2010年7月6日火曜日

子どもと図書館(1)「島まるごと」本好きに

(読売 6月23日)

日本海に浮かぶ隠岐諸島・中ノ島にある島根県海士町。
6月上旬の日曜日、島中心部にある海士中学校の図書室を訪れた。

この日は一般開放の日、室内は親子連れでにぎわっている。
「読書って楽しいね」
近くの小学4年村尾美海さん(9)が、ライオンキングの絵本を手に、
顔をほころばせていた。

海士中を出て、近くにある港のターミナルに向かう。
待合室に置かれた本棚の前で、本とにらめっこする女の子の姿。

人口約2400人の小さな町で、本好きの子どもたちが増えている。
「かつては、子どもにとって読書の習慣を身につけるのが
難しい環境でした」
町教育委員会の司書、磯谷奈緒子さん(34)。

公立図書館はゼロ。
書店は1店のみ。
1島1町の離島だから、隣町の図書館に足を運ぶわけにもいかない。
町内に二つある小学校の図書室は古い本ばかり。
公民館に約1500冊があったが、こちらは大人向けの本ばかり。

風向きが変わったのは、町が2007年秋、
「島まるごと図書館構想」を始めてから。
港のターミナルや福祉施設など人の集まる所を、
図書館の分館に見立てて整備する構想。
気軽に本を手に取ってもらおうと、どの分館にも小さな本棚を置いた。

一方で、学校図書室を整備した。
小中3校で年間計50万円だった図書購入費を、180万円に増額。
古い本を思い切って捨て、子どもたちが好きそうな新しい本を購入。
じゅうたんを敷くなど、心地よい空間を作り、
1人もいなかった司書を2人雇った。
町のホームページに蔵書のリストを載せ、要望があると
分館まで届けるようにした。

その結果、小学生の本の貸し出し冊数が飛躍的に伸びた。
昨年度は6100冊、07年度(760冊)と比べると8倍。
島の児童は約100人だから、1人が年60冊近く借りたことに。

今年10月、島に待望の公立図書館が完成する。
ゆくゆくはここを拠点に、インターネットですべての本を一元管理し、
どの分館でも好きな本を借りられるようにする予定。
読書過疎地だった島の子どもたちに、
「本のある暮らし」が根付き始めている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100623-OYT8T00270.htm

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