(読売 10月17日)
インターネットで海外と直接交流する小学校がある。
大阪府河内長野市立美加の台小学校の教室。
パソコンとつないだテレビ画面から、
「こんにちは。私の名前はアニーです。天ぷらを食べます」という
片言の日本語が聞こえてきた。
声の主は、オーストラリア・ビクトリア州のウォドンガ西小学校の児童。
この日は、年数回あるインターネット回線を使っての交流授業。
日本語を一生懸命に話す豪州の子どもたちに
拍手で応えるのは、美加の台小の5年生約40人。
約30分にわたり、カメラに向かって相手の言語で話しかけ、
自己紹介や質疑応答、じゃんけんゲームや合唱曲を歌ったりした。
「日豪語学協同学習」と呼ぶこの授業は、
同小では、4年までは生活科や総合学習の時間、
5~6年は外国語活動の時間に行われている。
考案したのは、同小の梅田昌二教諭(56)。
1999年、赴任していた別の小学校で、インターネットの
文通サイトを使って交流を試みた。
返事が来ないこともあったため、2年ほどでやめ、
テレビ画面による直接の交流に切り替えた。
交流相手となる小学校は、教育関係者のサイトなどで探した。
梅田教諭は、「ちょっと英語をしゃべっただけで
うまくなるとは思わない」と断言。
「狙いは、子どもが海外に目を向けるきっかけ作り。
外国人と直接コミュニケーションすることで、
世界とのつながりを感じさせ、関心を高める」
相手側の学校でも、授業は好評。
ウォドンガ西小の佐藤真理子教諭(29)も、
「学校以外で日本語を話したり、日本人と接したりする機会が
ないので、子どもは毎回、大喜び。
授業中に興奮する子どもを静めるのが大変なぐらい」と笑う。
2002年、美加の台小に併設する形で
市立教育メディアセンターが設立され、同小だけでなく、
市内の全14校で、豪州を始め英米中韓など
世界各国の小学校と交流活動が始まった。
梅田教諭はセンター代表を兼務し、機材の貸し出しや
交流先の小学校との打ち合わせ、授業のコーディネートを担当。
梅田教諭が、いつも頭を悩ませているのは、時差の壁。
英語圏だと、日本との時差が小さいのは、
豪州やニュージーランドぐらい。
英米でも相手国の教師と話すことはできるが、
子ども同士の交流は難しい。
国際理解教育という意味では、アジアの国々でもかまわないが、
英語を使う機会が少なくなってしまう。
授業のIT化が進まないことも、悩みの種。
電子黒板の導入などを進める「スクールニューディール」事業は、
政権交代で大幅に見直された。
ITに、苦手意識を持つ教師も少なくない。
「僕がパソコンを始めたのは、40歳代半ば。
教師がおもしろがって授業に取り入れれば、
子どもが楽しく外国語を体験できる」と梅田教諭。
ITの先に、世界がある。
◆「スクールニューディール」事業
今年5月、成立した2009年度補正予算で、
電子黒板の設置のほか、公立学校の耐震化工事や
太陽光発電施設の配備を進める事業の総称。
9月に発足した鳩山政権は補正予算を見直し、
一部の執行停止を決めた。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091017-OYT8T00300.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