2009年6月5日金曜日

逆風の中で:第4部・冬季競技の模索/4 フィギュア、リンク閉鎖

(毎日 5月22日)

フィギュアスケートで日本勢が活躍する半面、
選手の練習や大会会場となるリンクの確保が困難に。
多くは、一般利用者の入場料が主な財源だが、
入場者の減少に伴い、各地で閉鎖が相次いでいる。
06年トリノ五輪の金メダリスト、荒川静香さんが通った
仙台市の勝山スケーティングクラブも4月末で幕を閉じた。
構造改革の荒波にもさらされている。
政府は、社会保険料で整備した福祉施設の廃止・売却を決めたが、
対象には13のリンクが含まれていた。

高橋大輔(関大大学院)が育った岡山県倉敷市の年金福祉施設、
ウェルサンピア倉敷のリンクもその一つ。
08年2月の競売で応札がなく、3月末での閉鎖が決まった。
「若手選手の練習拠点が消えてしまう」と動いたのが、
岡山県スケート連盟。

管理する「年金・健康保険福祉施設整理機構」に談判し、
無償でリンクを借り受けると、選手の父母や連盟会員らで協力し合い、
翌4月から自主運営で再開。
通常月200万円以上かかる管理費を節約するため、
時には製氷車の運転を会員が行い、貸し靴の窓口も当番制にして
人件費を削った。
夏の休場後、10月に再開する際は、業者に頼めば200万円かかる
氷張りを、手作りでしたことも。
藤井康男理事長は、「自主運営にかかわった人は100人以上。
ボランティアで大変だったが、役員報酬などの経費がかからず、
運営は可能だった」

存続の朗報が届いたのは今年2月。
再入札で、近くの倉敷芸術科学大を経営する学校法人加計学園が
3億3000万円で落札。
今後も、運営を無償で県連盟に任せる覚書も結び、
「大会開催もできる」と藤井理事長は喜ぶ。

関西のトップ選手が練習する大阪府立臨海スポーツセンター(高石市)も、
財政再建策で一時廃止・売却の方針が盛り込まれた。
存続を求める13万人以上の署名もあって、府は継続を決めたが、
11年度以降の委託費(年間3000万円)や大規模改修費は
支出しないと明言、危機は去っていない。

日本スケート連盟は昨年、廃止の危機にあった倉敷や
福井県のウェルサンピア敦賀のリンクについて、
連盟指定リンクとして大会や合宿を開催し、存続を支援することを決めた。
しかし、運営資金の助成まではできないのが実情。

閉鎖したリンクのある関係者は言う。
「フィギュアは、日本を代表する競技。
民間任せにせず、もう少し行政が拠点のリンク作りに乗り出してほしい」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/05/22/20090522ddm035050077000c.html

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