2010年1月17日日曜日

夢を紡ぐ:地球に優しい新技術/5 蓄電池 「安く」「軽く」「安全」追求

(毎日 1月9日)

◇パナソニック技術統括グループマネジャー・湯浅浩次さん(47)

リチウムイオン電池をつなぎ合わせ、家庭用の電力をためたり、
電気自動車(EV)の動力源にできないか。

湯浅浩次さんのチームは、2年前から新たな取り組みを始めた。
リチウムイオン電池は通常、商品や用途別に設計。
EVの多くは、直方体の角形電池を使う。
目を付けたのは、パソコンなどに使う円筒形の
リチウムイオン電池(直径1・8cm、高さ6・5cm)。
「年間3億本も生産する汎用品で廉価。
コストが大幅に削減され、一気に普及」

試作を重ねてたどりついたのは、円筒形のリチウムイオン電池を
20本ずつ7列、計140本並べた「電池モジュール」と呼ぶ蓄電池。
モジュール1個は重さ8キロ、容量は1・5kw時。
1日5kw時が必要とされる一般家庭なら4~5個、
軽自動車なら12~13個、電動バイクならわずか1~2個。
「将来の生活に欠かせないものになる」

発売は早ければ1年後、価格はモジュール1個5万~10万円。
1kw時あたり、EVに用いられる角形電池の半額以下。
量産化すれば、「5万円以下」になり、
住宅への設置や車への搭載が期待。

開発で苦労したのは、発火リスクを抑えること。
リチウムイオン電池は、高温になると発火する。
円筒形電池には、独自の耐熱性素材を用いたが、
「万が一に備え、モジュールの内側も温度管理できる」
一部が故障しても、全体がダウンしない技術も盛り込んだ。

湯浅さんは10代のころ、第2次オイルショックを経験し、
エネルギー問題に強い関心を持った。
京大時代には、リチウムイオン電池を研究。
87年の入社以降も電池一筋。
「ある種の使命感を持って」研究に打ち込む。

太陽光で発電した電力や電力会社から購入した
夜間の安い電力を、蓄電池にため、電気代やCO2排出を
大幅に抑制することも可能。
「将来的には、家庭がためた電力を売るのも夢じゃない」

CO2削減が世界的な課題となる中、
電池市場は大幅な伸びが期待。
「すべての自動車がEVに置き換われば、
電池が地球を救うかもしれない」
==============
◇蓄電池

繰り返し使える電池のことで「2次電池」、「充電池」とも呼ばれる。
携帯電話など、持ち運びできる家電製品の電源、
電気自動車(EV)の動力源としても使われる。
家電分野では、ニッケル水素電池から、より高出力、高容量の
リチウムイオン電池に替わりつつあり、
EVなどでもリチウムイオン電池が採用。
18年のリチウムイオン電池市場は、
現在の5倍の3.2兆円が見込まれる。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/09/20100109ddm008020152000c.html

0 件のコメント: