(読売 6月23日)
日本海に浮かぶ隠岐諸島・中ノ島にある島根県海士町。
6月上旬の日曜日、島中心部にある海士中学校の図書室を訪れた。
この日は一般開放の日、室内は親子連れでにぎわっている。
「読書って楽しいね」
近くの小学4年村尾美海さん(9)が、ライオンキングの絵本を手に、
顔をほころばせていた。
海士中を出て、近くにある港のターミナルに向かう。
待合室に置かれた本棚の前で、本とにらめっこする女の子の姿。
人口約2400人の小さな町で、本好きの子どもたちが増えている。
「かつては、子どもにとって読書の習慣を身につけるのが
難しい環境でした」
町教育委員会の司書、磯谷奈緒子さん(34)。
公立図書館はゼロ。
書店は1店のみ。
1島1町の離島だから、隣町の図書館に足を運ぶわけにもいかない。
町内に二つある小学校の図書室は古い本ばかり。
公民館に約1500冊があったが、こちらは大人向けの本ばかり。
風向きが変わったのは、町が2007年秋、
「島まるごと図書館構想」を始めてから。
港のターミナルや福祉施設など人の集まる所を、
図書館の分館に見立てて整備する構想。
気軽に本を手に取ってもらおうと、どの分館にも小さな本棚を置いた。
一方で、学校図書室を整備した。
小中3校で年間計50万円だった図書購入費を、180万円に増額。
古い本を思い切って捨て、子どもたちが好きそうな新しい本を購入。
じゅうたんを敷くなど、心地よい空間を作り、
1人もいなかった司書を2人雇った。
町のホームページに蔵書のリストを載せ、要望があると
分館まで届けるようにした。
その結果、小学生の本の貸し出し冊数が飛躍的に伸びた。
昨年度は6100冊、07年度(760冊)と比べると8倍。
島の児童は約100人だから、1人が年60冊近く借りたことに。
今年10月、島に待望の公立図書館が完成する。
ゆくゆくはここを拠点に、インターネットですべての本を一元管理し、
どの分館でも好きな本を借りられるようにする予定。
読書過疎地だった島の子どもたちに、
「本のある暮らし」が根付き始めている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100623-OYT8T00270.htm
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