2009年10月26日月曜日

PHP研究所のサイエンス新書参入

(サイエンスポータル 2009年10月16日)

PHP研究所が、PHPサイエンス・ワールド新書を創刊。
最初は5冊、分野は数学、物理、生物、環境。
毎月22日に2、3点発行の予定で、売れ行きの出足はまずまず。
科学雑誌の発行部数が、欧米に比べると格段に少ないというのは、
よく知られた事実。
少ないと言っても、雑誌は毎月買ってくれる読者がいるという強み。
毎月何点か発行する新書に、固定読者というのは少ない。
講談社の「ブルーバックス」、ソフトバンククリエイティブ社の
「サイエンス・アイ」という先行者のある科学新書分野に
あえて参入したPHP研究所の狙いと目算は?

PHP研究所は、10年前に新書発行をはじめ、
今やミリオンセラーを生み出すまで実績を挙げている。
理系のテーマでも、新書の読者はいるはず。
子どもたちの理科離れへの対応も必要とされている社会的背景も。
物理的発想や数学的思考、科学的知識がないと、
人間とは何かを知るのは難しい。
科学は、文系の人間にとっても面白い、ということを
このサイエンス・ワールド新書で気づいてもらう。

その狙いは成功しているだろうか?
科学雑誌が日本では売れない理由について、
日経新聞科学技術部長、「日経サイエンス」編集長、
日経サイエンス社社長などを務めた高木靱生氏
(現・東京工業大学統合研究院特任教授)は、
「日本には、文学を楽しむように科学を楽しんだり、
健全な批判精神の基礎として科学的な知識・教養を身につける、
という習慣が定着しているとはいい難い」

この状況は、今でも基本的には変わっていない。
日経サイエンス誌の編集にかかわった別の人物は、
科学雑誌の書き手になり得る研究者が日本には非常に少ない、
という別の理由も。
日経サイエンスは、発行部数が約70万部といわれる
米国の「サイエンティフィック・アメリカン」の日本版だが、
米国には8ページもの長い記事を書き込める研究者は数多くいる。
日本では4ページ程度なら何とかなるが、8ページもの
読ませる記事を書ける研究者は限られてしまう。
読者のせいだけではない。

PHPサイエンス・ワールド新書の創刊書の中でも、反響が大きいのは、
「あなたにもわかる相対性理論」(茂木健一郎著)。
確かに分かりやすく、読ませる。
著者の後書きを読むと、茂木氏が話したことを2人の書き手が文章化、
茂木氏がそれに加筆修正を加えてできあがった。
茂木氏は、既に多くの著作もある脳科学者。
こうした作り方をしたことで、さらに読みやすくなったとしたら、
サイエンス新書の作り方としては、有力な方法。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0910/0910161.html

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