2010年12月10日金曜日

総合学習を生かす(9)就業体験 学ぶ意欲に

(読売 12月3日)

さいたま市内の美容室。
緊張した様子で洗髪しながら、「力加減はどうですか」と聞くのは、
埼玉県立蓮田松韻高校(蓮田市)1年の古川亜依さん(15)。
見守る美容師の坂巻裕美さん(39)から、
「左右の手の力加減を同じにするため、両ひじは突き出して」、
「耳に水が入らないよう手で押さえて」など細かい注意。

同高の1年生は全員、総合学習で就業体験に臨む。
古川さんは、やはり美容に興味のある同級生の中谷馨さん(15)と
2人で5日間、美容室に通った。
仕事は掃除などの雑用だが、洗髪なども教えてもらい、
最終日のこの日は、佐藤智明教頭(47)を実験台に成果を試していた。

「髪を洗うのが、こんなに大変と思わなかった。腰も痛い」、
「タオルの巻き方も、細かい配慮があった」と苦労を語る2人。
坂巻さんは、「華やかさややりがいの一方で、厳しさもあることを
学んでもらえたのでは」

就業体験は、前身の旧県立蓮田高校時代の4年前、
中途退学者の減少を目指して始まった。
柿岡文彦校長(59)は、「働く厳しさを知り、自分の将来を
具体的に見つめ、高校で学ぶ自覚を持ってもらうため」と狙い。
生徒の大半が、就職や専門学校進学を希望していることもあり、
受け入れ先には、「見学ではなく、就労させてほしい。
厳しい指導も結構です」と依頼。

当初12%を超えた退学率は半減したが、目的意識がないまま
入学する生徒は依然多く、就業体験も一筋縄には行かない。
「あいさつができない」、「働く意識が低い」などと、
その後の受け入れを拒否されたことも。

今年は、1年生234人がスーパーや農家など74か所に行ったが、
福祉施設に行ったある生徒は、休憩するよう指示され、
職員に声をかけられるまで、2時間も部屋から出てこなかった。
仕事に戻るよう指示がなかったからだと。

とはいえ、効果は少しずつ表れている。
佐藤教頭は、「社会の厳しさを知り、生徒の多くが
高校はきちんと卒業しようと考えるようになる。
将来のことを、親子で話すきっかけにもなっている

修理工場で、計器の修理をした横山勇斗さん(16)は、
「ずっと同じ作業でつらかったが、どの仕事も責任を持って
やらなければいけないということが分かった」

働く尊さを知ることが、意欲ある高校生活につながっている。

◆就業体験

学生が在学中に、民間企業などで就業を体験すること。
インターンシップともいう。
国立教育政策研究所の調査によると、2009年度は
全国の公立中学校の約95%、高校(全日制・定時制)の約71%が実施。
中学校は、「原則として全員参加」だが、体験した高校生の割合は
全体の約29%にとどまっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101203-OYT8T00195.htm

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