2009年10月31日土曜日

唐辛子:脂肪燃焼の仕組み解明 「減量」に裏付け

(2009年10月23日 毎日新聞社)

唐辛子の辛み成分が、脂肪を燃焼させる仕組みが明らかに。
「辛いものは苦手」という人向けに、辛くない新種の唐辛子も
国内で開発。
唐辛子の最新の研究成果を踏まえた効能を紹介。

唐辛子は、中南米原産のナス科植物。
コロンブスが、1493年、最初の唐辛子をスペインに持ち帰り、
日本には16世紀、ポルトガル人宣教師により伝来。
ハバネロやパプリカ、シシトウなど数百~数千種類あり、
辛み成分「カプサイシン」量により、辛み種と甘み種に分けられる。
ピーマンは、甘み種の代表。

カプサイシンに脂肪燃焼の効果があることは、以前から言われてきた。
実験結果は動物レベルにとどまり、人での効果は不明。

4月、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、
オランダなどの欧米の研究チームが、エネルギーを消費する
「褐色脂肪細胞」が成人にも存在することを明らかにした論文が掲載。

味の素健康基盤研究所が、動物レベルの実験で、
唐辛子の辛み成分が交感神経を通して、褐色脂肪細胞を
活性化させる詳細なメカニズムを明らか。

脂肪細胞に、エネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞と、
エネルギーを消費して発熱する褐色脂肪細胞がある。

肥満について研究する京都大大学院の河田照雄教授
(食品分子機能学)は、褐色脂肪細胞は加齢とともに減少、
肥満のメカニズムには、過食や肉体的活動の低下に、
交感神経の活性低下。
交感神経によって活性化される褐色脂肪細胞が、成人で見つからず、
唐辛子のダイエット効果を疑問視する見方も。

河田教授は、「今回の研究成果で、唐辛子の効果の信ぴょう性が
一層高まった。褐色脂肪細胞の活性化が肥満の改善、
生活習慣病の予防につながる可能性が高く示唆」

◇辛み少ない新品種も登場

辛くない唐辛子の研究も進んでいる。
味の素健康基盤研究所は、辛さが通常の唐辛子の
1000分の1以下の新種の唐辛子を開発。
カプサイシンに代わる辛み成分は、化学構造も特定、
「カプシエイト」と命名。

カプサイシンは、消化管から吸収されて血中を回るため、
心拍と血圧を上昇させてしまう副作用があるが、
カプシエイトは体内に吸収されず、交感神経だけ活性化させる。
北米肥満学会で報告。

カプシエイトは、製品化まですべて日本で完成された
数少ない天然食品成分。
同社は、サプリメントとして製品化し、食材としての販売は検討中。
同研究所の小野郁主任研究員は、
「カプシエイトは、神経伝達を介してエネルギー代謝を促進。
体内に吸収されないため、カプサイシンのような大量摂取による
副作用の心配が少ない有効な食品成分」

褐色脂肪細胞を活性化する交感神経は、辛みとともに甘みなど
「おいしさ」を感じることによっても刺激。
唐辛子と同じく交感神経を活性化するカフェインを同時摂取すると、
それぞれの食材を別々に摂取するのに比べ、
エネルギー消費量が大きく増加する。

今後、褐色脂肪細胞を活性化させる唐辛子の摂取方法などが注目。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/23/109737/

携帯で津波避難支援 県立大・沢本教授開発

(岩手日報 10月23日)

県立大ソフトウェア情報学部の沢本潤教授は、
携帯電話メールの地域限定配信サービスを使った
漁業者向け津波避難支援システムを開発、
宮古市重茂の重茂漁協と沖合の漁場で実証実験を行った。

災害時、迅速な情報伝達が可能で、漁船の位置も確認。
沖合で操業中の避難に役立ちそう。
同教授によると、同様のシステムは全国に例がない。

津波避難支援システムは、NTTドコモが提供する
携帯用緊急速報メール配信サービス「エリアメール」を活用。
同社が、津波の第一報をメール配信。

メール受信後、携帯に組み込まれたソフトが起動し、
衛星利用測位システム(GPS)で位置情報を確認。
洋上の自船の位置から、津波被害の危険性が低下する
水深100メートル地点までの距離、漁港までの距離を
1分置きに画面に自動表示。

この日の実験は、宮古沖で高さ3メートルの津波が
発生したとの想定。
漁協職員らは、重茂漁港から約1キロ離れた海上で
メール受信などの津波避難支援システムの動作を確認。

重茂漁協では、漁船の位置情報をパソコンに表示し、
避難状況を確認。
沖合で操業する小型漁船のほとんどは、無線やGPSを
搭載しておらず、津波発生時の安否確認や連絡手段確保が困難。

沢本教授は、「システム導入のコストも低く、小型漁船の漁業者に
利用してほしい」とし、同漁協の高坂菊太郎参事兼業務部長は、
「携帯で位置が分かるので安心できる」と開発を歓迎。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091023_4

小学生と外国語(6)学校生活 英語づくし

(読売 10月22日)

英語だけで、すべての教科を教えようとしている小学校がある。

「ツー・タイムズ・ツー・イコールズ・フォー」、
「ツー・タイムズ・スリー・イコールズ・シックス」
広島県福山市の英数学館小学校の教室。
日本語で言えば、「ににんが4」、「さんにが6」
学校生活をほぼ英語だけで過ごすイマージョン教育の授業風景。

九九を英語で暗唱させていたのは、
オーストラリア出身の担任、長島ミシェール教諭。
来日して長く、日本語も話すことができるが、
授業中はすべて英語で通している。
もちろん、算数の質問も英語で。

「大人が聞いていてもまごつくほどなのに、
子どもはちゃんと理解している」、永易恒夫校長が目を細める。
算数の授業が終わって休み時間になると、
子どもたちが絵本を見ながら英語でおしゃべり。

イマージョン教育のクラスが開設されたのは、
同校の理事長が、国内に実施している小学校があることを知り、
教育の目玉にしたいと考えたため。
2007年度から1クラスの募集を始め、3年目の今年度は、
1~3年生の3クラス計37人が、国語以外の時間は
休み時間も含め、すべて英語で生活。

