2010年12月6日月曜日

総合学習を生かす(5)自然探検 絵本で表現

(読売 11月26日)

前夜の激しい雨が、うそのような青空。
「ノブドウの実ってきれい」、「カマキリつかまえた!」、
「ここにも野ウサギのふんがあるよ」。
子どもたちの歓声が雑木林に響く。

池の周りや林に座り込み、スケッチをする子も。
栃木県那珂川町の自然の中にある「えほんの丘」で、
町立小川南小学校の総合学習の授業。

「不思議だったとか、食べたらまずかったとか、
体で感じたことをすぐ手帳に書き残そうね」とアドバイスするのは、
「14ひきのシリーズ」などで世界的に知られる
絵本作家のいわむらかずおさん。
「えほんの丘」とは、いわむらさんの美術館がある丘のこと。
リスや野ウサギなどの小動物が多く、数々の絵本の舞台にも。

同小の総合学習では2006年から、いわむらさんの協力で、
4年生以上全員が毎年一冊、自分の絵本を作っている。
自然豊かな地域に住んでいても、最近はスポーツや室内での
ゲーム遊びが多いことから、「総合学習を、自然に向き合い、
表現につなげる機会にしたい」と考えた。

季節を変えて年3回、「えほんの丘探検」を行い、
いろいろなものをスケッチして、イメージを膨らませる。
秋から制作に取りかかり、小さなサイズで試作品を作った段階で、
いわむらさんが学校を訪れて一人一人に助言。
「場面をもう少し絞ったらどうかな」、
「よく見て描くと、気づくことがあるよ」。
テーマが絞れず苦労する子もいるが、無理に教えず、
自分の表現に自信を持つように励ます。

何度も改良したり、アイデアを加えたりする過程そのものが、
子どもたちの力になっていく」といわむらさん。
地味な虫をずっと追い続けた子、トンボの複眼の拡大図から
視点を広げる壮大な作品にする子。
テーマも大きさも、個性的な一冊一冊にいわむらさんが寄せる
温かいコメントは、子どもたちの宝物。

総合学習を担当する斎藤義雄教諭(52)は、
「自由な心を表現できるのが絵本の良さ。
絵が苦手な子でも、大胆な着想ではっとさせられることも多い。
毎年、一冊を仕上げる達成感は大きい」

「自分で作るのをずっと楽しみにしていた。だからうれしくて」、
目を輝かせるのは4年生たち。
世界に一冊だけの絵本は、後輩の創作意欲をかき立てている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101126-OYT8T00265.htm

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