術を駆使する専門職種、
労働時間の長さに対し、収入が限られ、
就職後5年以内の離職率は8割に達する。
同社では、技工士の待遇改善のため、
新分野の開拓に力を入れてきた。

目をつけたのが、コンタクトレンズや洗濯のりなどに使われる
ポリビニルアルコール(PVA)。
今までは強度が低く、細かい加工の難しい樹脂だったが、
10年前、マウスガードを作る過程で水分を調整して加工する機械を開発。

医師が実技練習に使う実験用ブタを、手術室で使える練習施設は
国内に3カ所しかなく、ゴムやスポンジの練習模型も小さなもので、
1個十数万円からと高価なため、頻繁に練習することは難しかった。

同社は、PVAを使ってメスで切ったり縫合した際の
人体の感触・強度の再現に成功。
外観の風合いや色なども、本物そっくりに仕上げた。

同社の岡野仁夫社長(46)は、
「今後は、内視鏡をのぞきながらの手術が中心になり、
医師の技術がより重要に。
なるべく安く量産し、医学生に使ってもらいたい。
医療ミスの減少につながれば」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/30/129060/

2010年12月3日金曜日

受動喫煙で60万人が死亡 うち16万人が5歳未満 WHOが初の推計

(2010年11月29日 共同通信社)

他人のたばこの煙を、周囲の人が吸い込む受動喫煙による
死亡者数は、世界全体で毎年60万人に達するとの推計を、
世界保健機関(WHO)の研究チームが、
英医学誌ランセットに発表。
うち16万5千人を、5歳未満の子どもが占める。

受動喫煙による世界的な死亡者数の推計は初めて。
チームは、たばこ価格の引き上げや広告の禁止など、
国連のたばこ規制枠組み条約に基づく法規制の強化を訴えている。

チームは192カ国のデータを分析、15歳未満の子どもの40%、
非喫煙女性の35%、非喫煙男性の33%が、
受動喫煙にさらされていると想定。

これが心臓病やぜんそく、呼吸器感染症、肺がんなどを引き起こし、
全死亡の1%に当たる60万3千人が2004年に亡くなったと推計。

特にアフリカや南アジアなどの発展途上国で、
子どもの健康に及ぼす影響が大きかった。
WHOはこれまで、たばこが原因で死亡する喫煙者は
年間510万人と推計、受動喫煙を加えると570万人の
死亡原因になっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/29/128938/

超高速インターネット衛星『きずな』使い遠隔医療実証実験

(サイエンスポータル 2010年12月2日)

宇宙航空研究開発機構と東京都小笠原村は、
超高速インターネット衛星「きずな」を使用した遠隔医療実証実験を行った。

約1000km離れた小笠原村診療所と東京都立広尾病院を
衛星回線で結び、急を要する患者が小笠原村で発生した場合、
診断から治療に至る連携作業がどの程度可能かどうか、
確かめるのが狙い。

小笠原村診療所から、患者の放射線画像・エコー映像や
外傷状況のハイビジョン映像を伝送し、
これを見た広尾病院の医師が初期救急対応の助言や
緊急性・治療の優先度を判断したり、本土へ搬送できないような
重症患者に対し、頭蓋内出血による脳の圧迫を回避するため、
頭蓋骨に穴を開け、血腫を外に出して減圧するといった
救命救急処置を、小笠原診療所の医師に指示、指導も。

小笠原村診療所と広尾病院の間の既存回線は、
毎秒64キロビットしかないが、「きずな」を使用することで、
合計毎秒24メガビット、3チャンネルの各種データを伝送できる。

