2010年11月23日火曜日

健康情報見極めるには リスク、便益、費用…比べ選択 事例、還元し学び合う環境を

(2010年11月12日 毎日新聞社)

ダイエットや健康食品からがんの治療まで、
メディアを問わず健康・医療情報があふれている。
取捨選択し、健康な生活やよりよい医療に結びつけるための力は、
ヘルスリテラシー」と呼ばれ、
情報量の急増に伴って重要性が一般に浸透し始めた。
いま必要な健康・医療情報の活用法とは?

「情報に振り回され、適切な意思決定ができない例が、
個人から行政の政策レベルまで、広く見られる。
あわてた時の情報の『衝動買い』は、特に避けなければいけない」

中山健夫・京都大教授(健康情報学)。
「生老病死」に向き合う人を支える情報のあり方をテーマに
研究を進めている。

専門家でない人が、目の前にある健康・医療情報の信頼性を
判断することは、重要かつ難しい問題。
中山教授は、科学的根拠を示した論文などの引用元を明示した
「メーン情報」を見つけることが肝心。
引用元のデータで、リスクの大きさを知る。
病気の予防や治療の根拠について、学会などが手順をまとめた
文書「診療ガイドライン」も、メーン情報の一つ。

引用元を明示しても、利点だけを都合よく整理して紹介する場合も多い。
こうした「トリック」は、専門家ですら見逃すことも。
同教授は、「すべての健康・医療情報には不確実な部分があると
理解したうえで、行動の前に結論や影響を考えることが役に立つ。
リスクとベネフィット(便益)、場合によっては費用も比べて
選択する力を、普段から養うことが重要

インターネットが、ヘルスリテラシーを高める可能性に注目し、
約10年前から健康・医療情報サイトを運営してきた
中山和弘・聖路加看護大教授(看護情報学)は、
ネットは、医療界が抱え込んでいる知識や情報をオープンにする
チャンスだが、日本では米国などに比べ、まだ質的、量的に不十分」

社会的・経済的な理由による「健康格差」が深刻な米国だが、
公的機関や民間医療機関によるネット上の健康・医療情報は充実。
国立医学図書館のデータベースは、200万件以上の論文が
無料で検索でき、世界中の研究者や一般の人からの
年間検索数は10億回近く。

ネットの利点は、情報の送り手と受け手の双方向性にある。
この点、日本もミクシィやグリーといった交流サイト(SNS)などに
多様な健康・医療情報のやり取りがあり、闘病記を病名や年齢などから
検索できる「TOBYO」などのサイトも。
こうした情報は、科学的根拠のある情報に対する
セカンドオピニオン的な位置付けとなる。

同教授は、似た境遇にある人同士の体験情報の共有は、
「社会的なヘルスリテラシーを上げることにもつながる」と期待。
「自分だけ良い情報をもらって、良い意思決定をしようというのは難しい。
成功例や失敗例を還元し、学び合う環境をみんなでつくっていく意識が必要」

病気で医師の診断などを要する場合、
治療法などを巡って納得できる決定をするには、
医療従事者とのコミュニケーションが欠かせない。

自分が得た情報を、医師に問いただすのは勇気がいる。
勧められた治療法と異なる場合はなおさらだ。
中山和弘教授は、「患者は、いろんなコミュニケーションを使って
情報を集めていることを、多くの医療従事者は分かっているし、
患者の価値観を重視する流れがある」
医療現場にも、変化が起こりつつあるようだ。

◇効果的な活用法など解説

京大の中山健夫教授は、病院検索サイト「QLife」上に、
「5分で分かる!健康情報見極め術」(http://www.qlife.jp/value/)を監修。
マンガを用いて、中高生でも教材として利用できるよう、
4点のアドバイスを柱にした。

聖路加看護大の中山和弘教授は、
「健康を決める力」(http://www.healthliteracy.jp/)を今月開設。
1冊分の本にも相当する文量で、リスクや医療の不確実性から
ネット情報の効果的な活用法まで、丁寧に解説。
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◇ヘルスリテラシー

リテラシーとは、「読み書きの能力」を意味し、
転じて健康を保つため、取り戻すための意思決定に必要な情報を
入手したり、理解する個人の能力を意味。
医療リテラシーなどと称されることも。
日本では、概念自体は保健医療分野で導入されているが、
まだ研究例が少ない。
長期的な医療費削減の観点からも注目。
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◆健康・医療情報をチェックするポイント

・情報の出所や科学的根拠をチェック
・安易に強い表現をしていないか?
・情報の鮮度を確認
・情報発信者の意図を想像する
・誰が情報のスポンサーか確認する
・インターネットの場合、問い合わせ窓口がきちんとあるか?
(QLife「5分で分かる!健康情報見極め術」より一部抜粋)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/12/128229/

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