(サイエンスポータル 2009年5月22日)
文部科学省科学技術政策研究所が、第3期科学技術基本計画の
フォローアップにかかわる調査研究結果を公表。
「内外研究者へのインタビュー調査報告」は、
国内の研究者に加え、欧米55人、アジア23人の海外研究者に対する
インタビュー調査結果が基に。
アジアと米欧の調査対象者を見ると、日本とのかかわりが深い
米欧の研究者はあまり多くない。
トップクラスの研究者が多いからやむを得ないだろう。
アジアの調査対象者は、23人中18人が日本に何度も来ているか、
長期間共同研究をしたという人たち。
日本の研究活動、研究環境に対する見方は、
欧米の研究者たちより現実を踏まえたものに。
日本に対する厳しい指摘は、研究機関・研究者の内向き志向。
「最近の若手研究者は、内向的に。
海外で勉強や研究をするチャンスをつかもうとしない」、
「博士号取得後も、日本で働けるから外に行かない。
外国に1年でもいいから出るべき」、
「日本全体、日本の研究環境が安定し過ぎているのでは。
日本の若手研究者は、その安定した環境に安住。
安定し過ぎた環境は、創造力を制限してしまう」、
「学問的に高レベルを目指す学生が減少している」、
日本に何度も来ているか、共同研究に参加しているということは、
それぞれの国でも優秀な研究者たちばかり。
それにしても手厳しい評価ではないだろうか。
組織、制度、仕組みなどについても具体的な指摘、批判が続く。
「研究者同士の交流も少なく、それぞれの研究機関の閉じた箱の中で、
独立した研究活動を行う傾向」、
「研究機関は、ヒエラルキー(縦の関係)がとても強いため、
各研究者に能力があっても成功しづらい体質」、
「Ph.Dの質が低すぎる。理由として、研究者と教授双方に真剣さが欠如。
米国では、優秀な学生には学費免除、給与支給など優遇措置が明確で、
教授側にも人材を預かる責任感が高く、
学生と教授に緊張感のある関係が成立」
最近、日本でも指導的な立場の人々から出始めている指摘も。
「中国は以前、研究の失敗は許さない雰囲気であったが、
近年では失敗を許容する風潮に。
イノベーティブな研究もできる。
日本も、もう少し寛容性を皆が持つ国になるべき」
アジアをはじめとする外国からの優秀な学生、若手研究者を
呼び込むことが、日本の科学技術力の向上に不可欠。
科学技術外交でも、アジアをはじめとする途上国との共同研究の
重要性が叫ばれ、実際に多くのプロジェクトが動き出している。
「研究環境や女性を取り巻く労働環境の悪さ、
学生の質の低下などから、日本の大学で研究することは難しい」、
「日本は、シンガポール人にとって文化的にはあこがれの国。
しかし、科学技術の研究の場には選ばない。
英語での研究環境がないため」
こんなことを言われないように、
足下の研究環境整備を急がないといけない。
http://www.scienceportal.jp/news/review/0905/0905221.html
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