クラスの運営は、海外で教員経験がある外国人教員の担任と
日本人の副担任の2人1組。
教科書は、日本語の教科書を英語に翻訳したものを使い、
教える内容は日本語を使う普通の小学校と全く同じ。

苦労しているのは、教員の確保。
クラスは現在、3年生までだが、高学年のクラスができれば、
より高度な内容を英語で教えなければならない。
英語講師はたくさんいるが、算数や理科などを
小学生に教えられる外国人は、国内にほとんどいない。

同校は、海外勤務を希望する教員を支援する国際組織に
照会したり、海外で行われる教員向け就職セミナーに
参加したりして、希望者を募っている。
来年1月、長島教諭が豪州で開かれるセミナーに参加、
来年度から来日してくれる教員を募集する予定。

来日しても、日本の生活になじめるのかどうかという不安。
昨年、外国人教員1人が途中で交代。
長島教諭も、「来日当初は日本語も話せず、1人きりで
寂しい思いになりがちなので、フォローが大切」

児童数の確保も課題。
各学年の定員は30人、定員を満たす学年はない。
入試が行われたが、期待したほどの応募はなかった。
教育熱心な親の関心は高いが、担任、副担任で
2人分の人件費がかかり、学費を高く設定していることが、
不景気の中、受験をためらわせる要因。

子どもの英語力は、3年間で着実に向上したと永易校長は実感。
授業参観や説明会をこまめに開き、その効用を保護者らに
理解してもらおうと考えている。

◆イマージョン教育

バイリンガル育成を目的に、1960年代にカナダで開発。
「イマージョン」は、英語で「浸すこと」を意味。
一部の教科だけを外国語で教える「部分イマージョン」と、
外国語だけを使う「完全イマージョン」がある。
英数学館は、学校生活の7割以上を英語で行うとしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091022-OYT8T00243.htm

2009年10月30日金曜日

新制度に不安や要望 戸別所得補償で県農協中央会

(岩手日報 10月25日)

花巻市は、県立大迫地域診療センターの今後の在り方に、
住民代表と4回目となる意見交換会を行う。

話し合いが長期化する中、市側は三役の副市長が初めて出席、
少人数による踏み込んだ議論に活路を探る考え。
入院や夜間・休日の救急をめぐる住民不安は続き、
議論の行方が注視される。

意見交換会は10月26、28日と11月2、6日の計4日間、
同町の大迫交流活性化センターなどで開催。
これまでと違い福祉団体、コミュニティー会議などの住民代表
約20人が、4回に分かれて出席。

大迫地域診療センターは、住民の反対の中、
4月から入院ベッドが休止。
花巻市は5月以降、住民代表と同センターの機能について
意見を交換。

8月、住民側から市が入院ベッドのある診療所を設置し、
民間の指定管理者に運営を任せる案が示されたが、
市側は9月定例議会の答弁で、否定的な見解。

無床化から半年余りが経過し、住民の関心低下やあきらめも
垣間見られるが、指定管理制を提案した
特別養護老人ホーム桐の里の佐藤忠正園長は、
「市はこの半年、住民の話を聞くだけに終始した。
大迫が地域として生き残るには、外来、入院、救急の
3機能を持つ診療所が必要

市は、「(現行の)一定数の診療科を持つ外来」と
「入院ベッド」のどちらを優先するかを決めた上で、
「市営」以外の具体策を詰めたいという姿勢がにじむ。

入院機能を再開する場合、施設の民間移管が有力な選択肢だが、
将来の撤退や医療の質の面で住民の懸念は根強い。
花泉地域診療センターが民間移管をめぐって混乱したことも、
議論に影響を与える可能性。

住民から地域医療への積極関与を求められている
同市の佐藤格健康こども部長は、
「まず、住民が何を一番に求めているかを聞きたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091025_6

カテキンが直接作用、新型インフルに緑茶が効く?

(2009年10月22日 読売新聞)

緑茶成分のカテキンが、新型インフルエンザウイルスの
心臓部に直接作用して、増殖を抑えることを、
徳島文理大学の葛原隆教授(薬学)らが突き止めた。

緑茶に、抗ウイルス作用があることは知られていたが、
仕組みがわかったのは初めて。

新型やAソ連型などのA型ウイルスは、増殖に不可欠な
RNAポリメラーゼという酵素を持ち、人間や豚の細胞中の
RNAという物質を切断、新しいウイルスの材料にしている。

葛原教授らが、A型ウイルスからこの酵素を取り出し、
緑茶に多い5種類のカテキンを一つずつ加えたところ、
2種類で酵素が働かなくなった。

この2種類のカテキンと、酵素の分子の立体構造を
コンピューターで計算し、重ね合わせると、
酵素分子の表面にある複雑な形のくぼみに、
カテキン分子がすっぽりと入り込むことがわかった。

くぼみの中には、RNAを切断する「刃」があるが、
カテキンがふたをし、働かなくしていた。

カテキンは腸で分解され、緑茶を飲むだけでは
抗ウイルス効果は弱い。
葛原教授は、「構造を少し変え、腸で分解されないようにするか、
吸引式にすれば、効果的な新薬になる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/22/109646/

小学生と外国語(5)授業の技 勉強会で交換

(読売 10月21日)

教員同士が独自のノウハウを公開して支え合っている。

北海道旭川市立北光小学校を訪ねると、
土曜日でひっそりと薄暗い校舎の中で、
一つの教室だけ明かりがつけられていた。
教室にいたのは、市内の小学校教員ら42人。
英語の授業方法を学ぶ勉強会が開かれていた。

ハロウィーンを題材にした模擬授業をしていたのは、
市立共栄小学校の森弘美教諭。
100円ショップで買った魔女やお化けのカードを使った
ゲームの方法などを発表。
子ども役となった教員たちに、手作りの模型の民家を使い、
「トリック・オア・トリート」といって、お菓子をもらうことも体験。

