2009年5月13日水曜日

シンガポール経済開発庁の楊バイオ医科学産業担当局長

(日経 4月30日)

アジアのバイオ医薬産業のハブを目指しているシンガポール。
2003年、バイオ医薬の研究開発拠点「バイオポリス」を開業し、
日本を含む海外の製薬会社や大学、研究機関の誘致を加速。
シンガポール経済開発庁のバイオ医科学産業担当局長である
楊吉全氏に誘致の進ちょく状況を聞いた。

——バイオ医薬産業を振興する狙いは?

人口が少なく資源も乏しいシンガポールには、
知的集約型産業の育成が急務。
我が国の経済を支えている製造業には石油化学産業もあり、
バイオ医薬産業を育てる土台があった。
2000年、バイオ医薬産業の生産額は60億シンガポールドル(約3900億円)、
製造従事者は6000人にすぎなかったが、
電子機器や化学などに並ぶ一大産業に育成する考えで、
2015年に250億シンガポールドル、1万5000人に拡大する目標

「バイオ医薬産業の育成を国策として打ち出した2000年以前は、
英グラクソスミスクラインや米シェリング・プラウなど
製薬会社の工場が存在していたが、
化学合成による低分子化合物の製造拠点がほとんど。
抗体医薬品などのバイオ医薬品を中心とする製造業に
脱皮することが課題

——バイオ医薬産業の誘致策を強化している。

「政府が整備するバイオポリスの拡張は順調。
第1期、第2期の整備が終わり、建物の延べ床面積は24万平方メートル。
今後、10年初めにさらに4万平方メートル増やす。
製薬会社や大学などが、最先端の研究設備を手軽に使える環境を整える」

「2000年、バイオ医薬産業の研究開発(R&D)従事者は
ほとんどいなかったが、世界中の頭脳をヘッドハンティングし、
優秀な人材を呼び込む仕組み作りに取り組んでいる。
がん細胞の増殖を食い止める、代表的ながん抑制遺伝子を発見した
著名なデビッド・レーン氏の招請もその一例。
科学技術庁のチーフサイエンティストに就任。
日本から、胃がんの研究で知名度が高い元京都大学教授の
伊藤嘉明氏を招いている」

——日系企業の進出状況は?

武田薬品工業のほか、早稲田大学とオリンパスが共同で
研究拠点を設けるなど、誘致実績も出てきた。
現状は、欧米からの進出企業が多いのが実情。
具体的な誘致目標はないが、日本の製薬会社の誘致を積極的に進める」

——誘致策の成果は?

欧米のバイオ企業11社や医療技術企業17社が、50件の製造施設に投資。
誘致に成功した医薬品受託大手のロンザ(スイス)は、
生物製剤の工場を建設し、追加投資を計画。
同国は当初、低分子化合物の製造拠点しか持たなかったが、
バイオ医薬品に軸足を移している。
バイオ医薬産業の生産額は、08年190億シンガポールドル、
製造従事者は1万2000人増。
バイオ医薬産業の育成が実ってきた」

——シンガポールはバイオ医薬産業を育てるため、
経済開発庁傘下で国内企業に投資するバイオベンチャーキャピタルを
立ち上げたが、世界的な金融危機を受け、運用に支障は招じていないか?

「ファンドは政府資金を活用しており、長期的な視野に立った
運用ができるのが強み。
金融混乱ではこの強みが生きる。運営にも支障は招じていない」

——研究開発(R&D)投資を担うのはほとんどが外資系企業。
国内企業の振興が課題では?

「地場のバイオベンチャーは、抗がん剤の新薬を開発するなど
成果も出てきているが、バイオ医薬産業の成長のけん引役は外資と位置づけ。
バイオポリスの魅力作りに力を入れ、
日本企業を含めて外資の誘致を加速する」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090427_2.html

0 件のコメント: