2009年6月6日土曜日

技術が補う身体機能 メーカー、改良に努力 「老いが変わる」 医療・介護ロボット

(2009年5月25日 共同通信社)

「それではゆっくり立ち上がって下さい」
下関市の昭和病院のリハビリテーション室。
足の筋力を補助するロボットスーツ「ハル」をつけた
甲斐田年勝さん(63)は、理学療法士に支えられながら、
手すりにつかまって歩き始めた。

甲斐田さんは、脳梗塞の後遺症で下半身に障害。
大牟田市から4時間かけて昭和病院を訪れ、
4月下旬からロボットの利用を始めた。
妻シゲ子さんは、「普段はこんなに立ったり、歩いたり出来ません」と喜んだ。

ハルは、脳が筋肉に「動け」と命じた信号を皮膚の表面で検知し、
患者の足の動きを助ける。
昭和病院は、ハルを使った機能回復訓練をスタート。
整形外科の山崎康平医師は、
「まだ目立った効果は出ていないが、期待しながら使っている」

ロボットスーツを開発した筑波大学の山海嘉之教授は、
ベンチャー企業「サイバーダイン」をつくば市につくり、
住宅メーカーを代理店としてハルのリースを始めた。

「老化による身体機能の衰えは避けられないが、
テクノロジーで補うことは可能だ」

最先端のロボット技術によって医療、介護の現場を変えようとしている。
富山県小矢部市のベンチャー企業「日本ロジックマシン」は、
介護ロボット「百合菜」のレンタルを5月から始めた。
アーム(腕)を上下させることによって人を抱き上げることができ、
入浴やおむつ交換を補助する。

創業者の森川淳夫社長(54)が、介護ロボットを開発しようと
思い立ったのは約15年前。
特別養護老人ホームで働く知人が、腰を痛めたのがきっかけ。
富山県内の電機メーカーに勤めながらアイデアを練った。
2000年には自分の会社をつくり、昨年「百合菜」を完成。

「介護がつらく、限界を超えている」、「1日でも早く使いたい」
森川社長の電子メールには、介護に苦労している人たちからの相談が届く。
「介護、看病疲れ」による08年の自殺者は273人。
60歳以上が156人。
65歳以上の「老老介護」では、3人に1人が「死にたいと思うことがある」
高齢者施設向けに開発した介護ロボットだが、
森川社長は「家庭でも使えるように改良を急ぎたい」

医療、介護用のロボットを開発は、ベンチャー企業ばかりではない。
トヨタ自動車は、足が不自由な人が使う移動ロボットや
介護支援ロボットの商品化を検討。
三菱重工業も、03年に発表したロボット「ワカマル」を改良中。
人間の声に反応して返事をする機能に磨きをかけ、
家庭で高齢者を助けることができるロボットに脱皮させるのが目標。

「ロボット技術は日々進化している。
高齢者でも比較的簡単に使えるようになってきた」
藤江正克・早大教授(ロボット工学)。
ロボットの安全基準や、万が一の事故に備えた
保険制度などの整備はまだこれから。

「社会がきちんとロボットを受け入れる準備をすれば、
10年以内に相当普及するはず」
藤江教授はこう予想。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/25/100282/

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