2009年9月5日土曜日

NIE20年(5)先駆者の経験次代へ

(読売 8月25日)

NIE(新聞活用学習)の先駆けとなった先生たちは
今、どうしているのだろうか。

新聞の社説のコピーを手に、生徒らが頭を悩ませていた。
東京都武蔵村山市立第二中学校で、都議選を取り上げた
新聞2紙の社説を読み比べる授業が、2年生のクラスで行われた。
「新聞によって書き方が違う。よく読んで理解して」と、
熊谷浩教諭(26)が訴えた。

教室で授業を視察していたのは、持田浩志教育長(58)。
20年前、NIEのパイロット計画に参加した一人。

当時は、東久留米市の小学校教師。
新聞を授業で使う教師は少なかった。
同僚と相談しながら、算数で相撲の星取表を使った
勝率計算をしたり、新聞広告を使って地理を学習したりしてきた。

教育長として、今もNIEに携わる。
来春、同中を隣接の小学校と一緒にして
小中一貫校に衣替えするが、市教委では9年間の基本カリキュラムに
「NIE・新聞づくり」を位置づけ。
「興味のある記事をスクラップする」(3、4年)、
「新聞各社の記事を読み比べる」(5~7年)などと、
学年ごとに目標を定めている。

授業に新聞を使う教師は多いが、いずれも個人の裁量で、
熱心な教師が別の学校に異動すれば、下火になる傾向。
市教委が位置づけることで、組織的に取り組め、
他校への広がりも期待できる。全国でも珍しい事例。

教師時代、児童がごみ問題の記事に関心を持ち、
自主的にクリーンキャンペーンに参加したことがある。
「NIEで、子どもたちが社会に主体的にかかわるようになる。
新聞は、社会の入り口。
そこに早く接することができるようになれば」

「紙面の作り方が全然違う。比べるだけでも勉強になる」
東京都豊島区立千川中学校で、小林豊茂校長(48)が教師らに、
阪神大震災の際の新聞各紙を見せながら説明。

同中は、今年度にNIE実践校の指定を受け、10月からスタート。
パイロット計画に参加した小林校長が、
自身の経験が少しでも役立てばと、教師の心構えや
目指す子ども像などを教師らに伝えた。

20年前、江戸川区の中学校教師だった。
ゲーム感覚で文字に慣れさせるため、新聞から「人偏」のつく
漢字を探させたり、記事の中からできることを探ろうと、
環境問題の記事を集め、生徒会でアルミ缶を収集して
リサイクル運動につなげたりしてきた。

今は、校長として生徒や教師のサポート役。
新聞を読みやすい台を作るなど環境整備をしたり、
自身の経験を教師に伝えたりしている。
ゲストティーチャーとして授業に入ることも検討中。
小林校長は、「新聞は生涯学習の教材。
新聞に親しむ習慣をつけるのは学校の責務。
新聞嫌いにならないよう、焦らずに成果が出るようにしたい」

先輩教師の経験や思いが、後輩や子どもたちへと引き継がれる。

◆パイロット計画

1989年9月、教育界と新聞界が協力し、NIEの効果や
注意すべきことを調べるため、一定期間、毎日学校に新聞を提供、
授業などで活用。
東京の小学校1校、中学校2校で始まり、持田、小林両氏も参加。
最終年度の95年度、全国の112校に拡大、分析結果をまとめた。
現在は、NIE実践指定校として全国で536校が取り組んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090825-OYT8T00315.htm

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