2008年9月13日土曜日

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 廣瀬通孝氏インタビュー

(日経 8月24日)

廣瀬通孝・東京大学教授

―今春、少子高齢化社会にはロボットの活用が有効との報告書。

金鉱掘りの話だと思ってほしい。
少子高齢化による人手不足対策として、移民の受け入れが議論。
工場だったら、ロボットに置き換えればよいという発想になるように、
看護や介護などのサービス分野でも、ロボットで代替できないかと
発想するのは自然だ。
技術的には、ヒューマノイドとか家全体をロボットにするとか、
様々な手段があるだろう。
粗削りながら想定される需要とサービスの可能性をまとめ、
頑張って掘れば、1兆円のマーケットがあるかもしれないよ、
といった道標を示した。

―ロボットの普及にはどんな思考が必要か?

システム工学の考え方だろう。
アポロ計画では、月に行くと目標を立てた後、
システム工学の思考でどうやって1番安く行けるかと考えた。
技術だけを追い求めると、社会の需要を見間違える場合がある。
国鉄時代の末期に、莫大な費用をかけて全自動化操車場を作った。
当時の最高技術の粋を集めたものだったが、
後の宅急便の時代に巨大な負の遺産に。

ロボットでいえば、ヒューマノイド技術の追求は、
「F1カー」のように技術者を鼓舞する意味ではよい。
だが、ふと気がついたら国鉄の操作場のように、
役に立たなくなっているというリスクもある。

―ロボットは社会にどんな効果をもたらすか?

大きく分けると、3つ。
1つ目は、労働力の代替。
2つ目は、退職した人が寝たきりなどになってゼロになる分が、
ロボットの支えでプラスになる。
3つ目は、介護などで家に縛られていた人が、
ロボットの支援で外部活動に参加できるようになる。

2025年時点で352万人の労働力を補い、社会保障費を
2兆1200億円抑制できると試算。

人の移動を支えるロボットであれば、自動車会社が強い。
IT(情報技術)家電がロボットになるかもしれない。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、祖業である白熱電球から撤退するように、
技術は時代とともに移り変わることを忘れてはならない。

<廣瀬通孝氏 略歴>
1982年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。
同工学部教授、同先端科学技術研究センター教授を経て、
現在、同大学院情報理工学系研究科教授。
ヴァーチャルリアリティ研究などで知られる。
ITとロボット技術を融合する「IRT基盤創出プロジェクト」で主導的な役割。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2009022082008

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