2010年12月5日日曜日

総合学習を生かす(4)修学旅行 生きた教材に

(読売 11月25日)

横浜国立大学付属鎌倉中学校の総合学習の発表会。

3年の板倉亜遊さん(15)たち女子生徒5人は、
花かんざしを髪に挿して教壇に立った。
花かんざしは、修学旅行先の京都でインタビューした職人が作った
思い出の品。

「仕事は、お金を稼ぐためにあると思っていたが、
責任とこだわりを持って働く人になりたいと考えが変わった」、
「花かんざしには、職人の技術と気持ちが詰まっている。
思いを込めて取り組む大切さを学んだ」。
5人は、自分の将来と結びつけて、それぞれの発表を締めくくった。

同中の修学旅行は、物見遊山ではない。
生徒全員が、各自のテーマの基本的な知識や情報を事前に詳しく調べ、
新聞形式でまとめた上で、その道のプロにインタビュー。
一人一人が、寺社など「モノ」だけでなく、「人」から学び得ることを重視、
生き方や職業観を深く学ぶ機会。

今年は、生徒172人が40班に分かれ、
京野菜の店の店主や刃物職人、茶の研究員など約40人に取材。

板倉さんたち5人が訪れたのは、江戸末期から京都・祇園で、
唯一続く花かんざし専門店の「金竹堂」。
花かんざしについて事前学習で徹底的に調べ、現地では、
金竹堂五代目職人の定永光夫さん(54)に、
「流行に合わせた新しいかんざしは作らないのか」、
「なぜ職人になったのか」などと、本人にしか聞けない話をぶつけた。

「材料となる絹糸や染め屋の職人も減る中、江戸時代と同じものを
作る方が大変。
私は、舞妓や伝統を守る責任があるから、作り続けなければならない
と答えた定永さん。
年数回、仕事の合間の約30分という約束で、
修学旅行生の取材を受けているが、
「受け身でやって来る学校が多く、基本的な話で終わってしまう中、
よく勉強して来てくれたので、伝えたいことを話せた」とうれしそう。

しっかりした課題設定と徹底した事前学習で、
ありふれた京都への修学旅行もひと味違う学習に変わる。
自分の意思で進路選択する力も養える」、
総合学習の主任である岡正敏教諭(36)。

どの学校にもある修学旅行が、生きた教材となって、
生徒一人一人の心に響いている。

【横浜国立大付属鎌倉中の修学旅行の主な研究テーマ】
町屋を守る、寺社を守る、刃物職人、箸、京扇子、清水焼、西陣織、
京友禅、香道、舞妓の仕事、茶道の礼法、茶と地下水、京菓子、
京料理、八ツ橋、京都とくずきり、剣術と新撰組、陰陽道と陰陽師、
天皇と秀吉と人々

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101125-OYT8T00219.htm

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