2010年12月9日木曜日

インタビュー・環境戦略を語る:キリンビール・松沢幸一社長

(毎日 11月29日)

キリンビールは今年、自然環境保護のため、
12年のCO2排出量を、90年比で60%削減する目標。
食品メーカーにとって、環境保護活動は、消費者の環境志向に
応えるとともに、原料の天然資源の保全にもつながる。
計画の旗振り役である松沢幸一社長に聞いた。

-意欲的な目標を掲げている。

◆環境に対する社会の意識が変化し、企業は商品を販売して
利益を得るだけでは通用しない時代に。

環境保護活動は、「経営課題の一つ」との認識のもと、
ビール製造などと同じ「事業」として取り組むことにした。
環境保護のための設備更新など投資も必要になるので、
経営陣でリーダーシップをとっている。

-具体的な取り組みは?

◆製造、物流などそれぞれの段階で、CO2排出削減に取り組んでいる。
製造部門では、仕込み工程などで使用するボイラーを、
効率の良い小型のものに変え、燃料も重油からCO2排出量の少ない
天然ガスへの転換を進めている。

今年1月、約200億円を投資して最新設備を導入した
滋賀工場(滋賀県多賀町)は、使用するエネルギーも従来の約3分の1。
各工場で節水にも取り組んでおり、以前はビール1Lを作るのに
15L必要だった水が、現在は6Lで済む。

-配送、物流面では?

◆今年6月から、仙台工場から青森、秋田県の卸業者への
出荷は、トラックから貨物列車を使うモーダルシフトに切り替えた。

今年から一部の地域で製缶メーカーと協力し、製品を詰める前の空缶を
運んできたトラックに製品を積んで帰ってもらうようにした。
トラック輸送を、なるべく減らすように努力。

-自然保護にも取り組んでいる。

◆99年から、ビールの水源となる森林を保全するため、
工場の上流や周辺の森林の計17カ所で、植林活動に取り組んでいる。
社員だけでなく、地域の方々にも協力してもらい、
植林や樹木の枝打ちなどを行っている。
この活動は、参加した社員のエコ意識向上にも役立っている。

-今後取り組みたい活動は?

◆環境省が、環境保全に積極的に取り組む企業を認定する
「エコ・ファースト企業」に、08年に製造業として初めて選ばれた。
現在、エコ・ファースト企業で作る「エコ・ファースト推進協議会」の
議長を務めている。

協議会には、ビックカメラやユニーなど、さまざまな業種の企業が
参加し、加盟企業で業界を超えたキャンペーンなど、
共同事業を展開できればと考えている。
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◇まつざわ・こういち

北海道大大学院農学研究科修士課程修了、73年キリンビール入社。
常務生産本部生産統轄部長、キリンホールディングス常務などを経て、
09年3月から現職。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/11/29/20101129ddm008020006000c.html

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