2009年10月19日月曜日

インタビュー・環境戦略を語る:三井住友海上火災保険・秦喜秋会長

(毎日 10月12日)

国内大手損保のうち、アジア展開で先行する
三井住友海上火災保険は、インドネシア・ジャワ島で
熱帯雨林の再生プロジェクトを手がけるほか、
生物多様性の保全に向けた取り組みで国内企業と連携を図るなど、
環境活動を推進。
秦喜秋会長に、狙いと抱負を聞いた。

--熱帯雨林再生プロジェクトとは?

ジャワ島中部のパリヤン野生動物保護林内にある荒れ地
430ヘクタール(東京ドーム約90個分)を、
元の豊かな熱帯雨林に戻す計画。
かつては希少動物のオナガザルが生息していたのに、
97~98年のアジア通貨危機に伴う混乱の際に不法伐採され、
荒れ地に変わり果てた。
今年3月まで4年かけて30万本を植樹、11年までの再生を目指す。

--始めた理由と成果は?

当社は、契約書類などに年8600トンもの紙を使い、
世界の森林に負荷をかけている。
アジアは、当社の国際展開で最も重要な地域なので、
現地の熱帯雨林の再生に協力できないかと考えた。
植林で、森は次第に緑を増し、野鳥29種と昆虫18種と
多様な生物が戻ってきた。
現地の人に植林してもらうことで、森を守る重要性を認識し、
収入源になる果樹も一緒に植え、
住民と森が共存するための工夫も凝らした。

--なぜ生物多様性を重視するのか?

生物多様性は、人間の豊かな生活には不可欠。
人間の勝手な行為で、環境が破壊されれば、
すぐに失われてしまう。
当社は、同じような問題意識を持つ国内企業と
「企業と生物多様性イニシアティブ」(27社)を設立。
情報交換のほか、各社の取り組みを紹介する
シンポジウムの開催などを始めた。

--保険や金融での環境関連の取り組みは?

当社の代理店を務める自動車整備工場で、
エンジン内部のすすを取り除き、燃費を10%以上改善する
「エコ整備」を10年間続けるなど、本業に直接関係する
環境貢献にも積極的に取り組んでいる。
事故車などの修理では、リサイクル部品の活用を進め、
それによるコスト削減効果の一部を、公共施設の太陽光や
風力発電設備設置のために寄付。

--今後の抱負は?

環境への取り組みは本業の一つで、終わりはない。
来年4月、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険と
経営統合し、収入保険料で日本トップの損保会社になり、
環境面でも統合効果を発揮したい。
生物多様性保全のための取り組みをアジアで続け、
人と動植物が共存できる地球づくりに貢献したい。
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◇しん・よしあき

九州大経卒、68年住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)
入社。副社長を経て06年から現職。
三井住友海上グループホールディングス会長を兼務。
大分県出身。63歳。

http://mainichi.jp/select/science/news/20091012ddm008020043000c.html

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