(Science 12月19日)
2008年科学的進歩ベストテンの第1位に、
疾患に罹患した患者の細胞を再プログラミングすることにより
細胞株をオーダーメイドで作製するという研究を選出。
細胞株の作製技術は、パーキンソン病やⅠ型糖尿病といった
研究が困難であった疾患機序を解明し、
将来的には治療につなげることを目指し、長きにわたって追求されてきた技術。
副編集長(deputy news editor)Robert Coontzは、
「Scienceの記者および編集者は、2008年の最大の科学的躍進を
選出するにあたり、宇宙の仕組みに関する重大な疑問への解答となる研究や、
今後の発見への道を拓く研究を探索。
第1位に選出された細胞の再プログラミングは、
生物学の新分野を一夜にして切り開き、
生命を救う医学的進歩という希望の光をもたらした」
2008年の科学的進歩に選出された他9件を以下に紹介。
第2位の「太陽系以外の惑星の直接検出」以外、順不同。
太陽系外惑星―百聞は一見にしかず:
主星のまぶしい光から、惑星のほの暗い光を識別する特殊な望遠鏡技術を用いて、
太陽以外の恒星を周回する複数の惑星を直接観測することに初めて成功。
がん遺伝子のリストが拡大:
最も致死率の高い2つのがんである膵臓がんや膠芽腫を含む
種々のがん細胞の遺伝子配列が決定されたことにより、
細胞分裂の抑制を取り除いて、細胞をがん発症へと導く突然変異が多数検出。
不思議な新素材:
高温超伝導体は、超高温かつ電気抵抗がゼロの状態で電気を伝導する素材。
2008年、銅酸化物ではなく鉄化合物から成る第2の高温超伝導体が発見。
活動中の蛋白質を観察する:
蛋白質がターゲットに結合して細胞の代謝状態を変え、
組織の特性にも関与するという驚くべき観察結果が得られた。
必要に応じた再生可能エネルギー:
風力や太陽エネルギーといった常時利用可能ではないエネルギー源から
生産した余剰電力を、産業規模で備蓄する有望な新しいツールが発見。
比較的容易に入手可能なコバルト・リン触媒は、電気を利用して水を分解し、
水素を発生させる。
その後、水素が燃料電池に貯蔵され電力生産が再び可能に。
胚の映像:
2008年、胚が発生する際の細胞の動きを先例がないほど詳細にわたって
観察することに成功。ゼブラフィッシュの胚を構成する約16,000個の
細胞の様子を、発生開始から24時間追跡する映像が記録・分析。
「良い」脂肪が解明される:
「良い」褐色脂肪を変化させ、「悪い」白色脂肪を燃焼して、
身体の熱を産出して筋肉に送り込むこと、また、その逆も可能であることが発見。
本研究は、肥満治療への新しいアプローチを提示。
世界の重量を計算する:
可視宇宙のほとんどすべての粒子とその相互作用を明らかにする
(正確には、どれほどの陽子質量および中性子質量をもっているかを予測する)
標準モデルを証明する演算に成功。
より速く、より低コストでゲノムの塩基配列を決定する:
ヒトのゲノム配列決定に用いた最初の方法に比べ、かなり高速で低コストの
さまざまな配列決定技術により、体毛の長いマンモスからヒトのがん患者まで
多種のゲノム配列が相次いで報告。
"Breakthough of the Year" by Science News staff in Washington, D.C.
http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi?_issue=139#582
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