(毎日 1月13日)
◇丸紅・機能化学品部副部長、伊東宏明さん(52)
岐阜県海津市にある「川瀬牧場」。
風通しのいい牛舎で、60頭を超すホルスタインが
のどかに飼料を食べる。
この飼料は伊東宏明さんが、
飼料会社を通じて販売する特別のもの。
「あれが、状態のいい緑褐色のふん。
飼料に含まれる繊維がちゃんと消化されている」
その秘訣は、BLCS(微生物利用の家畜清浄システム)と
呼ばれる家畜の飼料。
乳酸菌やバチルス菌など、数種類の微生物を含有。
牛など反すう動物のげっぷに含まれるメタンガスの抑制に加え、
栄養素の消化・吸収力の向上、
ふんの消臭効果まである「夢の飼料」。
いま、海外の熱い視線が集まっている。
メタンの排出量の4~5割を、家畜のげっぷが占めるとされる
ニュージーランド政府が03年、牛などの農家に
「げっぷ税」を課す検討をしたことがある。
伊東さんは、台湾系のベンチャー、日本仁安堂薬健が開発した
BLCSを聞きつけ、05年販売権を取得。
飼料会社と協力し、BLCSと通常の飼料を混ぜた混合飼料を開発。
しかし、農家の関心は薄かった。
「まず裏付けデータを取って、効果を数字で見せよう」
06年、日本畜産学会。
畜産界の権威、帯広畜産大学の高橋潤一教授が、
仁安堂のBLCS入りの混合飼料を牛などに食べさせた
実験結果を発表。
牛の胃液に含まれるメタンガス含有量が通常に比べ、
37・5%も削減されたとの結果。
混合飼料には、消化・吸収力アップで生育を早める効果も。
川瀬牧場では、混合飼料を使いだしてから、25L程度だった
牛の平均乳量(1頭当たり)が30Lを超え、
お産の回数も2~3回から3~3・5回に増えた。
国内販売は、月十数トンと低迷したままで、
国内の事業化の道はおぼつかない。
国の補助金がつく通常の肥料に比べ、5%もコスト高に。
最近、「生育力アップ」、「消臭」効果で、
中国への売り込みが奏功しつつある。
すでに、大連の一部酪農家と取引を始めた。
内モンゴル自治区の「蒙牛」など、大手2社とも商談を始め、
年内の本格進出も見えてきた。
「海外で成功すれば“逆輸入”も可能」。
暗いトンネルに光が差してきた。
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◇げっぷ抑えメタン減らす飼料
牛や羊など反すう動物のげっぷには、第1胃で繊維を
消化する際に発生するメタンガスが含まれる。
メタンの温室効果は、CO2の二十数倍に上り、
その15%が反すう動物のげっぷ。
世界全体の温室効果ガスで見ると、げっぷは3~5%を占め、
最大の発生源とも指摘。
メタン抑制の研究が続き、複数の微生物を混合した飼料もその一つ。
抑制効果の定量化など、ハードルも残されている。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/13/20100113ddm008020086000c.html
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