2011年2月22日火曜日

漢方最前線(1)ずばり的中、ツボ診断

(2011年2月16日 読売新聞)

漢方--日本に根付いた中国伝統医療。
明治以来主流からはずれていたが、
1980年代から漢方薬を使う医師たちが増え始めた。

根強かった医学界の反発も和らぎ、現在、漢方は医療現場に広く普及。
その最前線を訪ねる。

7か月待ちという、人気の医療ドックがある。
東京女子医大・東洋医学研究所の「漢方養生ドック」。
通常の臨床検査と同時に、漢方的な体質診断を行い、
食事、運動、節制など日常生活の養生法を伝える。

「この電極を左手で握ってください」
手渡された金属棒を握ると、針灸師の吉川信さん(48)は、
もう一つの電極を、記者の左右の手や足のツボに当て、
体の電気抵抗を読み取ってゆく。
良導絡(りょうどうらく)という針灸診断結果がプリント。

「筋肉のこりや痛み、目の疲労がありませんか?」
こころの余裕がない、手足が冷えやすいなど、体質がずばりと診断。

2年前に始まった漢方ドック、針灸以外にも、
同研究所長の佐藤弘教授(63)らが、受診者の手首に指先を当てて
脈の拍動の様子を調べたり、痛みはないか、夜は良く眠れるかなど、
会話をしながら「漢方データ」を集めてゆく。

漢方医学には、病気になる前の段階、未病を診断する方法があり、
未病を治して長生きにつなげる養生法がある。
これは、数値化できるようなものではないが、
1人ずつ体質に合わせたアドバイスができる」

それは、西欧近代医学とは全く違う診断体系。

「気」、「血」が、全身をバランスよくめぐることで健康が支えられる、
という身体論に基づいて、体が健康状態からどのくらい、
どの方向にズレているのかを診る。
漢方薬も、これに基づいて処方。

漢方医学は明治以降、政府の西洋医学一本化政策で、
臨床医療現場からはほとんど姿を消していた。

80年代、臨床現場で漢方医療に取り組む医師たちを取材、驚いた。
患者の身体に丁寧に触れ、患者の訴えに真剣に耳を傾ける
医師の姿があった。
「漢方では、脈に触れたり、訴えを聞かないと診断できない」(佐藤教授)

臨床検査データに頼り、患者には触れない医師、患者の顔も
きちんと見ない医師が増えている傾向とは、正反対。
現代の患者の多くが求めているのは、
身近なまなざしで、心身の健康を見守ってくれるこうした医療では。

果たして漢方への蔑視、批判は次第に減り、
漢方薬を使用する医師は増え続けた。
最近の臨床医を対象とする実態調査では、
80%以上の医師が、「漢方薬を使用する」と回答。
漢方診療機関は、全国に広がっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/16/132473/

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