(読売 10月22日)
英語だけで、すべての教科を教えようとしている小学校がある。
「ツー・タイムズ・ツー・イコールズ・フォー」、
「ツー・タイムズ・スリー・イコールズ・シックス」
広島県福山市の英数学館小学校の教室。
日本語で言えば、「ににんが4」、「さんにが6」
学校生活をほぼ英語だけで過ごすイマージョン教育の授業風景。
九九を英語で暗唱させていたのは、
オーストラリア出身の担任、長島ミシェール教諭。
来日して長く、日本語も話すことができるが、
授業中はすべて英語で通している。
もちろん、算数の質問も英語で。
「大人が聞いていてもまごつくほどなのに、
子どもはちゃんと理解している」、永易恒夫校長が目を細める。
算数の授業が終わって休み時間になると、
子どもたちが絵本を見ながら英語でおしゃべり。
イマージョン教育のクラスが開設されたのは、
同校の理事長が、国内に実施している小学校があることを知り、
教育の目玉にしたいと考えたため。
2007年度から1クラスの募集を始め、3年目の今年度は、
1~3年生の3クラス計37人が、国語以外の時間は
休み時間も含め、すべて英語で生活。
クラスの運営は、海外で教員経験がある外国人教員の担任と
日本人の副担任の2人1組。
教科書は、日本語の教科書を英語に翻訳したものを使い、
教える内容は日本語を使う普通の小学校と全く同じ。
苦労しているのは、教員の確保。
クラスは現在、3年生までだが、高学年のクラスができれば、
より高度な内容を英語で教えなければならない。
英語講師はたくさんいるが、算数や理科などを
小学生に教えられる外国人は、国内にほとんどいない。
同校は、海外勤務を希望する教員を支援する国際組織に
照会したり、海外で行われる教員向け就職セミナーに
参加したりして、希望者を募っている。
来年1月、長島教諭が豪州で開かれるセミナーに参加、
来年度から来日してくれる教員を募集する予定。
来日しても、日本の生活になじめるのかどうかという不安。
昨年、外国人教員1人が途中で交代。
長島教諭も、「来日当初は日本語も話せず、1人きりで
寂しい思いになりがちなので、フォローが大切」
児童数の確保も課題。
各学年の定員は30人、定員を満たす学年はない。
入試が行われたが、期待したほどの応募はなかった。
教育熱心な親の関心は高いが、担任、副担任で
2人分の人件費がかかり、学費を高く設定していることが、
不景気の中、受験をためらわせる要因。
子どもの英語力は、3年間で着実に向上したと永易校長は実感。
授業参観や説明会をこまめに開き、その効用を保護者らに
理解してもらおうと考えている。
◆イマージョン教育
バイリンガル育成を目的に、1960年代にカナダで開発。
「イマージョン」は、英語で「浸すこと」を意味。
一部の教科だけを外国語で教える「部分イマージョン」と、
外国語だけを使う「完全イマージョン」がある。
英数学館は、学校生活の7割以上を英語で行うとしている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091022-OYT8T00243.htm
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