2010年12月7日火曜日

総合学習を生かす(6)論文議論で批判力養う

(読売 11月27日)

京都市立堀川高校の「探究科」では、総合学習の時間で、
2年生の秋までに、生徒一人一人が論文を書く。
カタバミ科の植物についてまとめた佐野みずほさん(17)は、
論文提出直前の9月中旬、保護者や教育関係者を招いて開かれた
研究発表会が忘れられない。

「カタバミが葉を閉じるのは、体温やエネルギー維持のためだと
考えられます」。
考えを尽くして導き出した仮説だったが、参加者から
思いもしなかった質問が飛んだ。
「食べられないように身を守る動きとは考えられませんか」

予想外の指摘に、「確かに……」と答えるのが精いっぱい。
その場では、賛同も反論もできなかった。

発表会後、考えた末に提出した論文には、指摘を反映させ、
「捕食者から身を守るため」と付け加えた。
「授業で先生や同級生から、研究方法などについても
何度も指摘を受けた。
『自分は何も知らないんだ』とわかり、もっと学びたいと思った」

同高は1999年、学校改革の目玉として「探究科」を新設。
総合学習を「探究基礎」と銘打ち、物事を多角的に考え、
意見やリポートを批判し合う指導を始めた。
1年生から国際文化や心理・教育、生物など10分野に分かれ、
データ収集や実験方法などをゼミ形式で学習。
2年生は、一人一人がテーマを設定して実験や研究をする。

生徒有志で、論文の冊子化などに取り組む「探究基礎委員会」の
委員長で2年の富森大地さん(16)は、
「この考えや情報は本当に正しいのかと、常に批判的に見るようになった。
自分で答えを探すのは、しんどいけれど楽しい。
一言で表すと、『たのしんどい』ですね」と笑う。

卒業生で、哲学を研究している京都大学文学部3年の
飯島弘一郎さん(21)は、「高校で、学びは尽きないということを学んだ。
型にはまった常識を疑うことや、問い続けることなど、
自分の可能性を広げてくれた」

「生徒たちが卒業後に進む社会でも、
答えがすぐに見つかることばかりではない」、荒瀬克己校長(57)。
「非難ではなく、批判的に見る力は、自分で考え、
課題に立ち向かうのに不可欠」

8年前、国公立大学への進学実績を急伸させ、「奇跡」とまで称された。
その土台には、主体的に考え学ぶ厳しさと楽しさを伝える教育が、
今もしっかりと息づいている。

◆【論文テーマの例】

▽「ライトノベルがなぜ人気なのか」
▽「イギリス料理が不味いと言われる理由」
▽「なぜ信号無視をするのか」
▽「乳児はなぜかわいいのか」
▽「クモの糸の強度」
▽「植物の葉からプラスチックはできるか」
▽「電磁波は聞こえるのか」
▽「使い捨ておむつの再利用は可能か」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101127-OYT8T00205.htm

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