(読売 12月26日)
高校生と大学生が、気軽に進路を語り合える場ができた。
近隣の高校生のたまり場になっている横浜市青少年交流センター。
その隅に、一際にぎやかな十数人の集団があった。
「大学って楽しい?」、「代返って何?替え玉ってこと?」、「彼女できましたか?」
制服姿の高校生が、スナック菓子をつまみながら矢継ぎ早に質問。
「楽しいよ」、「友だちは出来た」。
「毎週40枚、手書きのリポートを課されて徹夜ばかり。
覚悟と目的がないと、大学はきついよ」と助言する学生も。
「大学以外の進路は考えたこともないけれど、何のために行くのだろう」と
高校生たちが次第に物思いにふけり始めた。
そばでやりとりを聞いていた横浜国立大学の望月由起准教授(39)に
笑顔が浮かぶ。
この日は、望月さんが同大で担当する授業「高大連携」の一環で行う実習。
本来は、「入試直前期の過ごし方」で語り合うはずだったのだが……。
高校生が抱く将来への不安の緩和に、大学生の体験を生かせないか。
昨年始まった「高大連携」には、そんな望月さんの思いが込められている。
大学院で臨床心理や教育を学び、約10年間、大手予備校講師をした後、
4年前に同大に着任した。
入試突破に血眼の高校や予備校と、学生集めに躍起の大学を目の当たりに。
授業では、そんな現状の根底にある社会的背景や歴史を説明し、
高校と大学はどのように連携すべきかを、
高校生と向き合いながら考えさせることに重きを置く。
実習の現場として、高校生の利用率が高い交流センターに協力を要請。
教師や親の勧め、偏差値で、何となく選んだ大学になじめず、
退学した学生を数多く見てきた同センターの遠藤夢沙さん(28)も、
「学生が語る様々な大学の姿や将来像を通して、
高校生に色々な選択肢があることを知ってほしい」と期待。
実習は、大学生自身にも進学の意味や目的を振り返らせる好機となっている。
経済的事情で、進学を断念した高校生と出会った工学部3年生(21)は、
「そんな人の存在を考えたこともなかった」と打ち明ける。
対人折衝が苦手で、システムエンジニアを目指していたが、
「人と接するのは面白い」と考え直した。
ふまじめな学生の多さにうんざりしていた工学部2年生(20)は、
受験生時代を思い出し、「まず自分の夢をしっかり見つめよう」と思い直している。
進路指導には、目的地を定めてそこに向かわせる山登りタイプと、
夢を探しながら一緒に筏に乗って川を下るタイプとがある。
「価値観が多様な今の子にふさわしいのは、筏下りではないか」
様々な夢に寄り添える力量が、大学選びにかかわる大人に求められている。
◆ブランドも重視の傾向
今春入学の大学生約6万人へのベネッセコーポレーションの調査では、
進学先を決めた理由は「学びたい授業がある」(57.9%)が1位だったが、
4年前に比べ3.3ポイント減。
2位の「入学の難易度」も数字を下げた。
「知名度」が23.2%で8.5ポイント上がるなど、
ブランド重視の傾向もうかがえた。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081226-OYT8T00171.htm
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