(読売 10月14日)
外国人を交えた組織的な準備で、授業の効果を高める小学校。
「この赤くて丸くて甘いのは何かな」、「アップル!」
市立成田小学校を訪ねると、校舎内には英語が飛び交っていた。
担任と外国語指導助手(ALT)が、果物の描いてあるカードを
示しながら英語で質問すると、2年生約30人が大きな声で答えた。
成田小が英語教育を本格導入したのは、1996年度。
文部省(当時)の研究開発学校の指定を受け、全学年で週2回、
20分間の英語科の授業を始めた。
2000年度から、授業は毎日、今では週4回行っている。
研究開発学校の指定は昨年度で終わったが、今年度から
成田小を含む市内の小学校5校と成田中学校の計6校で、
英語教育の小中連携などの実践を進めている。
授業は、ALTと学級担任の2人で進めるチームティーチングで、
基本的に英語しか使わない。
竹村幸延教頭(47)は、「会話の中で、theやaなどを
自然に使い分ける子もいる。英語の時間の前後は、
英語でのあいさつが普通に飛び出してこちらが驚くほど」
と効果に笑顔。
英語で話したり教えたりするのが、得意な教師ばかりではない。
小学校の教員免許には英語はなく、中学高校の英語教師と
違って、英語の教え方を学んでいないが、
成田小では、ALTと担任が準備に時間をかけることで克服。
毎週木曜日の放課後、職員室で学年ごとにALTを交えて集まり、
翌週の授業の進め方や授業で使う英語の表現を、
2時間近くかけて確認。
他の教科の準備が40分間程度であることを考えると、
英語の準備は入念。
3年生の準備では、「ティーパーティーを開いて、
おもてなしの表現を学ぶ」という単元を話し合っていた。
「カードではなく、本当にお茶やお菓子を出したらどうだろう」、
「クラスをお客とホストの2チームに分けると、
手持ちぶさたになる子が出た。
4分割して会話をさせた方がいい」
様々な工夫や意見が出た。
授業で使う英語の正しい発音や、授業に集中するよう促す
言い回しも、この時間にALTから教えてもらう。
翌週に使う数語だけなので、覚えるのは難しくない。
英語の授業開発を担当する研究主任の岸幹忠教諭(41)は、
子どもが何に興味を持つか、どんな英単語が理解しづらいかは、
毎年変わる。
「子どもの様子を見ながら、授業を組み立てる必要。
準備に時間をかけ、子どもの理解度に応じて
授業を進めることができる」
授業の進め方を毎週、話し合うのは大変。
指導案通りに授業を進めるだけの方が、教師の負担は少ない。
成田小では、学年単位の事前準備を
「授業を進める上でなくてはならない研修」と位置づけ、
毎週木曜日に固定。
校内行事を別の曜日に設定することもある。
月1回程度、成田中学校の英語教師を交えた会合を開き、
授業内容や課題などについて情報交換。
岸教諭は、「ほかの授業では、恥ずかしがってみんなの前で
話せない子が、英語では、はきはき話している。
そういう子どもの姿を引き出せるようにするのが、
授業作りの醍醐味」
小学校の教師にとって、英語は可能性にあふれている。
◆ALT(Assistant Language Teacher)
外国語を母国語とする助手。
英語の発音や国際理解教育の向上を目的に、
各教育委員会から学校に派遣され、授業を補助。
2008年度、全国の公立小中学校に約6000人が派遣。
◇教員の過半数「導入に不安」
小学校での英語教育は、2011年度に正式導入される
新学習指導要領で、外国語活動として盛り込まれている。
今年度から移行期間が始まり、公立小学校の98・7%が先行実施。
平均年28・2時間だが、新指導要領で規定する年35時間の学校も
53・8%と半数を超えている。
教師側の準備も進む。
08年度に都道府県教委などが主催した研修には、
80・7%の学校が教師を派遣、学校ごとの研修も66・6%で開催。
中学校教員が小学校で授業を行ったり、
指導法の合同研修を実施したりといった小・中学校の連携も、
中学校区の半数近くで行われている。
不安も根強い。
旺文社が08年、全国の公立小の英語活動担当教師に、
11年度の英語導入がスムーズに進むと思うかどうかを聞いたところ、
「思う」はわずか8・7%、
「課題があり、導入には不安が残る」は52・5%と過半数。
問題点(複数回答)は、「指導内容・方法」が78・6%で最も多く、
「評価内容・方法」、「指導計画」などが続いた。
小学校の英語には教科書がなく、統一した授業内容が
決まっているわけではない。
文科省は、教科書の代わりとなる補助教材「英語ノート」を作成、
具体的な指導方法も含め、当分は模索が続きそう。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091014-OYT8T00228.htm
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