2010年8月1日日曜日

「柔道の脳しんとうは危険」中1死亡事故で報告書

(朝日 2010年7月20日)

滋賀県愛荘町で昨夏、中学1年の柔道部員が練習中に
意識不明となり、急性硬膜下血腫で死亡した問題を検証している
町の第三者委員会が、「脳振盪に対する正しい知識の啓蒙が
柔道指導者に必要」と提言する報告書をまとめた。

軽い脳振盪でも、繰り返すと命にかかわる危険性が医学界で指摘、
全日本柔道連盟によると、柔道界ではほとんど検討されてこなかった。
連盟も対策に乗り出した。

愛荘町立秦荘中1年だった村川康嗣君(当時12)は昨年7月、
上級生を相手に2人1組の実戦形式で技をかけあう1本2分間の
「乱取り」を重ねた。

相手が当時顧問だった男性(27)に代わった直後の26本目で
意識を失い、約1カ月後に死亡。

脳神経外科医や柔道指導者らでつくる検証委がまとめた報告書によると、
柔道初心者の村川君にとって、練習は「限界を超えた内容であった」
合間の水分補給の際、水筒がある場所とは違う方向へ行こうと
していたことから、脳振盪を起こしていた可能性がある。

脳振盪は、頭を直接打たなくても、技で投げられる際の回転力で
引き起こされるといい、直後に練習を再開して脳が再びダメージを
受けると、重篤な状態に陥る可能性がある。

現場の柔道指導者は、「脳振盪に関する知識を持っていないのが現実」、
「『意識を失っても、元に戻るからよい』とする間違った認識がある」と
報告書は指摘。

愛知教育大の内田良講師(教育社会学)の研究によると、
昨年度までの27年間で、中学・高校の柔道の部活動、
授業で109人が死亡。
2007年度まで10年間の死亡率は、野球の5倍。
死因の約7割が、急性硬膜下血腫など頭部の外傷。

相次ぐ事故を受け、全日本柔道連盟は5月、医学的な立場から
安全対策を検討する「医科学委員会」に脳神経外科医を加え、
6月「安全指導プロジェクト」を発足。

坂本健司総務課長は、「脳振盪を起こした後の処置や回転力で
引き起こされる脳外傷について、これまで柔道界では
検討されてこなかった。
報告書を真摯に受け止め、安全対策を講じていきたい」

http://www.asahi.com/sports/spo/OSK201007140092.html

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