森教諭は、「英語が得意ではないので、子どもの興味を
引きつけられるよう、道具を使うことを重視した」と狙い。
4年生の総合学習の時間、外国語指導助手(ALT)と
一緒にやってみる予定。

この日は、幼稚園の英語講師が英語の絵本を使った
読み聞かせを実演したり、小学校教諭が世界の朝食を
英語で学ぶ授業を発表したりした。

勉強会を開いているのは、英語の授業研究に熱心な
市内の小学校教諭らで作るサークル
「Asahikawa English Education Network(AEEN)」

2003年、市内で開かれた北海道の英語の教科教育研究会に
参加した教員を中心に、その年の9月に17人で発足。

毎年6月から翌年2月まで、月1回の割合で開催。
独自の授業を実践している教員が模擬授業を行い、
ほかの教員は子ども役となって授業を受ける。
毎回約3時間程度で、発表する教員は5人前後。
カリキュラム編成講座の開催や、外部講師や授業づくりの
アドバイザーとなる人材の確保を進めている。

AEEN統括コーディネーターの小山俊英・北光小教諭(55)は、
「英語を教えるのが上手な先生だからできる授業ではなく、
どの先生でもできる授業を広めたい」と活動の目的を語る。
模擬授業という形式で勉強会を進めるのは、
教える側も子ども役も授業を体で覚え、
改善点を発見しやすくする。

小学校の外国語活動の必修化を前に、
会員も急増して120人近く。
当初は、10人程度しか集まらなかったのが、
今では100人近くが集まり、会場を体育館に変えることも。

学校現場の苦労を感じる、と小山教諭。
参加者から、「5、6年生の担任は何もやらず、英語担当である
私とALTが打ち合わせも授業もやっている」、
「授業の進め方でALTと学校の方針が違い、
板挟みになって疲れてしまう」という話が飛び出した。

担任を巻き込んだ体制作りを進め、標準的な授業方法を
確立することが小学校英語活動の必修化に向けて欠かせないが、
なかなか問題として認識されないのが実情。

英語の本格導入を前に、試行錯誤が続いている。

◆教科教育研究会

教科担当の教員が年1回など定期的に集まって、
授業方法の研究発表や模擬授業、講演会などを行う。
情報交換や親睦、教科教育の研究・発展が目的。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091021-OYT8T00275.htm

2009年10月29日木曜日

病院間の診療応援 岩手・無床化半年 地域医療の行方/3

(2009年10月22日 毎日新聞社)

県立高田病院の石木幹人院長は、毎週火曜日、
住田町の住田地域診療センターにいる。
センター唯一の内科医が退職した4月末以降のこと。
「無床化前は、住田町に行かなかった」

病院に戻る前、同町内にいる末期がん患者宅へ訪問診療へ。
仕事は増えた。
「入院患者も20-30人ぐらいいる。
本当はあまり外を出歩きたくないんだが……」

県医療局は、無床化の理由として、
「医師の過重労働解消」を挙げた。
今年3月まで、地域診療センターに基幹病院から医師が派遣
(診療応援)され、当直を勤めていた。
医師は、休日・夜間も忙殺されていた。

県医師支援推進室によれば、今年度の診療応援の件数は
2595件と、前年度同月の2601件とあまり変わらない。

中央と磐井病院は減少したが、1年間で医師が2人増えた
遠野病院は35件から144件に、2人減った釜石も71件から96件、
高田病院も50件から67件と増えた。

応援の実数は、もっと多いとみられる。
石木院長のように、住田町に住む高田病院の元入院患者への
訪問診療は、「応援」に数えられない。
訪問診療をやめるわけにもいかない。
末期がん患者の場合、自宅で看取らせてあげたいと、
退院させ、訪問診療で治療を続けている事情も。

無床化後、高田病院の入院患者は増え、赤字続きだった
病院の収支は改善。
住田センターで、新たに内科医1人の勤務が内定、
医師の多忙さが劇的に解消される見込みがない。
陸前高田市は5月、高田病院を支援し、維持・存続させるため、
庁内会議を作った。

市立の2診療所や市内の開業医との連携策を探る。
県立病院の当直の一部を、地元医師会で肩代わりする
宮古市の例を想定。

陸前高田市は、開業医と市立診療所の医師を合わせて7人。
市内の医師団体「松風会」も高齢化のため、
医師会機能を手放し親睦団体に変わった。
「医師の絶対数が足りない」。
市民生部の清水久也部長が嘆いた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/22/109651/

免疫を増強する物質合成 すべての型に対応:インフルエンザ

(2009年10月23日 毎日新聞社)

徳島大の木戸博教授(生化学)らが、
インフルエンザウイルスに対する粘膜免疫を増強する物質を
人工合成することに成功。
微量のウイルス抗原と一緒に、鼻やのどにスプレーすれば
インフルエンザの型に関係なく効果が期待でき、
接種の簡単な「総合ワクチン」の開発に道が開ける。

肺にあり、呼吸の際に肺を膨らませる働きを持つ物質
「肺サーファクタント」が、免疫を増強する作用を持つことに着目。
この物質とよく似たものを、ヒトが持つ3種類の脂質とたんぱく質を
化学的に複合して作った。
抗体を作る細胞に抗原を運び、活性化させるが、
すぐに分解され、副作用はない。

インフルエンザウイルスは、鼻やのどなどの気道粘膜で繁殖。
注射より、スプレーで粘膜に直接投与した方が効果がある。

木戸教授らは、この肺サーファクタントを安定供給するため、
人工合成に取り組んでいた。
来年度から臨床実験を始め、実用化を目指す。
新型肺炎(SARS)など、気道の粘膜から侵入する他の感染症への
応用も期待される。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/23/109782/

小学生と外国語(4)中学と「連結」 指導力向上

(読売 10月20日)

中学校の英語教師が小学校の教壇に立つことで、
授業の魅力を高める試みがある。


奈良市立田原小学校の英会話の時間。
「Can you play tennis?」、「Yes, I can.」
教室にいる6年生8人が、2人1組になって
こんなやりとりを交わしていた。
相手の持っているカードの単語を言い当てるゲーム。
質問を作って問いかけ、当たるとそのカードがもらえるルール。

英会話のゲームを指導していたのは、
担任と外国語指導助手(ALT)、市立田原中学校の英語教師、
鳥海一美教諭の3人。
ALTと共にルールを説明するのは、鳥海教諭。
小中一貫校である田原小と田原中で、
9年間のカリキュラムに沿った指導の中心。

小中一貫校になったのは、2005年4月。
政府の構造改革特区の認定を受けて、校舎がもともと
隣り合わせだった両校を、パイロット校に選んだ。
体育館を隔てて隣接していた校舎を、渡り廊下でつなぎ、
職員室も一緒にした。
学校要覧や教師の名刺も、「田原小中学校」と印刷。

カリキュラムは、1~4年生を前期、5~7年生(小5~中1)を中期、
8~9年生(中2~3)を後期に区分。
英会話の時間は、全学年でほぼ週1回、中学校の「英語」の
教科書を使った授業は5~6年で週1回、前倒しで勉強。

分担は、鳥海教諭が英語の指導、ALTは発音など。
担任は、補助教材「英語ノート」に沿って教える部分を担当。
新学習指導要領は、「外国語活動」について、
「学級担任の教師又は、外国語活動を担当する教師が行う」と規定。

担任には、英語教師やALTと子どもをつなぐ
大きな生徒役のような役割も期待。
カードゲームに担任が交ざるのも、教わる立場になることで、
子どもたちの気持ちを理解する意味合い。
全校児童が81人の小規模校にあって、ゲームをするにも、
いつも同じ顔ぶれという状況に変化をつけることに。

鳥海教諭は、小中連携の効果を、
教員間のコミュニケーションが増える点。
英語担当の教員と担任が常に同じ職員室にいることで、
授業の進め方や子どものつまずく点などを意見交換し、
日常的に子どもの様子を知ることができる。

田原小は、中学校が隣接しており、田原中の学区にあるのは
田原小1校だけという物理的な好条件。
木口篤校長は、「複数の小学校から1か所の中学校に進学する場合、
建物を一緒にすることはできなかったかもしれない」

鳥海教諭も、「中学校から小学校まで通って教えるのは
時間もかかるし、別の小学校の職員室を訪ねるのは
心理的な壁がある」

意思疎通の円滑化が、小中連携のカギを握る。

◆英語ノート

小学校の外国語活動用に、文部科学省が作成した補助教材。
教科書のない外国語活動で、教える内容を全国で
統一化するねらいがあり、全国の小学校に無償配布。
電子黒板で単語を指すと、外国人の発音で読み上げる機能など。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091020-OYT8T00225.htm

2009年10月28日水曜日

メタボ腹囲の新エビデンス 女性「80cm」から心血管リスク 端野・壮瞥町研究で

(2009年10月21日 Japan Medicine(じほう))

女性のメタボリックシンドローム(MetS)の診断基準を
再検討する上で、大きなインパクトとなるエビデンスが
端野・壮瞥町研究の最新解析で明らかに。

2005年、日本動脈硬化学会など8学会がまとめた
MetS診断基準では、女性の腹囲基準は「90cm以上」、
札幌医科大の研究グループによって、
女性MetSの心血管リスクは「80cm以上」で有意に高まる。

心血管疾患の複合リスクであるMetSの診断基準は、
日本動脈硬化学会や日本肥満学会、日本内科学会など
8学会によって、05年公表。

MetS診断の必須項目である腹囲は、男性85cm以上、
女性90cm以上、実際に基準値が心血管疾患発症の予測に
役立つかについては、多くの議論がある。

札幌医大内科学第二講座の研究グループでは、
北海道端野・壮瞥町での前向き追跡調査について、
1994~07年の13年間にわたる約2000人の住民健診データを解析、
女性における心血管疾患の発症リスクが
「80cm」を境に高まることを突き止めた。

同グループでは、6年間分のデータで解析を行ったものの、
女性は男性に比べ、MetSが約3分の1と頻度が低い上、
心血管疾患の発症が少ないため、有意差は認められなかった。

今回の解析では、追跡期間を倍に延ばし、データの検出力を高めた。
その結果、女性では腹囲が80cm以上の人では
80cm未満の人と比べて、相対リスクが2.3倍に。

80cmを基準値とする考えは、日本の代表的な前向き追跡研究
である久山町研究(福岡県)の結果からも支持。
研究グループの島本和明教授は、「端野・壮瞥町研究の結果は、
久山町研究の結果を証明。
日本人女性では、腹囲80cmから心血管疾患のリスクに
なることは間違いない」

脂質代謝異常や高血圧、糖代謝異常といったリスクの集積による
ソフト・エンドポイントの評価ではなく、心血管疾患の発症を
前向きに検証したハード・エンドポイントの評価で、
明確な結果が出たことにも意義。

MetS頻度が高く、心血管疾患発症数が多い男性について、
すでに久山町研究で90cm以上、大迫研究(岩手県)で87cm以上、
端野・壮瞥町研究で85cm以上-が有意にリスク。

島本教授は、「日本人男性では、85-90cmの間に基準値。
さらに整理が必要だが、幅があるのは各疫学研究によって
背景が違うため」と考察。

厚生労働省は、特定健診・保健指導制度を08年度から開始、
保健指導の介入基準として、8学会が示したMetS基準を採用。
必須項目の腹囲について、男性85cm以上、女性90cm以上。
健診現場でも混同されがちだが、この基準値はハイリスク者に対する
介入のための基準値で、MetSの診断基準としては正しくない。

限られた医療資源で効率よくハイリスク者をケアするには、
介入のための基準も必要。
「日本での心筋梗塞の発症数は、女性は男性の4分の1程度。
効率よくハイリスク者に介入することを考えれば、
(絶対リスクで)男性の腹囲85cmに相当する90cm以上を
女性の介入基準とすることは妥当」と島本教授。

「女性では、80cmから心血管疾患リスクになることは確かで、
“90cmまで大丈夫”と言う考えは間違っている。
医師は、80cmを超えていたらリスクがあることを伝え、
自ら気を付けるように促していただきたい」

東京大大学院・門脇孝教授を班長とする厚労省研究班によって、
疫学研究のメタ解析が進められている。
今年度末に提出される報告書を基に、8学会のMetS診断基準は
見直し作業に入り、女性の腹囲基準は80cmに改まる公算が大きい。
診断基準が変われば、特定保健指導の介入基準にも影響。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/21/109560/

小学生と外国語(3)ネット通じて海外交流

(読売 10月17日)

インターネットで海外と直接交流する小学校がある。

大阪府河内長野市立美加の台小学校の教室。
パソコンとつないだテレビ画面から、
「こんにちは。私の名前はアニーです。天ぷらを食べます」という
片言の日本語が聞こえてきた。
声の主は、オーストラリア・ビクトリア州のウォドンガ西小学校の児童。

この日は、年数回あるインターネット回線を使っての交流授業。
日本語を一生懸命に話す豪州の子どもたちに
拍手で応えるのは、美加の台小の5年生約40人。
約30分にわたり、カメラに向かって相手の言語で話しかけ、
自己紹介や質疑応答、じゃんけんゲームや合唱曲を歌ったりした。

「日豪語学協同学習」と呼ぶこの授業は、
同小では、4年までは生活科や総合学習の時間、
5~6年は外国語活動の時間に行われている。

考案したのは、同小の梅田昌二教諭(56)。
1999年、赴任していた別の小学校で、インターネットの
文通サイトを使って交流を試みた。
返事が来ないこともあったため、2年ほどでやめ、
テレビ画面による直接の交流に切り替えた。
交流相手となる小学校は、教育関係者のサイトなどで探した。

梅田教諭は、「ちょっと英語をしゃべっただけで
うまくなるとは思わない」と断言。
「狙いは、子どもが海外に目を向けるきっかけ作り。
外国人と直接コミュニケーションすることで、
世界とのつながりを感じさせ、関心を高める」

相手側の学校でも、授業は好評。
ウォドンガ西小の佐藤真理子教諭(29)も、
「学校以外で日本語を話したり、日本人と接したりする機会が
ないので、子どもは毎回、大喜び。
授業中に興奮する子どもを静めるのが大変なぐらい」と笑う。

2002年、美加の台小に併設する形で
市立教育メディアセンターが設立され、同小だけでなく、
市内の全14校で、豪州を始め英米中韓など
世界各国の小学校と交流活動が始まった。
梅田教諭はセンター代表を兼務し、機材の貸し出しや
交流先の小学校との打ち合わせ、授業のコーディネートを担当。

梅田教諭が、いつも頭を悩ませているのは、時差の壁。
英語圏だと、日本との時差が小さいのは、
豪州やニュージーランドぐらい。
英米でも相手国の教師と話すことはできるが、
子ども同士の交流は難しい。
国際理解教育という意味では、アジアの国々でもかまわないが、
英語を使う機会が少なくなってしまう。

授業のIT化が進まないことも、悩みの種。
電子黒板の導入などを進める「スクールニューディール」事業は、
政権交代で大幅に見直された。
ITに、苦手意識を持つ教師も少なくない。

「僕がパソコンを始めたのは、40歳代半ば。
教師がおもしろがって授業に取り入れれば、
子どもが楽しく外国語を体験できる」と梅田教諭。
ITの先に、世界がある。

◆「スクールニューディール」事業

今年5月、成立した2009年度補正予算で、
電子黒板の設置のほか、公立学校の耐震化工事や
太陽光発電施設の配備を進める事業の総称。
9月に発足した鳩山政権は補正予算を見直し、
一部の執行停止を決めた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091017-OYT8T00300.htm

無重力の書、若田さんが身延町に贈る

(読売 10月24日)

7月まで国際宇宙ステーションに滞在していた
宇宙飛行士の若田光一さん(46)が、
山梨県身延町なかとみ和紙の里(身延町西嶋)を訪れ、
宇宙で西嶋産の和紙に書き上げた書を同町に贈呈。


3~7月まで、国際宇宙ステーションに滞在していた若田さんは、
出発前に「好きな書道を宇宙でやってみたい」。
それを知った町側が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に、
質の高さで知られる西嶋産の和紙を紹介したところ、採用が決まった。

若田さんが町へ贈ったのは、無重力状態の中で書いた
「夢」、「探求心」、「思いやり」をしたためた和紙3枚。
若田さんは、集まった町内の小中学生約550人を前に
宇宙での体験談を語ったり、児童の質問に答えたりした。

http://www.yomiuri.co.jp/space/news/20091023-OYT1T01370.htm

2009年10月27日火曜日

菊池雄星投手、涙の決断 米断念「未練ない」

(岩手日報 10月26日)

どれほど悩み続けたのだろうか。
どれほど厳しい決断だったのだろうか。

日米両球界から注目を集めた花巻東高の菊池雄星投手(3年)が、
最終的に選んだのは国内プロ野球。
25日の会見終了間際、感極まって涙があふれた。

米挑戦への未練を断ち切るように、
「悔いはない。今は日本ですべてを出し尽くすことだけを考えたい」
18歳の苦渋の決断だった。

約15分間の会見が終了する直前。
菊池投手の目がうるみ、唇が震えた。
一筋の涙がほおを伝うと、もう限界だった。
あこがれ続ける米メジャー挑戦を、
「ひとまず封印して、日本一の投手になる」と宣言した男に二言はない。

それでも夢は夢。
米8球団が、わずか30分間の面談のために足を運んでくれた。
「(米スカウトに)期待させて申し訳なかった」との思いがよぎる。
会見中、何度も「たくさんの方に迷惑をかけた」と謝った。

岩手の剛腕は、才能ゆえに苦しんだ。
154キロの快速球は、自らの心をえぐる「もろ刃の剣」だった。
会見開始の午前11時直前まで、
受け答えの練習を繰り返していたという菊池投手。
報道陣約100人が集まった花巻東高内の会見場所に現れると、
口を真一文字に結び、緊張した表情で着席。

「昨日(24日)、監督や両親と話し合った結果…」
そこまで言って沈黙。
一呼吸置き、「日本でプレーさせていただきたいと思います」と表明。
カメラがたく猛烈なフラッシュの嵐の中、
菊池投手の表情はこわばる。
最後まで笑顔はなかった。

父雄治さん(49)は、「カメラに囲まれて話をして、
最後に緊張の糸がほどけたのでしょう」と涙の理由に思いを。
甲子園を沸かせた左腕は、「日本の方全員に(実力を)認められ、
納得された上で大リーグに挑戦する。
(国内と)決断した以上、プロで活躍して恩返しをしたい」と抱負。

運命のドラフトは29日。
「12球団どこでも行く」と明言する菊池投手に、
最高の笑顔が戻るはずだ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091026_6

パンデミックに挑む 合原一幸さん=東京大生産技術研究所教授

(2009年10月21日 毎日新聞社)

<数学を用い、限られた資源で、
新型インフルエンザと季節性のワクチンをどう作り分けるか、
個人の感染予防が社会に与える影響などを算出。
感染症に対し、個人の問題と社会の関係を両方同時に考える
必要性を主張する>

数理モデルによって、経済や脳の働きに関する研究を行ってきた。
7年前、新型肺炎(SARS)が流行した時、
自分の通勤電車に海外からの帰国者が多く乗っていた。
感染の広がりに不安を感じ、感染症を研究に取り入れ始めた。

新型インフルエンザが発生し、うがいや手洗いなど
感染予防のための努力は指摘される。
個人の心がけが社会にどのような影響があるか分かれば、
動機にもなる。

同じように、感染者を減らす効果があるワクチン何人分の接種に
相当するかを考えた。
その結果、個人から個人への感染力を10%減らすことができれば、
1600万人分のワクチンに相当し、
20%減らせば3200万人分に相当することが分かった。

個人の行動に基づいた家庭や学校の人間関係の
ネットワークによって、社会レベルの感染状況が時々刻々、変化。
私が取り組む「複雑系」という学問分野のテーマであり、
数学を用いて対策に貢献できると考えている。
………………………………………………………………
◇あいはら・かずゆき

北九州市生まれ。東京大大学院工学系研究科博士課程修了。
東京電機大助教授、北海道大客員助教授、東京大大学院教授などを
経て、03年10月から現職。
編著「社会を変える驚きの数学」(ウェッジ選書)など。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/21/109580/

「iPhone」医療ユース拡大に本腰 ソフトバンクテレコム

(2009年10月19日 Japan Medicine(じほう))

米アップル社「iPhone」の医療分野での利活用促進を目的に、
ソフトバンクテレコムより、遠隔画像診断と在宅医療での
導入事例が医師らから報告。

画像診断で、“肝”になる画質にはお墨付きが付き、
在宅診療に要求されるスピーディーな情報共有という点でも
合格点が与えられた。
低コストで、使い勝手もよいことから医療現場への普及が
進むのではないかとの見通しも。

ソフトバンクテレコムは、iPhoneの市場拡大に向け、
画像系の情報システムを手掛けるジェイマックシステム(J-MAC)と、
遠隔医療画像のコンサルトサービスで協力体制を構築する。

院内の各種画像データを、J-MACのビューア「VOX-BASEII」で
PDF化し、遠隔地の読影医が携帯するiPhoneに送信する仕組み。
救急医療の現場で、当直をする研修医らと
院外の放射線科専門医らが連携して迅速、的確に
対応できる環境整備を支援。

霧島市立医師会医療センター(鹿児島県)、禎心会病院(札幌市)
などが協力した検証作業も終了。
放射線科専門医で、イーサイトヘルスケア社長の松尾義朋氏は、
「画像の質が一番心配だった」、検証した結果、
「利便性と実用性が高く、低コストなソリューションが誕生した」と評価。

桜新町アーバンクリニック院長の遠矢純一郎氏は、
グループ診療を行う二十数人の医師がiPhoneを活用したことで、
情報共有がスムーズになり、業務も効率化した。

在宅患者や家族らからの緊急コールへの対応は、
診療録や既往歴などの診療情報を一括管理する
インターネット上のアプリケーションソフト(Dropbox)を利用。

紹介状の作成は、iPhoneの診療データをコピーして
電子メールで診療情報提供書を作成、搬送先の病院に送信する、
音声メールをクリニックに送り、文書を作成して搬送先に送信する、
などの運用をしている。

手技を動画ソフトで録画しておき、患者によって微妙に異なる
ポイントを、複数の医師が共有。
遠矢氏は、スタッフ間のリアルタイムな情報共有が
在宅医療の質の向上には欠かせないとし、
ノートPCより操作性に優れる点にも触れて、
「高額でなく特別な技術者も必要なく、日本中で等しく利用できる」と、
在宅医療の質の向上で有効なツールになるとの見方を示した。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/19/109426/

2009年10月26日月曜日

教職員多忙化 盛岡市教委、時間外勤務実態調査

(岩手日報 10月25日)

盛岡市教育委員会(八巻恒雄教育長)は、多忙化解消のため、
管内小中学校で教職員の時間外勤務実態を調査。

その結果、中学校の月平均時間外勤務は40~60時間、
月約200時間を記録した勤務事例も。

調査は昨年7月から開始。
今年は昨年と比較し、全体では時間外が減った。
市教委は、「事務手続きの改善などの取り組みとともに、
毎日記録を取ることで意識改革につながったのでは」と、
実態把握が時間外を減らす効果もあるとみて調査を継続。

市教委内に設置された安全衛生委員会から、
「多忙化解消のため、まず勤務実態の把握を」という提言で調査。

管内小学46校の教職員918人、中学21校542人の
計1460人が対象。
昨年7、9、12月の時間外勤務の報告を一人一人に求めた。

月平均超勤時間は、中学校が7月51時間、9月60時間、
12月43時間で、小学校は7月31時間、9月39時間、12月27時間。
学校単位の最長は、中学校が7月の77時間、
小学校は9月の102時間。

個人の最長は、中学教諭の198時間(7月)、
小学教諭は172時間(同)。
平日の時間外のほか、土日休日には部活指導などを行っていた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091025_3

日本人はなぜ長寿なのか 社会疫学の第一人者 米ハーバード大のイチロウ・カワチ教授

(2009年10月21日 共同通信社)

社会疫学の第一人者。
所得格差など、社会的な要因が健康にどのような影響を与えるかを
科学的に分析するのが社会疫学という学問。

複数の国で暮らしたカワチ教授の独自の着眼点が、
国際的に高い評価を得ている。

日本人の長寿研究に関し、教授は、「諸外国に比べ、
これまで所得格差が小さかったことが影響しているのでは」

問題は、最近の非正規社員の増加で、
「格差が広がれば、ストレスが増え、
日本でも働き盛りの死亡率が上がる」
試算では、「所得格差を示すジニ係数が0・5広がるごとに、
死亡率が8%上がる可能性がある」

遺伝説に関して、「これだけでは説明できない」
サンフランシスコの日系移民の心疾患死亡率が、日本在住者や
ハワイ移民に比べ飛び抜けて高く、環境要因も無視できない。
日本人は、塩分摂取などが多い。
「食生活だけが長寿の原因とも言いにくい」

12歳でニュージーランドに移住、大学では医学を学んだ。
日本社会に興味を持ったのは、海外に出てから。
さまざまな国に住み、多様な社会に触れた体験は研究に役立った。
今は、カナダ人の妻とともに米国で暮らす。

とりわけ日本女性が長生きなのは、
「家計を握り、自在に生きているのと関係があるのでは」と指摘、
「欧米にはない特性だ」と笑う。
47歳。東京都出身。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/21/109602/

PHP研究所のサイエンス新書参入

(サイエンスポータル 2009年10月16日)

PHP研究所が、PHPサイエンス・ワールド新書を創刊。
最初は5冊、分野は数学、物理、生物、環境。
毎月22日に2、3点発行の予定で、売れ行きの出足はまずまず。
科学雑誌の発行部数が、欧米に比べると格段に少ないというのは、
よく知られた事実。
少ないと言っても、雑誌は毎月買ってくれる読者がいるという強み。
毎月何点か発行する新書に、固定読者というのは少ない。
講談社の「ブルーバックス」、ソフトバンククリエイティブ社の
「サイエンス・アイ」という先行者のある科学新書分野に
あえて参入したPHP研究所の狙いと目算は?

PHP研究所は、10年前に新書発行をはじめ、
今やミリオンセラーを生み出すまで実績を挙げている。
理系のテーマでも、新書の読者はいるはず。
子どもたちの理科離れへの対応も必要とされている社会的背景も。
物理的発想や数学的思考、科学的知識がないと、
人間とは何かを知るのは難しい。
科学は、文系の人間にとっても面白い、ということを
このサイエンス・ワールド新書で気づいてもらう。

その狙いは成功しているだろうか?
科学雑誌が日本では売れない理由について、
日経新聞科学技術部長、「日経サイエンス」編集長、
日経サイエンス社社長などを務めた高木靱生氏
(現・東京工業大学統合研究院特任教授)は、
「日本には、文学を楽しむように科学を楽しんだり、
健全な批判精神の基礎として科学的な知識・教養を身につける、
という習慣が定着しているとはいい難い」

この状況は、今でも基本的には変わっていない。
日経サイエンス誌の編集にかかわった別の人物は、
科学雑誌の書き手になり得る研究者が日本には非常に少ない、
という別の理由も。
日経サイエンスは、発行部数が約70万部といわれる
米国の「サイエンティフィック・アメリカン」の日本版だが、
米国には8ページもの長い記事を書き込める研究者は数多くいる。
日本では4ページ程度なら何とかなるが、8ページもの
読ませる記事を書ける研究者は限られてしまう。
読者のせいだけではない。

PHPサイエンス・ワールド新書の創刊書の中でも、反響が大きいのは、
「あなたにもわかる相対性理論」(茂木健一郎著)。
確かに分かりやすく、読ませる。
著者の後書きを読むと、茂木氏が話したことを2人の書き手が文章化、
茂木氏がそれに加筆修正を加えてできあがった。
茂木氏は、既に多くの著作もある脳科学者。
こうした作り方をしたことで、さらに読みやすくなったとしたら、
サイエンス新書の作り方としては、有力な方法。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0910/0910161.html

2009年10月25日日曜日

岩手国体へ現実直視を 2016年開催まであと7年

(岩手日報 10月24日)

第64回国民体育大会「トキめき新潟国体」で39位に終わった
本県は、2016年開催予定の岩手国体で総合優勝を狙うが、
その実現は極めて厳しい。
天皇杯(男女総合)得点は744・5点、優勝の地元新潟が2426点。
その差は約1700点。
優勝8点の個人競技換算で、これから全国王者200人を
育成しても優勝できない。
地元国体まで7年。
岩手は今、冷静に現実を見つめ直す岐路に立っている。

「岩手国体、大丈夫?」と不安が広がる結果。
目標の30位どころか、前回大分国体の36位さえ下回った。
「得点配分の高い団体競技の底上げが必要」、
「成年の競技力向上が急務」
何年も同じ課題を言い続けている。

競技団体の育成体制を責めることはできない。
有志で熱心に競技普及に努めている。
国体順位は過去10年間、30~40位台。
これが岩手の実力だろう。

成年不振の理由は明白。
県内に就職口がなく、スポーツ選手を支える環境がない。
今後、県内でトップ選手を育てても、いずれ実業団などの
競技環境を求めて県外流出する。
ホッケーを町技とする岩手町の成功例こそあれ、
雇用環境と競技力は切り離せない。

天皇杯得点は参加点10点と、入賞(8位以内)で加算される
競技得点で構成。
岩手は秋の本大会37競技中、21競技が参加点だけで
競技得点はゼロ。
新潟は、5競技以外はすべて入賞。
低迷する順位を嘆くことはない。
岩手が厳しいスポーツ環境で戦っているだけだ。

