2008年6月21日土曜日

学生をつくる(4)危機意識 教員も共有

(読売 6月6日)

歴史ある大学が、基礎学力の向上をめざす。
「エビで釣るのは『タイ』だよな」、「ウのマネをするのはだれ?」
1年生18人が机に向かいながら話し合っていた。
高千穂大学(東京都杉並区)の1年生必修の「基礎ゼミ」で
毎週行われる「ガンバレ高千穂!10分勝負」。
日本語や英語、理科、数学、一般常識各20問を週替わりで解く
小テストの時間。学ぶ姿勢を作るきっかけにしようという狙い。

この日の課題は「動物を使ったことわざ」。
解答はその場で配らない。学生が事務局まで受け取りに行く。
図書館には、小テスト参考文献が並ぶ専用コーナーも設けた。

基礎ゼミは、3学部の1年生664人を十数人ずつに分けた混成クラス。
図書館の利用方法やリポートの書き方、討論・発表の仕方、
授業でのノートの取り方などを1年かけ、手取り足取り教える。
40人もの担当教員が、学力を把握し、学期ごとの学習目標を
達成させるため、学生との面談を重ね、相談に乗る。

笹金光徳副学長(50)は、「ここまでやるのは、おせっかいだと思う。
だが、何の考えもなく大学に来た多くの学生たちに、
将来に向けて今やるべきことに一時も早く気づいてほしい」。
それは、「社会に出る最後の関門としての大学の責務」。

取り組みが本格的に始まったのは、
OBである藤井耐現理事長(58)が学長に就任した2002年。
旧制高千穂高等商業学校は、企業のトップも数多く輩出した名門。
18歳人口がピークを迎えた1990年代前半も、受験者は1万人超。
しかし、就任時はその5分の1。
授業の欠席率や退学率の高さ、学生の覇気のなさに、
藤井さんは危機感を募らせた。

教職員との合宿で問題点を洗い出し、入学してすぐに、意識を変え、
意欲を喚起し、知識を増強する必要があるという結論。
入学式直後の静岡・下田での合宿では、
教職員や上級生と共に学生生活について話し合い、
レクリエーションに汗を流し、大学生意識を醸成する。

出席を取る授業を増やし、教員の意識変革にも力を入れた。
基礎ゼミの授業は、互いの授業参観を奨励。
勝手に休講したり、授業時間を短くしたりする教員はゼミ担当から外した。
熱心な教員とボーナスの差を、30万円もつけたことも。

反発も出たが、「大学全体で危機意識を共有して教育に
取り組んでいかなければ、学生は変わらない」。
昨年度の退学者数は、約4%と前年度をわずかに上回ったものの、
ここ数年を見れば減少傾向。
出席をとらない藤井さんの授業「経営管理」も、
約9割の学生が顔をそろえるように。
「まだ途上。だが光は見えてきた」(笹金副学長)という改革が続く。

◆退学率

日本私立学校振興・共済事業団が2005年度、550私大に尋ねた
退学率は平均2.9%。年間約5万5000人が退学。
船戸高樹・桜美林大教授(大学マーケティング戦略論)によると、
個々の退学率は1%未満から10%以上、
地方で小規模、資格につながる学部を持たない大学は高い傾向。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080606-OYT8T00273.htm

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