2008年12月24日水曜日

肥満関連遺伝子変異が食物選択に影響を与える可能性

(Medscape 12月10日)

肥満関連(fat mass and obesity-associated)遺伝子FTOの変異は、
エネルギー消費量ではなく、エネルギー摂取量および高エネルギー食嗜好に
関連しているという、スコットランドの小児を対象とした研究が発表。

FTOの変異体rs9939609のA対立遺伝子を有する小児は、
有しない小児と比較して、体重に関係なく、試験食時のカロリー摂取量が多かった。
『New England Journal of Medicine』12月11日号に掲載。

摂食量は、このA対立遺伝子を有する小児と有しない小児でほぼ同等。
ダンディー大学(スコットランド)Ninewells病院・医学部
(Ninewells Hospital and Medical School)生物医学研究所薬理ゲノミクス教授の
Colin Palmerは、2型糖尿病リスク関連遺伝子のゲノムレベル解析に貢献。

体格指数(BMI)に影響を及ぼすことで、糖尿病のリスクを増加させる
共通のFTO変異体を同定。
今回、rs9939609のA対立遺伝子がエネルギー収支に
どのように影響を及ぼすかを検討。

4-10歳のスコットランドの小児(2726例)を対象、
rs9939609の遺伝子型を特定した:A対立遺伝子がホモ接合体(AA)14%、
ヘテロ接合体(AT)49%、T対立遺伝子がホモ接合体(TT)37% 。
平均体重は、TT群26.99kg、AT群27.16kg、AA群28.07kgと、
遺伝子型群間で有意差。
BMIも、TT群17.09、AT群17.17、AA群17.58と、群間で有意差。

A対立遺伝子を有する小児は、この対立遺伝子を有しない小児と比較し、
安静時エネルギー消費量、総エネルギー消費量が多い。
「肥満者のほうが、安静時代謝が高いというのは道理に合わない。
一般に、肥満者の継続的な高カロリー摂取が原因である」

肥満者はあまり活動的ではなく、新陳代謝が遅いという固定観念について、
Palmer博士は、「「新陳代謝の遅い人」という表現型を見出すため、
体重と比較してエネルギー消費量が少ない人を探した。

これまでに見つけた遺伝子は、「新陳代謝の遅い人」という表現型に関連しない」
A対立遺伝子とカロリー摂取量の関連が判明。
試験食の約1.5時間前に、小児は、水250mL(対照群、0kJ)、
オレンジドリンク+マフィン(低エネルギー群、783kJ)、
オレンジドリンク+マフィン(高エネルギー群、1628kJ)を摂取。
その後の試験食時、各小児が摂取した食事の量および内容を評価。
小児76例が、このプロトコル×3回を終了。

解析の結果、rs9939609のA対立遺伝子は、
試験食時のエネルギー摂取量高値に関連。
データを年齢で補正し、0kJおよび783kJ摂取後の試験食時に、
A対立遺伝子(AAまたはAT)を有する小児は、T対立遺伝子が
ホモ接合体(TT)である小児よりも、カロリー摂取量が多かった。

1628kJ摂取後にも同じ傾向が認められたが、有意差は認められなかった。
3つの食前条件すべてについて、A対立遺伝子の有無にかかわらず、
小児が摂取した試験食の総重量に有意差は認められなかった。

「FTO遺伝子は、摂食行動を改善することで肥満を調節し、
カロリー制限の重要性を強調し、一部の人が、他の人と比較して、
高エネルギー食を好む理由を説明している。
これは、栄養バランスのとれた正しい食事を選択するための指針を
与えうる、特にリスクの高い集団を定義している」。

コロンビア大学小児科・内科教授、Naomi Berrie 糖尿病センター
(Naomi Berrie Diabetes Center)共同ディレクターであるRudolph Leibelは、
「体重調節の分子生理学に関する研究の結果を考えると、
(基礎エネルギー消費量の減少ではなく)過剰摂取が肥満の主なメカニズムである」

「肥満成人のエネルギー消費量は、非肥満者のエネルギー消費量から
予測される値と同等である。
肥満者は、痩せた人と比較し、代謝体重が多く、絶対エネルギー消費量が多い。
遺伝学を理解していれば、肥満のリスクをかなり正確に予測できる
(親に助言を与える以外に、解決手段があるわけではない)。
これらの遺伝子および他の遺伝子が、体重に影響を及ぼすメカニズムが
分かっていれば、分子が薬剤や他の方法による介入の標的となる」

Palmer博士は、「FTO遺伝子の蛋白産物が酵素であるという事実は、
その活性を増強または阻害する薬剤を開発することができる。
減量を助けるための新規治療法となる可能性がある」

出典 N Engl J Med. 2008;359(24):2558–2566, 2603–2604.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=85180

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