2010年12月11日土曜日

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/2

(毎日 12月1日)

大会の視察を終えたスポーツマーケティング会社
「UFAスポーツアジア」(本社・シンガポール)のジェフ・チュー常務は、
声を弾ませた。
「アジアには、まだまだ可能性を秘めた競技があると感じさせてくれた」

アジア大会最大の特徴は、広いアジアのさまざまな民族の間で
親しまれている競技を多く取り入れていること。
今大会でもドラゴンボート、クリケットのほか、チェスの一種目となった
囲碁などが新設、過去最高となる42競技476種目が行われた。

「民族スポーツ」を取り込む傾向は、86年ソウル大会で
韓国の国技・テコンドーが採用されたのを皮切りに、
90年北京大会で東南アジアのセパタクロー、インドの国技・カバディ、
中国に由来する武術、94年広島大会で沖縄発祥とされる空手と、
年々強まってきた。

テコンドーは、88年ソウル五輪で公開競技となり、
00年シドニー五輪から正式競技に採用、今や国際的競技に成長。
カバディも、04年に第1回ワールドカップをインドで開催、
今年4月、円形のコートで行う「サークルスタイルカバディ」の
ワールドカップを初めて行うなど、世界戦略に乗り出している。
民族スポーツにとってアジア大会は、いまや「国際化への登竜門」。

セパタクローは、今大会期間中に国際サーキットの大会創設を表明。

プランを作成したのは、欧州最大のメディアグループ
「RTLグループ」傘下の「UFAスポーツアジア」。
チュー常務は、セパタクローに目をつけた理由について、
「テレビを含め、観戦する人にわかりやすいように『再梱包』すれば、
必ず人気が出ると思った」

個人的な見解とした上で、「カバディや、中央アジア、中東からの参加が
増えた武術には大変魅力を感じたし、アジア大会未実施の競技でも、
(ビジネスの対象として)興味を持っているものがある」
人口が世界の6割を占めるとも言われる巨大なアジアには、
まだ掘り起こされていない“商品”と“市場”が眠っている。

◆本質失われる恐れも

国際化には弊害もある。
テコンドー女子49キロ級で、台湾選手が失格となった件を巡って、
台湾で韓国への反感が高まる騒ぎが起きた。
台湾選手の相手はベトナムの選手だったが、一部で、
世界テコンドー連盟が本部を韓国に置くことなどから、
韓国関係者が今回の判定にかかわったという報道が。

台湾では韓国国旗が燃やされ、韓国外交通商省が憂慮を表明するなど、
国際問題に発展しかねない状態に。
あってはならない「事件」ではあったが、それだけ競技が世界で認知され、
人気が高まったことの証左とも言えた。

クリケットは、五輪に不可欠なテレビ放映に対応するため、
最近の国際試合では「20オーバー(1チームの投球数が120球)制」を採用。
伝統的なものでは、テストマッチ(国代表試合)で5日間もかかっていた
試合を、約3時間に短縮。

「(20オーバー制は)五輪でやれば完ぺきだ。
今がクリケットにとって大きなチャンス」と選手の中には歓迎する声がある
一方で、専門家は「(競技が持つ)本来の良さが失われつつある」

いかに競技の本質を守りながら、国際化の波に乗るか。
残された課題は大きい。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101201ddm035050053000c.html

0 件のコメント: