(日経 2009-05-08)
街を歩いていても、公園で日なたぼっこしていても、電気がたまる。
前を歩く人の背中でテレビ中継が見える——。
こんな生活を実現する印刷技術が登場。
製品化するか否かは事業判断によるが、太陽電池や電気をためる
二次電池、動画を映すディスプレー、スピーカーなどを服に印刷できる。
世界最高レベルのものづくり国家、日本だからこそなせる“神業”。
ポリカーボネートなどの樹脂フィルムを手がける帝人は、
シリコン粒子の溶けたインキを開発した米国ベンチャーの
ナノグラム(カリフォルニア州)と共同研究契約を結んだ。
樹脂フィルムに半導体回路を印刷する技術を開発し、
大画面ディスプレーや太陽電池メーカーなどに売り込む考え。
ナノグラムは、NTTの研究者だった神部信幸副社長らが
1996年に米国で設立、レーザーを使う独自技術で
直径数ナノ~数十ナノメートルの様々な素材の粒子と応用技術を開発。
これまでに、半導体回路に必要な電子が流れるn型と電子の穴(ホール)が
流れるp型のシリコン粒子、それらを溶かしたインキを開発。
これに帝人が注目。
「樹脂フィルム事業に新領域が広がる」(新事業開発グループの平坂雅男部長)
と期待し、ナノグラムと共同研究体制に入った。
チッソも、米国ベンチャーの技術に注目。
住友商事が仲介して、カンブリオス・テクノロジーズ(カリフォルニア州)が
開発した透明な導電性ナノ粒子インキの販売と事業開発に乗り出した。
透明な樹脂フィルムを基板とするタッチパネルや
有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)で、今後高い需要があると期待。
印刷を本業とする大日本印刷(DNP)も、2つの新技術を発表。
像情報技術研究所(柏市)は、塗って電圧をかけるとオレンジ色に光る
「ルテニウム錯体」というナノ粒子のインキを開発。
「書店や小売店で使う新製品のPOP(店頭販促)広告用途を狙う。
将来は色数を増やし、表示技術も開発すれば、
新型テレビの実現も夢ではない」と、森陽一エキスパートは意気込む。
ナノサイエンス研究センター(つくば市)は、熱処理装置メーカーの
ミクロ電子(川越市)と電子回路で最も使われる銅配線を
印刷で作る技術を開発、実用化にメドを付けた。
「銅以外にも配線用の銀や金、ニッケルのほか、はんだ付けに使う
スズ・鉛合金のインキの開発も目指し、様々なニーズに応えたい」と
武誠司グループリーダー。
最近、印刷で回路を作る研究に参入するのは、
化学品メーカーや印刷会社だが、1990年代前半にいち早く
スタートしたのは、印刷機メーカーのセイコーエプソン。
現在、40インチ以上の有機ELディスプレーをインクジェットで作る
研究に取り組んでいる。
環境に優しいグリーン・テクノロジーの利用を推進する同社は、
得意のインクジェット技術でできるだけ大掛かりで、
真空装置を使わない省スペース・省エネルギー・クリーンな
製造環境の実現を進めてきた。
帝人やチッソ、大日本印刷などが新たに加わり、
この動きが一気に加速するかもしれない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090507.html
0 件のコメント:
コメントを投稿