(毎日 7月23日)
柔道の全日本ジュニア体重別選手権の関東予選。
100kg超級の決勝は、東海大相模高3年の王子谷剛志と
1学年上の上武大の選手との顔合わせ。
体格でも見劣りしない王子谷は、
内また透かしと寝技の合わせ技で一本勝ち。
東海大相模高の林田和孝総監督は、
「大学生が多い全日本でも、上位を狙える選手」と力を込めた。
◇中高大「10年強化」
五輪でも、日本の「お家芸」と言われてきた柔道。
それを支えているのが、高校生の選手の集積。
過去20年間の全国高校総体の優勝校は、国士舘7回、
東海大相模6回、世田谷学園4回、桐蔭学園2回、天理1回と、
東京、神奈川勢が19回を占める。
国士舘や東海大相模などは、大学の道場に
付属の高校生だけでなく、中学生も集まり、
中高大の「10年強化」を進めてきた。
王子谷も、週に3度、電車を1時間乗り継いで、
東海大の道場に通う。
高校総体での団体3連覇を目指して大学生の胸を借り、
レベルの高いメニューをこなす。
大阪出身で、中学から東海大相模に入った王子谷は、
「高校の練習では、投げられてはいけないと力が入る。
大学では、思い切ってぶつかることができる」と、
大学での練習を好む。
東海大が、高校との連携を図ったのは約40年前。
東の明大、西の天理大という名門に押されていた新興校で、
なかなか選手が集まらなかった。
当時、柔道部監督だった佐藤宣践・東海大スポーツ教育振興
本部長は、全国の付属高校にOBの指導者を送り込んだ。
ほかの大学に先駆けた作戦。
その中でも、直属とも言える相模高に強い選手を集め、
五輪金メダリストの山下泰裕さん(熊本出身)、
井上康生さん(宮崎出身)らが育った。
付属中学にも、指導体制を広げていった。
全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長は、
「強い選手は、小さい時から強い。
早い時期から強化していくことが、将来の全日本にもつながってくる」、
メリットを強調する。
林田総監督も、「10年間指導することで、
選手が強くなる確率は高くなる」、一貫強化の成果には自信。
ただし、「真の力が分からない中学生からの英才教育が、
柔道界全体の強化につながっているか」という
問題意識があるのも確か。
◇「王国」から流出
かつて「柔道王国」と呼ばれた九州地区。
高校総体の第1回を久留米商(福岡)が制したが、
最後の優勝は22年前の東海大五(福岡)。
関東や東京の大学付属の「10年強化」が進み、
最近はベスト4に入ることも難しくなった。
中学生からの強化が進んだことで、
小学生にも目が向けられるようになったが、
九州の柔道関係者は、「小学生のトップレベルが関東に流れ、
高校進学時にまた出ていく。強い選手が九州に残らない」と嘆く。
強い選手がいれば、相乗効果でレベルアップが図られるが、
今は有力選手の首都圏への流出が止まらず、
選手の育成に苦労しているのが実態。
常に、五輪での好成績を期待される日本柔道界。
最近は、国際舞台で苦戦が続く。
低年齢から一貫指導する「集中強化」に力を注ぐのか、
それとも全国的な底上げに着手するか。
伸び盛りにある高校年代の育成は、その岐路にある。
それは、他のスポーツにも共通したテーマといえる。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100723ddm035050176000c.html
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