2010年12月4日土曜日

総合学習を生かす(3)「聞き書き」で言語力養う

(読売 11月24日)

京都府の山間部にある南丹市美山町。
全国有数のかやぶき職人、中野誠さん(42)の自宅で、
同市立美山中学校3年の竹内愛さん(15)が質問。
「職人になるのを家族に反対されても、
なぜそこまで強い思いがあったんですか?」

「不安はあった。
だけど、生きてきた証しとして、人の役に立ちたいという思いはあった」。
かやぶき屋根の土間でたき火を囲み、会話がはずんだ。

美山中では7年前から、3年の秋に地域の人の生き方を取材する
「聞き書き」に取り組んでいる。
地域の魅力を見直す一方、過疎化や高齢化などの課題に接し、
自らの進路を考える機会にしようというもの。

今年は、生徒28人が林業家や町おこしの起業家、
看護師ら15人を取材。
「すごく面白かった」と、すがすがしい表情で学校に戻ってきた。

聞き書きは、2003年、同中が国の「国語教育推進校」となったのを
機に始まった。
「言語力の向上」を総合学習の柱に据え、3年間に習得した読解力や
表現力を活用する場として、聞き書きを位置づけた。
「体験で終わりがちだった総合学習に、しっかりした軸が生まれた」、
中村恵子・教務主任(60)。

事前に資料を調べ、質問項目を相手に手紙でわかりやすく
伝えるのも学習の一環。
取材後、メモをいったん文章化し、足りない点を電話や手紙などで再取材。
約1か月半かけて、「私」を主語に語る形の文章に仕上げる。

相手があるだけに、完成度が求められるが、
教諭らの丁寧な赤ペン指導が支える。
視点はズレていないか、文章は論理的か。
手間はかかるが、文章のくせや好みが偏らないよう、
一つの作品を複数の教員が目を通す。

体験は、思考を経て文章にして初めて自分のものになる。
一人称で語ることで、取材相手の人生を追体験できる」、中村教諭。

全学年共通で年15時間、言語力の基礎を培う「輝きの時間」と題した
独自の時間を確保し、図解表現や要約、説明法まで、
実践的に学ぶ時間にあてている。
生徒会には「文集部」があり、生徒は行事のたびに文章執筆を求められる。

町内には塾もないが、京都府内でも学力はトップレベル。
弁論大会などの入賞者も多く輩出。
「総合」を戦略的に活用しつくすことで、学校の底力を育てている。

◆聞き書き

語り手と聞き手が対話を重ね、人生経験や思いを文章化する活動。
庶民の知恵や技術を歴史に残す意義とともに、
言葉の選び方や聞く姿勢を育てる教育効果が注目、
地域学習やキャリア教育に取り入れる学校も多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101124-OYT8T00203.htm

0 件のコメント: