2008年5月21日水曜日

記憶・学習に神経細胞内タンパクのリン酸化が関与

(サイエンスポータル 2008年5月16日)

記憶・学習機能は、神経細胞をつなぐシナプス中に存在する
タンパクのリン酸化がとっかかりになっていることを、
理化学研究所脳科学総合研究センターの研究者たちが突き止めた。

これまで記憶や学習は、シナプス後部のタンパクが変化することによると
考えられていたが、詳細なメカニズムは不明。

脳科学総合研究センター発生神経生物研究チームの、
御子柴克彦チームリーダー、水谷顕洋研究員らは、
小脳にあり記憶・学習に中心的な働きをすることが分かっていた
プルキンエ細胞に存在する、Homer3というタンパクに着目。

生化学的手法を用いて調べたところ、
このタンパクがシナプス後部だけでなく、一部が可溶性の区画にも存在。
シナプス後部にあるべきタンパクが可溶性区画で見つかった理由は、
タンパク分子が一部リン酸化(タンパク1分子当たり少なくとも3カ所)
したことで、可溶性に変わったことも、電気泳動法で明らかに。

細胞内で、カルシウムイオンが上昇すると活性化する
タンパク質リン酸化酵素(カルシウムカルモデュリン依存性キナーゼⅡ)
によって、このリン酸化が起きている。

研究グループは、小脳のプルキンエ細胞のシナプス後部にある
タンパク「Homer3」は、神経の活動によって活性化された
タンパクリン酸化酵素の働きでリン酸化され、
「Homer3」で結びついたタンパク複合体の柔軟化がもたらされる。

このシナプス構造の柔軟化が、記憶と学習機能の契機となり、
Homer3のリン酸化部位を破壊したノックインマウスをつくって
さらに研究を進めたい。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0805/0805161.html

0 件のコメント: