2010年12月10日金曜日

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/1

(毎日 11月30日)

中国・広州で開かれた第16回アジア大会は、27日に幕を閉じた。
大会規模は過去最大に膨れあがり、競技では中国が200個に
あと一つに迫る金メダルを獲得。
インドなど新興国の台頭や、国境を越えて流動化する指導者たち、
ビジネス化を図って五輪入りを狙う競技など、新しい動きもある。
中国や韓国に押され、成績不振が目についた日本の今後は--。
大会中に連載した「大河流れて」の総集編として、
今大会を通じて見えてきたアジアスポーツの姿に迫る。

◇ジャイアント・チャイナ

「メダル数で、中国の国力の強さを示した。
独占しているわけではなく、韓国やインドもスピードを持って成長」
アジア大会最終日の27日、大会で史上最多の199個の金メダルを
獲得した中国選手団の段世傑団長は、総括会見で誇らしげに。

同じ時刻、隣の会見場では、前回よりも金メダルを減らした
日本の選手団も会見。
ロイター通信の記者から、「アジア大会は、中国の国内大会
みたいではなかったか」という質問に対し、日本の市原則之団長は、
「中国は非常に強くて、我々は脅威を感じている」と、
率直な意見を述べるしかなかった。

中国は、08年の北京五輪で金メダル51個を獲得、
米国や旧ソ連などに代わって、世界一のスポーツ大国にのし上がった。
全国の体育技術学校を軸に、優秀な選手を集める有名な強化策に加え、
経済の急速な発展を背景に、北京五輪後も外国人指導者の数を
増やすなど、強化への意気込みはまったく弱まっていない。

◆施設規模でも力量

2年前と異なるのは、五輪や世界選手権に出場する

「競技スポーツ」に加え、市民へのスポーツの普及を強調したこと。

中国の新しいスポーツ振興策の一つとされ、
一部のエリート競技者のものでしかなかったスポーツを、
国民に広く普及させようとしている。
段団長は、「さまざまな種目でメダルを取ることは、
国内スポーツの多様性に寄与する。
これまでは、中国のスポーツ文化は低かったが、
若者のスポーツ志向は高まっている」

史上最大規模になった今大会。
施設の規模も、中国のパワーを見せつけるものだった。
バスケットボール会場となった広州国際スポーツアリーナは、
3階までで1万7000人の観客席。
中心地近くにある陸上会場の奥体スタジアムは、
中国の英雄、劉翔が出場した110m障害決勝の時は8万人を収容。

五輪をしのぐような巨大施設の数々に、日本オリンピック委員会の関係者は、
「これを見たら、もう日本でアジア大会を開こう、という都市は
ないんじゃないか」と、冗談とも本気ともとれる口調で話した。

◆仁川も拡大路線か

今大会中、アジア大会の開催をめぐっては、競技を削減したい
アジア・オリンピック評議会(OCA)と開催地の間で、対立が起きた。

OCAは、今大会から実施競技数を減らす方針、
それも広州の意向で実現せず、今大会中に協議した次回の
14年仁川大会でも決定は先送り。

オイルマネーが支えになった前回のドーハ大会に続いて、
広州が巨大市場という資金力をバックに拡大路線を貫いたため、
OCAのアーマド会長は、「(実施競技の)プログラムは、
開催都市が関心を持っているものを入れていけばいい。
開催地が資金を出すのは、その後のインフラ投資にもなる」と、
拡大容認ともとれる発言まで飛び出した。

運営規模、競技力ともに世界トップの力を見せたアジアの巨人、中国。
2年後のロンドン五輪、その後は何に向かおうとしているのか。

段団長は、気になる発言をしている。
「北京五輪で、中国はスポーツ大国になったが、
ロンドン五輪ではスポーツ強国を目指す。
中国のスポーツ力をアピールすることによって、
中国人が持っている素晴らしさを見習ってもらえるからだ」
まるで、スポーツで世界を支配しようというようなコメント。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/11/30/20101130ddm035050051000c.html

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