2010年12月19日日曜日

総合学習を生かす(15)テーマ 地域に必ずある

(読売 12月15日)

今回、効果的な総合学習を行っている全国各地の実践を報告。
探究的な学びの場として、より良い総合学習を進めていくには
どうしたらよいか?
日本生活科・総合的学習教育学会の嶋野道弘会長
(文教大学教育学部教授)に話を聞いた。

――総合学習の授業を視察して感じることは何か?

総合学習についての認識は、学校間でかなりの温度差がある。
受け身ではなく、探究的な学習などを通して、主体的に考えさせる
授業を行って、学力を向上させた学校もある一方、
いまだに知識を覚えさせることだけに力を注ぐ学校もある」

総合学習は、知識を活用して問題を解決する思考力や判断力、
表現力など、生きていく上で必要な能力を育成する場。
各学校には、万難を排して取り組む姿勢が必要。
体験や調べ学習をして発表する、といった形だけの学びになっていないか、
教師たちはもう一度、総合学習の意義を見つめ直してほしい」

――総合学習で身に着く能力は見えにくい。

子どもをよく見てほしい。『人間力』が高まっている。
人ごとではなく、自分のこととして社会を考える厚みのある人間に育っている。
小学生であっても、さびれた地域を活性化するにはどうしたらいいか、
自分たちにできることは何かなど、
様々な情報や知識を得て意見を言い、行動する」

――とはいえ、学習テーマに悩む学校も多い。

総合学習を通して、どんな子どもを育てたいか。
学校や教師側に、その目標が定まっていれば、テーマは地域に必ずあり、
知識を詰め込むだけの学習にもならないはずだ。
東京都墨田区のある小学校では、『伝統』というテーマで
地域の花火大会を調べた。
戦争などで過去に2度中断され、復活されたと分かった。
子どもたちは、伝統とは『単に昔からあるものではなく、
なくなりそうになりながらも今に続くもの』と新たに考えた。
裏で支える地域の人々の存在も知り、
『伝統をなくさない人になりたい』と、自己の生き方につながる学びになった」

――教師に必要な視点は何か?

「算数のテストの答えは一つかもしれないが、
世の中には答えが一つでない問題が多い。
『なぜ働かなければならないのか』、『なぜ学ぶのか』など、
一人一人の答えがあっていい。
総合学習では、子ども同士で様々な角度から考え、
課題にぶつかって再び考える、という繰り返し。
その中で考える力が養われ、自ら学び続ける人にもなれる。
子どもが、自分なりの答えを出した過程も大切にして、
学びを深める努力をしてほしい

◇しまの・みちひろ

専門は総合学習教育。公立小学校教諭、
文部科学省主任視学官などを経て、現在は文教大学教授。64歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101215-OYT8T00190.htm

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