実証実験では、放射線画像なども見ることができる
ハイビジョンテレビ会議で、小笠原村診療所と広尾病院の医師とが
治療方針を議論、検討することも行われた。

実証実験に参加した小笠原村診療所の医師からは、
専門外の処置で、リアルタイムに実技指導が受けられるのは助かる」、

広尾病院の医師から、「映像が非常に鮮明で、
放射線画像のフィルムによる診断や技術指導を行うことが十分可能」、
エコーや内視鏡の映像を、現地と同じ画質で見ることができるため、
現地での処置の可能性が広がる」など、それぞれ評価する声が聞かれた。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012021.html

定年退職後、うつ症状や身体・精神疲労が回復、フランス調査

(2010年11月26日 BMJ)

文献:Westerlund H et al. Effect of retirement on major chronic conditions and fatigue: French GAZEL occupational cohort study. BMJ. 2010; 341:c6149

定年退職者14104人を対象に、
退職が呼吸器疾患や糖尿病などの慢性疾患、うつ症状や疲労に及ぼす
影響を、コホート研究で調査。

退職前後15年間にわたり、退職者の自己報告を分析した結果、
慢性疾患に変化は見られなかったが、
身体・精神疲労の緩和、およびうつ症状の改善が見られた。

http://www.m3.com/news/THESIS/2010/11/26/10868/

2010年12月2日木曜日

森林・林業再生に新たな制度提言

(サイエンスポータル 2010年12月1日)

農林水産省の森林・林業基本政策検討委員会
(座長・岡田秀二・岩手大学農学部教授)が、
森林・林業再生の道筋を示した報告書
「森林・林業の再生に向けた改革の姿」をまとめ、
鹿野道彦・農林水産相に提出。

国が決めていた森林区分を廃止し、地域の実情に合わせ、
市町村が柔軟に設定できるようにするなど、
地域の力活用を強く打ち出している。

報告書は、「木材の自給率50%以上」、
「すべての民有林で施行集約化が進み、持続的な森林経営と
計画的な施行が定着」など、10年後に実現を目指す目標をかかげ、
実行プランの工程表を示した。

目指す森林の姿として現在、国は「水土保全林」、
「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」という
3つの区分を決めている。

報告書は、これを分かりにくく、利用もされていないとして廃止し、
新たに「水源かん養」、「山地災害防止・土壌保全」、「快適環境」、
「保健・レクリエーション」、「文化、物質生産」、
「希少野生動植物の生息・生育地保全」など、
森林の重要な機能をより具体的に示している。

それぞれの機能ごとの望ましい森林の姿と必要な施業方法を
国、都道府県が例示し、それを参考に市町村が地域の意見を
取り入れて、森林を区分できるようにすることを提言。

効率的な森林作業と森林の多面的機能を持続的に発揮させることを狙い、
現行の森林施業計画制度に代わる
「森林経営計画(仮称)」制度の創設も提言。
計画は、一定規模以上の森林所有者や、森林所有者に代わって
森林経営を行う「特定受託者(仮称)」が、
独自に計画を作成することも認める、としている。

10月1日に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に
関する法律」に基づき、低層の公共建築物について、
原則としてすべて木造化を図り、高層・低層にかかわらず、
内装などの木質化を推進するなど、国が率先して公共建築物における
木材利用を推進することも提言。

地球温暖化対策としても関心が高まっている
木質バイオマスについても、石炭火力発電所における混合利用や、
チップ・ペレット・たきぎなどによる熱利用を推進するなど、
利用促進を求めている。

森林・林業の再生は、6月に閣議決定された「新成長戦略」で、
「21世紀日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」の一つに
位置付けられている。

報告書によると、国内の森林資源は戦後、積極的に推進された
造林事業の効果もあり、毎年、体積にして8千万立方メートルも
増え続けている。
他方、集約化や機械化の立ち後れなどによる
林業採算性の低下などから森林所有者の林業離れが進み、
資源が十分に活用されないばかりか、多面的機能が損なわれ、
荒廃さえ危惧される状況。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012011.html

有酸素運動+レジスタンストレーニング、HbA1cを改善

(2010年11月26日 JAMA)

