2010年10月5日火曜日

セメントを透明な金属にする夢さらに前進

(サイエンスポータル 2010年9月27日)


液晶ディスプレイなどに欠かせない、透明な金属の代わりに
なり得る、セメントに似た化合物(12CaO・7Al2O3)が、
金属のように電気をよく通す理由を、
東北大学と東京工業大学の研究チームが解明。


石灰とアルミナという、ありふれた物質の化合物である
12CaO・7Al2O3が、電気を通しかつ透明な金属になり、
超電導材料にもなることを、細野秀雄・東京工業大学教授らが
02~07年にかけて発見、国内外で大きな関心を呼んだ。


細野教授らによる世界の研究者の常識を覆す成果は、
0.5nmという微細な「カゴ」の中に、特別な工夫によって
多数の電子を入れることで実現。

今回、細野教授と東北大学原子分子材料科学高等研究機構の
相馬清吾助教、高橋隆教授らは、光電子分光という手法により、
結晶の外に抜き出した電子のエネルギー状態を調べ、
12CaO・7Al2O3の「カゴ内電子」の直接観測に、初めて成功。

セメントと同様の化合物が、透明な金属さらには超電導体となる
メカニズムが、予測されていた通り、「カゴ内電子」によることを確認。

透明な金属は、液晶ディスプレイやテレビなどに欠かせない材料だが、
現在は海外から輸入しているインジウムという
希少金属に頼っている。

細野教授らのこれまでの研究成果は、ありふれた元素から成る
材料でも、ナノ・テクにより新しい機能を発現できる可能性を
示したとして、昨年スタートした最先端研究開発支援プログラム
30課題の一つに選ばれている。

今回の金属化メカニズムの解明により、12CaO・7Al2O3を
モデルケースとした新材料開発が、さらに進展していくことが期待。

今回の成果は、最先端研究開発支援プログラム
「新超電導および関連機能物質の探索と産業用超電導線材の応用」
(中心研究者:細野秀雄教授)、科学技術振興機構の
戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
「物質現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」研究領域
(研究総括:田中通義 東北大学 名誉教授)の研究課題
「バルク敏感スピン分解超高分解能光電子分光装置の開発」
(研究代表者:高橋隆教授)によって得られた。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1009/1009271.html

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