2010年7月21日水曜日

夜更かしする子どもたち 教育関係者ら危機感…学校、園で早寝運動

(2010年7月11日 毎日新聞社)

朝、ぼーっとしていて先生の話が聞けない小学生。
「疲れてる」。
外へ遊びに誘っても、断る保育園児。
そんな寝不足気味の子どもたちが、問題に。

夜更かしする子どもたちの実態と、早寝早起き運動を進めている
保育園などでの取り組みを探った。

「きのうはワールドカップ(W杯)見ちゃって疲れ気味です、
よろしくお願いします」
東京都内のある保育園で、幼児を連れて登園してきた母親が、
笑顔で保育士に語りかけた。

この日、サッカーW杯で日本代表が戦いを終えたのは、
未明の午前1時半過ぎ。
あっけらかんと語る母親に、保育士はぎこちない笑みを返す。

夜更かしの原因の一つは、テレビ。
午後10時過ぎのお笑い番組や連続ドラマを、
「親と一緒に、なんとなく見てしまう子は珍しくない。
親御さんも注意しない」(小学校の養護教諭)。

携帯型ゲーム機の普及も大きい。
ある小学校の校医は、「午前中から保健室でぐうぐう寝るのは、
ゲームざんまいの証拠。
床についてもベッドの中で遊んでいて、
就寝時間は午前0時を回る子もいる」

早寝早起きの大切さを各地の保育園で説く、
鈴木みゆき和洋女子大教授は、「ファミコンの普及とコンビニの
登場で、就寝時間が遅くなり始めたのが80年代終わり。
暗くて怖かった夜が明るく楽しくなり、生活時間がずれ込んだ」

外食産業の深夜営業や24時間営業のコンビニエンスストアの
増加などで、午後10時を過ぎても、
街に幼児の姿を見かけることは珍しくない。

日本小児保健協会の調べでは、午後10時以降に寝る
4歳児は80年13%、00年39%と3倍に。

鈴木教授が幼稚園の教諭らに聞き取りしたところ、
遅く寝る子には一定の傾向が。
「無表情で自分の気持ちを表さず、遊びに乗ってくることができない。
夜きちんと眠るかどうかが、その子の昼間を決める」

東京都足立区は08年度から、区内の全幼稚園と保育園で
早寝早起き運動を始めた。
区が同年度から3カ年計画で始めた子ども施策推進事業に、
生活リズム改善も重点目標の一つ。

公立保育園の元園長で、東京都足立区保育指導担当係長の
佐々木恵美子さんは、「大人の生活に振り回されて、
寝不足になった子を何とかしなくてはと思っていた」

区立中島根保育園の水久保結花里園長は、
「早く寝ましょうと呼びかけても、住宅事情で1人だけ早く寝るのが
難しかったりして、保護者から『無理です』といわれることも」

08年調査では、4歳児29人の平均就寝時間は午後10時10分。
園児たちに、目標を達成できればシールを張る早寝早起きカードを
配ったところ、シールを張りたい一心で、「もう寝る」と親に告げ、
さっさと就寝する子が現れた。
その後、平均の就寝時刻は20分早まった。

昨年、バランスのよい朝食をとるため、
毎朝の朝食を、黄色(炭水化物)、赤(たんぱく質)、緑(野菜)に分類、
色付きシールを張らせた。
「赤が足りないから、ウインナー食べさせて」と親にせがむ子も出て、
取り組んだ5歳児は、全員が朝食を食べるようになった。

水久保園長は、「子どもが変われば、親も変わる。
徐々に意識付けすることが大切」

千葉県習志野市の屋敷小でも05年度から、毎月1週間、
生活リズムを記録する「元気っ子カード」をつけさせている。
就寝時間は、「9時より前」が32%(05年度)から37%(09年度)に、
起床時間は「6時~6時29分」が27%(05年度)から41%(09年度)
に増えて、早寝早起きが進んだ。

そろそろ夏休み。
崩れがちな日々のリズムを整える方法について、
鈴木和洋女子大教授は、「おやすみなさいツアーと称して、
子どもと家じゅうの電気を消す儀式をして、親も寝てしまうのも一案。
寝室のカーテンを閉めないでおけば、光が入って早く目覚められる。
昼間は、水遊びや泥団子づくりで体を動かせば、
夜はすっきり眠れるでしょう」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/12/122699/

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