2009年10月28日水曜日

メタボ腹囲の新エビデンス 女性「80cm」から心血管リスク 端野・壮瞥町研究で

(2009年10月21日 Japan Medicine(じほう))

女性のメタボリックシンドローム(MetS)の診断基準を
再検討する上で、大きなインパクトとなるエビデンスが
端野・壮瞥町研究の最新解析で明らかに。

2005年、日本動脈硬化学会など8学会がまとめた
MetS診断基準では、女性の腹囲基準は「90cm以上」、
札幌医科大の研究グループによって、
女性MetSの心血管リスクは「80cm以上」で有意に高まる。

心血管疾患の複合リスクであるMetSの診断基準は、
日本動脈硬化学会や日本肥満学会、日本内科学会など
8学会によって、05年公表。

MetS診断の必須項目である腹囲は、男性85cm以上、
女性90cm以上、実際に基準値が心血管疾患発症の予測に
役立つかについては、多くの議論がある。

札幌医大内科学第二講座の研究グループでは、
北海道端野・壮瞥町での前向き追跡調査について、
1994~07年の13年間にわたる約2000人の住民健診データを解析、
女性における心血管疾患の発症リスクが
「80cm」を境に高まることを突き止めた。

同グループでは、6年間分のデータで解析を行ったものの、
女性は男性に比べ、MetSが約3分の1と頻度が低い上、
心血管疾患の発症が少ないため、有意差は認められなかった。

今回の解析では、追跡期間を倍に延ばし、データの検出力を高めた。
その結果、女性では腹囲が80cm以上の人では
80cm未満の人と比べて、相対リスクが2.3倍に。

80cmを基準値とする考えは、日本の代表的な前向き追跡研究
である久山町研究(福岡県)の結果からも支持。
研究グループの島本和明教授は、「端野・壮瞥町研究の結果は、
久山町研究の結果を証明。
日本人女性では、腹囲80cmから心血管疾患のリスクに
なることは間違いない」

脂質代謝異常や高血圧、糖代謝異常といったリスクの集積による
ソフト・エンドポイントの評価ではなく、心血管疾患の発症を
前向きに検証したハード・エンドポイントの評価で、
明確な結果が出たことにも意義。

MetS頻度が高く、心血管疾患発症数が多い男性について、
すでに久山町研究で90cm以上、大迫研究(岩手県)で87cm以上、
端野・壮瞥町研究で85cm以上-が有意にリスク。

島本教授は、「日本人男性では、85-90cmの間に基準値。
さらに整理が必要だが、幅があるのは各疫学研究によって
背景が違うため」と考察。

厚生労働省は、特定健診・保健指導制度を08年度から開始、
保健指導の介入基準として、8学会が示したMetS基準を採用。
必須項目の腹囲について、男性85cm以上、女性90cm以上。
健診現場でも混同されがちだが、この基準値はハイリスク者に対する
介入のための基準値で、MetSの診断基準としては正しくない。

限られた医療資源で効率よくハイリスク者をケアするには、
介入のための基準も必要。
「日本での心筋梗塞の発症数は、女性は男性の4分の1程度。
効率よくハイリスク者に介入することを考えれば、
(絶対リスクで)男性の腹囲85cmに相当する90cm以上を
女性の介入基準とすることは妥当」と島本教授。

「女性では、80cmから心血管疾患リスクになることは確かで、
“90cmまで大丈夫”と言う考えは間違っている。
医師は、80cmを超えていたらリスクがあることを伝え、
自ら気を付けるように促していただきたい」

東京大大学院・門脇孝教授を班長とする厚労省研究班によって、
疫学研究のメタ解析が進められている。
今年度末に提出される報告書を基に、8学会のMetS診断基準は
見直し作業に入り、女性の腹囲基準は80cmに改まる公算が大きい。
診断基準が変われば、特定保健指導の介入基準にも影響。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/21/109560/

0 件のコメント: