2008年6月27日金曜日

学生をつくる(9)行動を記録 自省の跡

(読売 6月13日)

学生に、毎日の行動を記録させる大学がある。
「はいっ」「ソーレ」「はいっ」「ソーレ」
石川県穴水町の七尾北湾に、カッターをこぐ学生たちのかけ声。

同県野々市町の金沢工業大学の1年生。
最初は弱々しかった声も、30分かけて周辺をひと回りするころには
力強さが出てきた。
同大では1年生全員が、大学研修施設でカッター操船を経験。
人を思いやる心やチームワークを育てるのが目的。

今年は、新入生約1700人が15班に分かれ、順次施設を訪れた。
学生たちは、大学のイントラネット上の個人ページに、
穴水で感じたことや学んだことを書き込んだ。

金沢工大では2004年度から、イントラ上に複数の
「ポートフォリオ」の仕組みを構築。
1年生全員が記入する修学ポートフォリオは、
毎日の行動履歴を記録するもの。

記入項目は、「欠席・遅刻した講義科目と理由」、
「予習や復習、課題をした科目と所要時間」、
「部活動やアルバイトなどの内容と時間帯」、「睡眠時間」など。
課外活動も記入させるのは、課外も含めた勉強や人間関係の中で、
総合的な人間力が付く。

学生は、毎日の行動だけでなく、1週間ごとに、
週の反省点やその対策を100字以上で書き入れ、印刷して
「修学基礎」の授業で提出。
遅刻が続き、夜にアルバイトをしている場合、すぐに大学が指導できる。

しかし、ポートフォリオの目的は学生の管理ではない。
自分の生活を振り返り、何ができていないか、気づかせること。
藤本元啓学生部長は、「自己を管理し、評価し、次につなげることは、
本来、自らやるべきことだが、今は、できない学生が多い。
教員が介在して手を差し伸べている」。

新入生の1人、工学部の飯岡豊さん(19)は、毎週の勉強、
ボウリングサークルでの活動の様子などをポートフォリオに書き込んだ。
「今は効果はわからないけど、書くのが楽しくなってきた。
後できっと役立つと思う」

工学部3年の沢田隆之さん(21)は、1年の時、
最初は「面倒くさい」と思いながら入力。
特に100文字以上の反省文が苦痛で、
「今週は暇だった、しんどかった」程度しか書く内容がなかった。
しかし、毎週理由付けをしながら書くうちに、
「自分を見つめるようになった」。
今では、手帳を持って自己管理をするように。

学生たちは、時間の使い方が上手になり、ものごとの優先順位が
つけられるようになってきた。
学生を伸ばすことで、その名を知られる大学は、
社会人に必要な能力を、1年目から育てている。

◆ポートフォリオ

本来は、紙ばさみや書類入れという意味。
転じて、教育分野では、学習の目標や記録などをファイルに残し、
その蓄積から成長を確かめる学習法を指す。
バインダーなどに、書類や写真の記録物を入れていく方法が主流だが、
コンピューター上にデータベースとして残していく方法も。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080613-OYT8T00273.htm

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