2009年9月3日木曜日

EVがもたらすもう1つのクルマ革命

(日経 2009-09-01)

新しいクルマの形として、電気自動車(EV)に
異様といえるほどの注目。

ハイブリッド車を超える「次世代車の本命」とみて、
開発を本格化させている自動車メーカーもある。
いつごろ電気自動車が主流になるのか?
米マサチューセッツ工科大学の調査結果によると、
20年には世界での販台数の10%を占める。

金融危機以来落ち込んでいた自動車の販売が、
やや持ち直しているとはいえ、先進国で販売台数が
以前と同じ水準にまで戻るとは考えにくい。

長期的な傾向として、ユーザーは自動車を単なる移動手段と
考えるようになり、所有したり使ったりすることでの「楽しさ」を
感じにくくなっている。
デザイン性があまりアピールしなくなり、燃費の良さ、
安全性といった基本性能が重視。

安全に走ることができればどれでもよい、なるべく安い方がいい、
という購買行動に。
メーカーから見ると、ガソリン車は個性を出しにくい、
差異化の難しい商品になっている。
ハイブリッド車が売れている理由は、ガソリン代が安い上、
環境にやさしいという個性が際立っているため。

この視点で電気自動車を考えると、いろいろな可能性が見えてくる。
ハイブリッド車よりも環境にやさしい、という現在の延長で
考えられることだけではない。
多様な個性を持ったクルマを、設計者の考え方次第で
生み出せるようになるのでは、という期待。

電気自動車ではモーター、2次電池、インバーターといった機器を搭載、
ケーブルで接続すれば動くシステムになる。
どのユニットをどこに置くかは自由で、現在のガソリン車のような
厳しい制約はないため、アイデア次第でさまざまな自動車を
生み出せる可能性がある。

日産自動車のコンセプトカー「PIVO2」。
四輪すべてにモータを組み込み(インホイールモーター)、
インバーターも車輪ごとに組み込み、
四輪独立に向きなどを変えられる。
四輪を90度横にして駆動すれば、カニのように横ばいができ、
縦列駐車が非常に楽にできる。
左右の車輪を互いに逆に駆動することで、
車体を移動させずに方向だけを変える、
戦車のような超信地旋回さえ可能。

米ゼネラル・モーターズ(GM)と米セグウェイは共同で、
電動二輪車「セグウェイPT」をベースに、車幅を広げて
2人分のシートを載せたクルマを開発。
最高速度は時速56キロメートルで、充電1回当たりの
航続距離は40~56キロメートル。
自動車メーカーが考える電気自動車とは大きく懸け離れているが、
電気自動車の時代になると、こうした小型でユニークな車両が
たくさん生まれる可能性がある。

まだ2次電池のコスト低減が十分ではなく、
航続距離の少ないことが、電気自動車の最大の弱点。
それを弱点ではなく特徴ととらえれば、
近所に買いものに出かけたり、駅や学校までの送り迎えを
するためのクルマ、という新たな分野が見えてくる。
非常に小型だから、自宅でも出先でも駐車スペースを抑えられる。
普段はクルマをあまり使わないが、
雨が降ったときの送り迎えには必要、といった用途にはぴったり向く。
遠出をするときは、あらかじめ予定が分かるから、
レンタカーでガソリン車を借りてもよい。

電気自動車になると、エンジンやパワートレーンの部品が
大幅に減ってしまう。
部品メーカーにとっては大きな問題だが、
手をこまぬいているわけにはいかない。
変速機と車輪をつなぐドライブシャフト・アセンブリーなどを
現在生産しているNTNは、インホイールモーターに
荷重センサーを組み合わせ、制動機能も付加した
「インテリジェントアクスルユニット」を開発。
走行中にユニットが受ける接地荷重とコーナリング力に応じて、
モーターのトルクや回転数を調整したり、ブレーキを利かせたりする。

ガソリン車のエンジンルームなどに用いられる、耐熱性の高い
エンジニアリング・プラスチック(エンプラ)も、
電気自動車になると使用量が減ると、一般にはみられている。
より軽量化を求められる電気自動車では、
これまで汎用的なプラスチックを使っていた部分にも、
強度の高いエンプラを使う必要が出てくる、とエンプラメーカー。

電気自動車の登場・普及で見込まれるクルマの大きな変化は、
新たな価値を提供できるチャンス。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon090831.html

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