2010年8月4日水曜日

インサイド:高校スポーツを育てる インターハイを前に/3

(毎日 7月22日)

「スポーツ立県」を掲げる秋田県は今年度、
県内の高校生アスリートを経済的にサポートする制度を始めた。

公私立に関係なく、県内で下宿や寮生活などを送るトップ選手
(特待生の規定を検討中の野球は除く)を対象、
家賃相当の毎月2万円を援助するスポーツ奨学金の新設で、
返済義務のない給付金。

秋田県教育庁保健体育課の猿橋薫・学校体育班長は、
「貸与型ではなく返済義務がない奨学金は、
都道府県レベルでは全国初でしょう」

◇不況で一層県外へ

事業の背景には、地方の自治体の共通の悩みである
「ジュニア選手の県外流出」への危機感。

過去にも、練習環境に恵まれた私立の強豪校に進学する
選手はいたが、近年の経済情勢の悪化で拍車が掛かり、
学費や寮費の免除で特待生を迎える他県の私立校に
流れる例が目立つ。

秋田県は南北に長く、県内在住者でも通学時間が2時間ほどかかり、
下宿を余儀なくされるケースは珍しくない。

県内で親元を離れて暮らす高校選手は、約260人(野球の特待生を除く)。
全国大会で上位を狙える有望な中学選手のうち、
東北や関東などの他県校に進学した県外流出者は卓球、水泳など
年間十数人おり、増加傾向。

スポーツ奨学金には、こうした流出に歯止めをかける狙い。
支給条件は、全国大会8位以上などの競技実績、
実家を離れて県内で下宿、特待生ではない--など。

各学年30人の募集を上限に、2170万円を予算化し、
当初見込みの約6割にあたる計53人(男子36人、女子17人)が選ばれた。
支給を受けた9競技別では、バスケットボール(17人)と
バレーボール(13人)が多く、陸上(9人)、スキー(4人)など。

支給を受ける高校1年のある選手は、実家からの通学時間が
約1時間半もかかるため、下宿生活を選んだ。
家賃や食費で毎月6万円程度かかり、2万円の支援は大きい。
選手は、「いい環境で競技をできることに感謝している」、
保護者も、「経済的に助かるし、周囲の応援が子どもの励みになる」
指導者からは、「県財政が厳しい中、本当に長続きするのか」と不安の声。

◇ジュニア最重視

秋田県には、男子バスケットの能代工や、男子バレーの雄物川など
全国上位の競技力を誇る高校も。

両校は県立校だが、これまでも県外の有望選手が入学。
日本人初のNBA選手となった田臥勇太(リンク栃木)は横浜市出身、
「バスケ留学」で能代工へ進学した一人。
今回の制度では、県外選手が秋田県内の高校に入りやすくなる
効果もあるが、県内育ちの選手とのバランスをどう保つかも今後の課題。

秋田県は、07年の地元開催国体で天皇杯(総合優勝)と
皇后杯(女子優勝)を獲得。
この時、県外から社会人の即戦力選手を集めたが、
今はジュニアの育成が最重点課題。

深刻な高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)の問題も、
ジュニア重視と無関係ではない。

09年10月、島根に次ぐ全国2位の28・9%の高齢化率は、
25年後に全国トップの41%になるとの推計。
スポーツを「活力と発展のシンボル」と位置づける秋田。
来夏には、秋田など北東北でブロック開催する高校総体を控える。
若者に注がれる視線は、いっそう熱を帯びてくる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/07/22/20100722ddm035050171000c.html

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