2010年12月7日火曜日

温泉健康効果を知る 効能以外に休養、運動効果 体に悪い場合も

(2010年12月3日 毎日新聞社)

世界有数の温泉数や湧出量を誇る温泉大国日本。
寒さが増すこれからの季節、癒やしを求めて温泉地を訪れる人も多い。
硫黄や硫酸など多様な泉質を持つ温泉は、
どれだけ健康に影響があるのだろうか?

温泉のもととなる地下水には、土や岩石からいろいろな物質が
溶け込んでいる。
温泉と呼ばれる条件は、温泉法で定められている。
・水温が25度以上
・硫黄やラドンなど19種類の物質のうちどれか一つを基準以上含む
のどちらかの条件を満たしているもの。
水温が低く、25度未満のものは「冷泉」。

国内の温泉地は約3000カ所、源泉数は約2万8000カ所(08年度)。
温かい湯につかるだけでも、新陳代謝が促され、
疲労回復が図れるほか、水圧の影響で心臓が圧迫され、血行もよくなる。

国の鉱泉分析法指針は、温泉の基準を満たし、
療養効果が期待される温泉を、「療養泉」として分類。
環境省の委託を受け、日本温泉気候物理医学会が06年に
温泉の効能についての報告書を作成。

同省は、「治療による医学的な効果は法律上、保証しておらず、
医師に任せている。
個人的な利用による健康への効果は、多くの実証例がある」

科学的に温泉の健康効果を検証している一般社団法人
「健康保養地医学研究機構」代表理事の阿岸祐幸・北海道大名誉教授
によると、温泉に含まれる成分が皮膚から吸収され、
皮膚や筋肉などの細胞、神経に作用する。

カルシウムやマグネシウムなどは、腫れや痛みを抑える働きがあり、
皮膚病や切り傷、やけどなどに効き目。
胃腸薬にも使われている重曹を含む温泉を飲むと、
薬と同様の効果も期待。

泉質だけでなく、温泉には休養や運動の効果も期待。
温泉は山の中など、豊かな自然に囲まれている場所に多くある。
日ごろ過ごしている場所と環境が変わることで、
気分転換になったり、ストレスを減らす効果。

熱い湯に入った後、皮膚の表面から汗や水蒸気が発散し、
蒸発によって気化熱が奪われる。
1g(1ml)の水が気化すると、約0・5kcalの熱が奪われる計算から、
高温の入浴で300mlの汗を流せば、150kcalの消費に達する。
これを脂肪(体重)に換算すると、約16g減少。

持病や体質によっては泉質の成分と合わず、体に悪い場合も。
温泉に入れば体力を消耗するため、体調が悪い人が入れば、
症状が悪化することも。
高齢者は、温度に対する皮膚の感受性が低くなり、
熱さを感じにくくなることもあり注意。

環境省も、「温泉地に書いてある成分や入ってはいけない禁忌症などの
説明に注意してほしい」

温泉の効能で最も議論があるのが、放射能泉。
全国に「人工ラドン温泉センター」などの施設もあり、
体の芯から温まると感じているファンも多いが、
放射線被ばくを心配する人も。

日本温泉気候物理医学会は、07年に環境省へ提出した報告書で、
ラドンの影響を調査するため、三朝温泉(鳥取県)のサウナと
実験用ラドンサウナ、ラドンを含まないサウナを比較し、
20~40歳の男性15人を対象にした実験結果を紹介。

ラドンの濃度に応じて5日目以降、血糖値を下げるインスリンなどの
血中物質が有意に増加。
「ラドンは高血圧、関節の痛み、糖尿病の改善に有用」と結論。
環境省も、「自然に含まれるラドンのレベルは極めて低く、
健康な人には有用と考えている」

放射線の被害防止を訴える市民団体「高木学校」の
崎山比早子医学博士は、「放射線による健康増進の科学的根拠は乏しい。
医療検査は別として、できるだけ浴びない方がいい」

阿岸名誉教授は、「温泉の効能について、これまで経験的なものが多く、
放射能泉を代表に議論も多い。
温泉大国として、予防医療への利用を進めるためにも、
積極的な研究で、科学的にしっかりした根拠を示す必要
………………………………………………………………………………
《代表的な療養泉と効能》

<療養泉>      <効果>                <禁忌症>
・単純温泉    免疫調整、脱ストレス 不眠症
 ※歴史的な名湯が多い
・二酸化炭素泉 血流循環の改善、保温、抑うつ改善  (飲用)下痢の時
・塩化物泉    保温、抑うつ改善             (飲用)腎臓病、高血圧症
・硫黄泉     婦人心身症改善、関節炎、        皮膚、粘膜の過敏な人
          皮膚疾患に適応 
・放射能泉    免疫調整
・炭酸水素塩泉 循環促進、保温、冷え性
・硫酸塩泉    塩化物泉と同じ。脱ストレス       (飲用)下痢の時
・酸性泉     かゆみ軽減、皮膚炎
(日本温泉気候物理医学会の06年度報告書などから作成)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/3/129254/

0 件のコメント: