(日経 1月14日)
企画の提案や製品説明など、ビジネスの様々な場面で求められる
プレゼンテーションのスキル。
達人の2人にコツを尋ねると、
「目的と話の組み立て方の準備に、時間を費やすべきだ」
どのようなやり方で準備に取り組んでいるのだろうか?
◆要点は3つまで
「聞き手を説得するのではなく、聞き手の役に立つ気持ちで」。
プレゼンテーション専門コンサルタントで、愛媛大学客員准教授の田中省三さんは、
プレゼンの心構えをこう話す。
プレゼンの最大のポイントは内容と構成、つまり台本づくり。
これは、準備段階でほぼ決まる。
台本づくりのコツは、まず目的を明確にすること。
だれに何を伝えるのかをはっきりさせて、必ず話の最初に持ってくる。
「本日、私がお伝えしたいのは○○です」と冒頭に言う。
田中さんは、いくつか自己流のコツを考案。
まずは「ミラクル構造」と呼ぶもの。
冒頭に目的を言った後、そのテーマについて「今までの流れ」、「現状の分析」、
「現状への提案」、「今後の展望」の4つに分けて話を進めていく。
現状への提案と今後の展望の2つに、全体の時間の7— 8割を充てる。
「現状への提案」で採用するのが、「SDS法」と呼ばれるやり方。
サマリー(概要)、ディテール(詳細)、サマリー(まとめ)の頭文字を取った。
提案内容のポイントを最初に話し、次にポイントの詳細を説明、
最後にポイントを繰り返す。
ポイントは、最大3つまでが理想。
ディテールの説明で使えるのが、「PREP(プレップ)法」と呼ぶやり方。
ポイント、リーズン(理由)、イグザンプル(具体例)、ポイントという流れ。
ポイントと理由の2つで構成する簡略版もある。
これらの手法に沿って事前に話を組み立てて、資料をつくっておけば、
一定水準以上のプレゼンができるようになる。
マイクロソフト日本法人の飯島圭一さんも、
目的と話の組み立て方を準備することがコツと指摘。
飯島さんは、プレゼン資料作成ソフト「パワーポイント」などのオフィス製品の
マーケティング担当で、プレゼンのコツについて講演をすることも。
プレゼンを、「製品説明でなく、相手に行動を起こすために説得すること」と定義。
飯島さんも、だれに何をしてほしいかという目的を冒頭に明確に話す。
営業のプレゼンであれば、「この製品をよろしくお願いします」ではなく、
「1週間以内に購入契約をしていただきたい」などと、
こちらが相手に期待していることをできるだけ具体的に話す。
飯島さんは、目的や説明する話を準備する際に、「KISS」を心がけている。
KISSとは、「Keep It Simple and Specific(単純かつ明確に)」
実際には、(1)なぜこの提案が必要なのか、(2)対価はどの程度なのか、
(3)相手の利益は何なのか、(4)相手に何をしてほしいのか——を
不可欠な要素として取り込む。
話は、できるだけ論理的に組み立てる。
そのためには複数の要素から結論を導く「帰納法」か、
ある結論から複数の要素を見いだす「演えき法」の2つがある。
飯島さんは帰納法を採用。
思いつくままに材料を紙に書き出し、それらをテーマごとに分類する。
一度印刷し、順番にうまくつなげるために話の順番を入れ替える。
どこにどのような図やデータが必要かも考える。
飯島さんは、論理的に話を組み立てるうえでの参考として、
落語の「風が吹けばおけ屋がもうかる」を挙げる。
「風が吹く」、「砂ぼこりが上がる」、「目の不自由な人が増える」といったように
順々に話が展開する「論理っぽさ」もプレゼンには欠かせない。
飯島さんは、「見た目をきれいにするために、資料づくりに時間をかけ過ぎるのが
日本人のプレゼンの現状」と指摘。
目的と話の組み立て方に、準備の時間の8割を割くようにしている。
◆話の構成以外のポイントは?「緊張は当然」の心で
目的と話の組み立て方を重視する2人の達人。
実際のプレゼンの現場は、それ以外の様々な要素もかかわってくる。
緊張感とどう向き合うか?
田中さんは、「緊張するのは当たり前。緊張することも失敗することも
素直に受け入れよう」と助言。
「聞き手に役立つプレゼント(贈り物)をすることだけを考えるようにすれば、
不安を感じる暇がなくなる」。
聞き手を笑わせたりするユーモアは必要なのだろうか?
「相手に伝えることが大事。それ以外の技術を身につけるのは余裕がある上級者」
プレゼンの場所は、取引先など大抵が「アウェーでの戦い」。
飯島さんは相手の人数や役職、プレゼンに使える時間、使える道具など
情報収集にも念を入れる。
プロジェクターを使うなど、自分の得意な表現スタイルに持ち込むのも肝心。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090114.html
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