2010年12月14日火曜日

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/5止

(毎日 12月4日)

「高気圧酸素カプセルなどでリラックスできた。
時間があればもっと行きたかった」

広州アジア大会のフェンシング女子エペ団体で、
史上初の金メダルを獲得した中野希望(大垣共立銀行)の感想。

今回のアジア大会から、文部科学省のマルチサポート事業による
強化が本格的に始まった。
目玉の一つが、選手村近くに設置されたマルチサポート・ハウス。
国立スポーツ科学センター(JISS)が高級ホテルを借り切り、
約30人の職員が常駐、選手たちの心身のリフレッシュなどに当たった。

サポートハウスは、日本とほぼ同じ環境を作り出すことが目的。
おにぎりやみそ汁などの和食を提供する食堂や、
マシンを使ったトレーニング施設、1人で思考することのできる
「個室」などが用意。

柔道やレスリングなどは減量に活用し、柔道女子の園田隆二監督は、
「これまでアパートを借りて減量メニューを作っていたが、
カロリー計算までしてくれるので助かる」

JISSによると、期間中、42競技のうち選手村に入った
39競技すべてがサポートハウスを利用し、延べ人数は2552人。
最も多かったのは、肉じゃがやレトルト食品など、
選手村では食べられない日本食を提供する「リカバリーミール」で
2066人が利用。
炭酸浴などのプール、高気圧酸素カプセルも1386人が利用するなど、
「疲労回復」が人気だった。

JISSの河村弘之・研究協力課長は、
「昼から夜まで過ごす選手もおり、ロンドン五輪に向けて
いいトライアルができた」

◆戦略基地の効果低く

ただ、課題も残った。
設置費用は2億~3億円と見込まれ、どこまでが本当に必要な
サポートだったのか、費用に見合った成果があったのかは、
明確に結びつけられない。
リラックスすることが主な利用目的であり、ある選手は
「選手村が街から離れていたため、気分転換ができなかった。
サポートハウスに行けば、時間がつぶせると口コミみたいに広がった」

一方で、勝つために重要な映像分析の利用は216件、
情報関連サービスの活用も59件と低く、
戦略基地としての機能は低かった。

マルチサポート事業で、五輪でのメダル獲得が有望視される
「ターゲット競技」に指定されているのは、夏季は13競技・種目。
今大会では、トライアスロンが男女とも金銀を占め、
セーリングとカヌーでもそれぞれ3個の金を獲得。
陸上や競泳などは、ターゲット競技とされながらも多くの選手が苦戦。

◆五輪へ向けて検証

マルチサポート事業の来年度予算は、
概算段階で今年度の約19億円から大幅に増加、27億円。
一方で、日本オリンピック委員会(JOC)の強化の補助金は
今年度並みにとどまる見込み。

日本選手団長を務めた市原則之・JOC専務理事は、
「どれだけ活用できたのか、競技団体と協議していかなければならない」と
検証するつもり。

日本は、ロンドン五輪の金メダル獲得数で世界5位という目標。
今大会の金メダル争いでは、中国、韓国に前回以上の差をつけられた。
マルチサポートによる強化は本筋ではない、という見方もあるが、
事業は始まっている。
五輪本番まで1年7カ月余りしか残っていない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101204ddm035050011000c.html

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