文献:Church TS et al. Effects of Aerobic and Resistance Training on Hemoglobin A1c Levels in Patients With Type 2 Diabetes:A Randomized Controlled Trial. JAMA. 2010;304(20):2253-2262

2型糖尿病患者を有酸素運動群72人、
レジスタンストレーニング群73人、
有酸素運動+レジスタンストレーニング併用群76人、
対照群41人に、無作為に割付け比較。

併用群でのみHbA1c値が有意に低下し(-0.34%)、
最大酸素消費量も改善。
腹囲は対照群に比べ、すべての介入群で1.9-2.8cmの減少。

http://www.m3.com/news/THESIS/2010/11/26/10873/?pageFrom=prevButton

海苔抽出物に「抗腫瘍効果」 崇城大学など確認

(2010年11月26日 毎日新聞社)

海苔製造販売の大森屋(大阪市)は、
崇城大学生物生命学部(熊本市)の上岡龍一教授との
共同研究において、海苔の抽出物に高い
「抗腫瘍効果」などがあることを細胞と動物を用いた試験で確認。
第69回日本癌学会学術総会で発表。

上岡教授は、同学部応用生命科学科の所属で、
海苔を巡る同社との共同研究は08年にスタート。
同社によると、研究では海苔からの「抽出物」をカプセルに包み、
細胞レベルでの抗腫瘍効果と、動物レベルでの、免疫を活性化する
「免疫賦活効果」を調べた。

その結果、「ヒト乳がん細胞」に対し、顕著な「がん細胞増殖抑制効果」が
みられ、その効果は「がん細胞の死滅の誘導」を示唆。
マウスの自然免疫機能を高める可能性も示された。

同社が独自開発した抽出法による海苔抽出物を、
マウスに経口投与した試験では、ウイルスや細菌から体を守るため、
体内で作られるたんぱく質「インターフェロン」の産生を誘導、
ウイルスや細菌、がん細胞を死滅させる役割を果たす
「ナチュラルキラー細胞」を活性化させる傾向。

研究で使われた海苔からの抽出物は、大判の海苔80枚分に相当。
この80枚の海苔を摂取したとしても、
人はその大半を消化・吸収できない。
同社では、抽出法や摂取法の改良を図るなど、
研究を一段と深化させる方針。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/26/128887/

2010年12月1日水曜日

総合学習を生かす(2)思考力高める「ツール」

(読売 11月20日)

高齢者との交流で、子どもたちの思考力を高めている
新潟県小千谷市立千田小学校では、
ほかにどのような指導をしているのだろうか?

3~6年生の教室を訪れると、どの教室にも大きな字で
模造紙にまとめた表「考えを深める手立て」が、はり出されていた。

「〈1〉じゅんじょを考える(まず…つぎに…なぜなら)」、
「〈4〉くらべる(○○は△△より…。○○は△△にくらべて…)」など13項目。
子どもたちは、いつでも表を見ながら発言したり、文章を書いたりできる。

「このような学習は国語で行うが、4年ほど前から
『総合』でも積極的に指導。
多くの子が、自分の意見をきちんと表現できるようになった」、
目黒栄一教頭(51)。

同小では、ほかにも、「考えるためのツール」と名付けた
様々な図解方法を導入、情報の整理に活用。

「おいしく安全な1等米を作るポイントは何か」をテーマにした5年生の授業。
2人1組での話し合いでは、農家から聞いた情報や自分の考えを
付せん紙に書き、似たような意見や関係がある情報を線でつないで整理。

あるペアでは、「雑草を抜く」、「害虫から守る」、「農薬を使わない」
などの情報が複数出た。
話し合い、「雑草」と「害虫」、「農薬」は関係があると考え、線でつないだ。
「雑草には害虫が寄って来る。
人手が足りれば、なるべく除草剤を使わない」などとまとめた。
「虫を殺さない」、「愛情」といった少数意見など、
自分と異なる考えに気づくこともできた。

子どもたちの意見や発見が、教師の想定を超えることもある。
そこが面白い。
その点で、この方法は、子ども一人一人の考えを目で見ることができる」

教師が構想した学習の流れにとらわれ、
児童の思いや考えが二の次になり、形だけの授業になっていないか――
そんな教師たちの反省が出発点。

今では、子どもたちの考えを深める総合学習の方法を確立し、
教科の授業でも積極的に活用。

テーマや学習方法が学校に委ねられている総合学習。
学校全体でどう子どもを教育するのか、
教師たちが知恵を絞った成果は、確実に表れている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101120-OYT8T00172.htm

2型糖尿病、新薬に光 インスリン抑制のたんぱく質発見 京大研

(2010年11月26日 毎日新聞社)

京都大ウイルス研究所の増谷弘准教授らの研究グループは、
糖尿病患者の大半を占める2型糖尿病で、
インスリンの分泌や効きやすさの鍵を握るたんぱく質を突き止め、
英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に発表。
新たな治療薬の開発が期待。

2型糖尿病は、糖に対するインスリンの分泌が足りず、
効き方も悪いのが特徴。
しばしば肥満を伴う。

研究グループは、糖や脂質の代謝調整に関与するたんぱく質
「TBP-2」に注目。
これを持たないマウスと糖尿病の肥満マウスを交配。

この結果、生まれてきたTBP-2を持たないマウスは、
太っているのに血糖値は健康なマウスとほぼ同じで、
TBP-2がないと血糖値が改善される関係がうかがえた。

研究グループは、遺伝子を分析。
TBP-2がない場合、インスリンを働かせる遺伝子が筋肉内で
増加して効きやすくなり、すい臓でのインスリンの分泌も多い。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/26/128886/

がん予防 食事で 発生要因の35% 全粒穀物、青魚など効果期待

(2010年11月24日 毎日新聞社)

日本人の2人に1人は、がんにかかる時代。
東京女子医大付属青山自然医療研究所クリニックの川嶋朗所長は、
長年患者と接し、食生活の大切さを実感、
がんを予防するための食事方法を提唱。
何を食べればよいのか?

がんの発生する要因として、
「食事35%、喫煙30%、感染症10%」と推測。
にもかかわらず、がんの専門医療施設で食事指導をする医師や
栄養士は、ほとんどいないのが実情。

がんの転移や再発を防ぎたいという患者の思いは切実。
「何をどのように食べたらいいのか、質問されることが多い。
食をめぐる最大の関心事に、多くの医療機関は対応できていない」

米国では、がん予防のガイドラインを発表し、
食習慣の改善を呼びかけ効果を上げている。
米国国立がん研究所は、食品の成分、作用、代謝などについて
調査を行い、効果の高い食品を並べた
「デザイナーフーズ・ピラミッド」を紹介。

日本では、国立がん研究センターが、
「がんを防ぐための12カ条」を提唱、
食事に関しては、「バランスのとれた栄養」、「変化のある食生活」、
「食べ過ぎをさけ、脂肪は控えめに」といった、
一般論であまり実践的ではない。

川嶋医師は、玄米菜食を基本とする「マクロビオティック」、
欧米で行われている「ゲルソン療法」、
日本の伝統食を見直す「幕内式食事療法」などの
さまざまな実践例を研究し、無理なく継続できる川嶋流
「食べ方12カ条」を提案。

「免疫力を高め、自然治癒力を維持できれば、
体内に入った異物を撃退することができる。
体を温め、代謝をよくする、ストレスをためない、
十分な睡眠をとることも大切な要素」

がん予防を期待できる食品として、川嶋医師があげるのは、
(1)アシタバ、(2)ニンジン、(3)ゴボウ、(4)ブロッコリー、
(5)キャベツ、(6)カボチャ、(7)イモ類、(8)ネギ、タマネギ、
(9)トマト、(10)リンゴ、(11)バナナ、(12)シソ、(13)ニンニク、
(14)キノコ類、(15)海藻類、(16)玄米、(17)発酵食品、
(18)ゴマ、(19)青魚、(20)緑茶の20品目。

逆に控えたい食品として、「塩分、脂肪、糖質、過度な苦み、
辛みなどの刺激物、熱すぎるもの」をあげる。

「20品目の食材を中心に、さまざまな食品をバランスよくとることが大切。
腸内環境を整え、便通をよくする食物繊維、水分補給も
心がけてください」とアドバイス。
……………………………………………………………………………
◆川嶋流「食べ方12カ条」

(1)全粒穀物(玄米や小麦、ふすまなど)を取る
(2)よくかんで食べる
(3)食物繊維を取る
(4)果物を控え野菜を
(5)水は1日1~1.5L
(6)1日1回はキノコ類を
(7)青魚を取る
(8)1日30品目取るように
(9)塩は控えめに
(10)肉類は控える
(11)甘い物は控える
(12)旬のものを取り入れる

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/24/128737/

2010年11月28日日曜日

ドイツのスポーツ政策

(sfen)

◆ドイツのスポーツ政策と基本法

ドイツ連邦共和国のスポーツ政策は、連邦内務省が担当。
全ドイツを代表するトップアスリートの支援や
国際大会の招致開催などを所管、
国民一人ひとりのスポーツに関しては、各州を基本に
各自治体が主体的に取り組んでいる。

ドイツは、連邦制を導入し、国防や外交など国益を代表することに
関してのみ連邦政府が行う、という政治の仕組みによる。
連邦レベルにおいて、内務省だけでなく労働社会省、国防省、
家族・高齢者・婦人・青少年省、教育・研究省などでも、
スポーツに関する連邦政府予算が計上、
各々の政策領域でスポーツの普及発展にかかわっている。

各州のスポーツ政策を調整し、連携を図るため、
「州スポーツ担当大臣連絡協議会」が設置、
各州当番制で事務局を運営。

ドイツは、主務官庁が一本化、基本法に基づく厳格なスポーツ政策が
行われているように思えるが、スポーツのための基本法は
制定されておらず、一本化も行われていない。

基本法として、唯一「ドイツ連邦共和国基本法」(1949年)が存在、
憲法にあたるものとして位置づけ。
基本法では、特にスポーツに関する条項は見当たらないが、
国民のスポーツに関する権利を読み取ることはできる。

スポーツをする権利を、自由権として国民に保証
スポーツクラブは、「結社」の自由権として基本法により保護。
いくつかの州において、スポーツ振興のための法律を定めているが、
法律でスポーツを規定し、制約する考えはない。

◆ドイツスポーツ憲章の存在

第二次大戦前、スポーツが一時政治に利用された歴史を持つドイツ。
1966年、ドイツスポーツ連盟(DSB当時)は、ドイツスポーツ憲章を制定、
“スポーツはすべての人のためにある”と宣言。

この憲章は、1975年「欧州みんなのスポーツ憲章」、
ユネスコ宣言(1978年)へと発展、ドイツのスポーツ振興の
具体的な道筋を定めてきた。
2000年(DSB50周年記念)、ハノーバで新たなミッションステーツメント
(行動指針)の発表に至っている。

スポーツ基本法こそないドイツであるが、民間団体が制定した
スポーツ憲章の存在は、スポーツ基本法に代わるものとして評価、尊重。

◆民間団体主体によるスポーツ振興支援

1950年、再興したドイツスポーツ連盟(DSB当時)は、
「第二の道」(1959)を発表、国民のスポーツ振興に尽力した。
スポーツ施設整備指針を提示した「ゴールデンプラン」
(1960年ドイツオリンピック協会DOG)、「トリム運動」(1970年DSB)の
推進などは、全て民間団体が中心となって推進、
連邦政府、州、自治体の賛同および支援を受け、今日に至っている。

財政的な支援として、民間企業などの支援も大きな存在。
2006年、ドイツスポーツ連盟(DSB)はナショナルオリンピック委員会と
合併、ドイツオリンピックスポーツ連盟(DOSB)に改組。
現在会員数、27,553,516人(国民の33.6%)。

州スポーツ連盟に所属する90,897の地域スポーツクラブに加入し
活動している者は、23,693,679(国民の28.89%、DOSB, 2009)。

わが国の日本体育協会に相当する民間組織の果たしている
功績は多大で、スポーツクラブに属さない人々のスポーツ振興に大きく貢献。

◆スポーツ振興の原点「地域スポーツクラブ」

民法に基づき、7人以上の非営利団体は、総て登記社団として法人化。
約100万ともいわれる社団の1類型として、
約9万の地域スポーツクラブが存在。
会員数の規模や共益性あるいは公益性など活動内容に関わらず、
どのようなクラブも同じ社団として社会的に認知され、
同等の権利を保有。

クラブ会員のクラブライフを創出することに重きを置いているが、
地域に数多く存在し、多岐にわたるニーズに対応していること、
地域社会の課題解決に寄与する可能性が高いことなどから、
その存在価値は高く評価、地域社会そして会員自身が
その存在と活動を担保している。

個人の権利であるスポーツを担保し、個人がスポーツにおいて
自立することを支援する地域スポーツクラブは、
ドイツにおけるスポーツの象徴かつ原点であり、
政治の介入はもちろん許されていない。

◆国民目線のスポーツ戦略づくりへ

スポーツ立国戦略の策定、スポーツ振興法の改定、
新スポーツ振興基本計画の策定、スポーツ庁の設置などが
検討されているわが国は、新たなスポーツの時代を迎えようとしている。

戦略や法律、計画が国民のスポーツを規定し、
スポーツを「させる」仕組みを担保するのではなく、
国民が自らスポーツを自由に「する」仕組みへと、
展開することが望まれる。

トップアスリートも含めた、国民の一人ひとりの笑顔が見える
総合的なスポーツ戦略を、ドイツではドイツオリンピックスポーツ連盟
(DOSB)や種目別競技連盟などが明確に指し示しており、
国民のスポーツをする権利を担保する国民の代表機関としての
役割を確立している。

国民、民間主体のスポーツビジョンが展開されれば、
政策はそれらの支援策の充実が主体となる。
ドイツのスポーツ政策から、わが国の展開をみた場合、
事業仕分けからスポーツを守り、スポーツ関連予算を確保し、
関連団体組織の権益を守るためのシステム整備ではなく、
個人そして民間団体の利益を担保し、より自由なスポーツ活動の
発展を支援する体系づくりであることが期待される。

基本法がなく、スポーツ庁がなくても、国民一人ひとりが
スポーツの素晴らしさと重要性を認識し、自らがスポーツを
実践するとともに、自分の好む地域スポーツクラブに参画する
環境が整えば、スポーツ立国が具現化されることを、
ドイツは約60年かけて立証。

◎佐藤由夫

関西国際大学人間科学部教授/日本自由時間スポーツ研究所所長
日本生涯スポーツ学会副理事長
日本人間工学会評議員 元国際余暇スポーツ施設研究協会
日本連盟事務局長(iaks:本部ケルン・ドイツ)

長年ドイツのスポーツ振興方策の研究に従事。
著書「欧州に見るスポーツ施設30」体育施設出版、
共著「スポーツクラブ白書2000」厚有出版、
「生涯スポーツ実践論」市村出版、
「スポーツ白書2006」笹川スポーツ財団、
連載「海外スポーツ施設シリーズ」月刊体育施設1984年2月~隔月、
体育施設出版。

http://www.ssf.or.jp/sfen/sports/sports_vol9-1.html