都道府県順位を争う意味にも、疑問が残る。
1964年の新潟国体から45年間、開催地優勝を逃したのは
2002年の高知(10位)だけ。
当時の橋本大二郎知事が、「何が何でも開催県が天皇杯を獲得する、
という考え方は前提としない」と発言、一石を投じた大会。

それ以降も、地元のメンツを懸けた「異常事態」は止まらない。
どこも臨時採用や契約社員など、「即戦力」をそろえて優勝を目指す。

07年秋田国体後、当時の寺田典城知事は、
「競技力向上に十数年で44億~45億円を費やした」
国体に合わせ、県外から選手や指導者を呼び寄せたが、
「助っ人」たちが離れた翌08年国体は23位、今大会で30位に急降下。
これでいいのかと違和感を覚える。

一過性の栄光を数十億円で買うよりも、
優勝にこだわらず地元選手が安心して競技を続けられる
環境を整備すべきだ。
既存施設を利用し、岩手の人材を生かす指導システムを築けば、
県全体が享受できる国体の「成果」となる。
会場地問題も大切だが、本当に必要なのは2016年国体以降も続く、
岩手のスポーツの将来像を描こうとする情熱。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091024_14

新型インフル、成人に免疫?…過去の季節性感染で

(2009年10月22日 読売新聞)

新型インフルエンザに対して、成人の多くは
ある程度の免疫を持つ可能性があることが分かってきた。

データを分析すると、患者が増えているのは圧倒的に未成年。
新型用のワクチンの臨床試験では、1回の接種で成人の大半が
十分な免疫を獲得でき、過去の季節性インフルエンザの免疫が、
新型にもある程度働くという解釈で、
厚生労働省のワクチンに関する専門家の見解がほぼ一致。
「ほとんどの人に免疫がない」とされてきた
新型対策の見直しにつながる可能性。

全国約5000の定点医療機関から報告された
インフルエンザ患者数は、ほとんどが新型になった6月末以降、
計20万人余り。
年齢層別では10-14歳が最も多く、未成年が85%。
最新のデータでは、新規患者の90%が未成年。

大阪大の岸本忠三・元学長(免疫学)は、
「子どもと大人の発症率の差は、行動の違いだけで説明がつかない。
過去に類似したウイルスに感染したことが影響している可能性が高い」

20-50歳代の200人に行われた国産の新型用ワクチンの
臨床試験では、1回の接種で78%が十分な免疫を獲得。
国立感染症研究所の田代真人・インフルエンザウイルス
研究センター長は、「1回の接種で効果が出るのは、
過去の免疫が呼び覚まされたから。
今回の新型は、過去に流行した季節性の『いとこ』か『はとこ』なのだろう」

だからと言って、成人が新型に感染しないというわけではない。
米国でも当初、10歳代で新型が流行したが、
その後ほかの世代に感染は拡大し、
最終的に入院患者の半数が18歳以上。

感染研の安井良則主任研究官は、
「今は、集団生活を送っている子供が感染の中心だが、
時間をかけて成人に感染が広がっていく。
成人の方が感染すれば、重症化する危険性が高く、
十分な注意が必要」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/22/109677/

身体運動とメンタルトレーニングを組み合わせると化学療法による疲労が軽減

(2009年10月21日 WebMD)

化学療法を受けている癌患者は、
身体運動とメンタルトレーニングを組み合わせた
厳しいプログラムに参加すれば、疲労を感じる度合いが軽くなる。

疲労は、癌化学療法の最も厄介な副作用のひとつ。
患者は、身体的にも精神的にも何もしたくなくなる。
活動が少なくなれば、体力が弱まり、抑うつ傾向が強くなる。

先行研究では、適度の運動が有効となり得ることが示されている。
心理学的プログラムも有用。
さらに影響力を強めるために、両種のプログラムを組み合わせて、
増強させることができるか?

コペンハーゲン大学病院(Copenhagen University Hospital)の
Lis Adamsenらは、成人癌患者269名に、6週間にわたる
週9時間の訓練プログラムへの参加を要請。
志願者のうち半数は対照群にランダムに割り付け、
6週間にわたり同プログラムに参加させずに待機。

このプログラムは、男女とも興味を持つようにデザインされ、
女性の方が参加を志願する傾向ははるかに強かった。
女性196名と男性73名がこの研究への参加を志願、
235名がプログラムを完了。

◆プログラムの内容

1)月曜日、水曜日、金曜日:
強度の高い身体トレーニング(ウォーミングアップ30分、
筋力トレーニング45分、循環器系トレーニング15分)

2)火曜日:
ボディアウェアネス・トレーニング90分(第1週はストレッチ、
第2-3週はヨガ呼吸法、第4-6週はピラティス運動)

3)月曜日、火曜日、水曜日、金曜日:
身体トレーニング、ボディアウェアネス・トレーニングの後、
リラクゼーション・トレーニングを30分

4)月曜日、金曜日:マッサージ30分。

患者に選り好みは許されず、化学療法後には、
気分の良し悪しにかかわらず、全プログラムに参加。

脳腫瘍患者1例が、循環器系トレーニング後に発作を起こし、
この種の訓練を試みないように警告。
他の患者には、有害な作用は認められなかった。

その結果、プログラムを完了した人たちでは、
気分の改善が認められた。
改善度は小さいか、中程度であったものの、
この運動プログラムにより、疲労は有意に低減し、
患者は活力の高まりを感じる。
運動をした患者は、運動をしなかった患者より、
日常活動の制限が少なくなった。

「使用した範囲の運動要素は、化学療法施行中の
さまざまな癌患者にとって、進行癌患者であっても、
実行可能で安全であり、有用であることがわかった」

男性が、もっと興味を惹かれるプログラムの開発が必要。

BMJ. 2009 Oct 13;339:b3410.
Effect of a multimodal high intensity exercise intervention in cancer patients undergoing chemotherapy: randomised controlled trial.
Adamsen L, Quist M, Andersen C, Møller T, Herrstedt J, Kronborg D, Baadsgaard MT, Vistisen K, Midtgaard J, Christiansen B, Stage M, Kronborg MT, Rørth M.

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/10/21/109629/