2009年12月24日木曜日

早稲田大学の黒澤教授「トップ主導でISOを生かせ」

(日経 12月12日)

鳩山由紀夫首相が、温暖化ガス削減目標について、
2020年までに1990年比25%減を掲げ、産業界に波紋。
厳しい数値だが、技術革新が促されて日本経済に
活力を与えるという見方も。
企業は、どのような姿勢で挑むべきか?
早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科の黒澤正一教授。

——25%削減目標をどうみているのか?

25%削減の宣言は、企業の環境経営のあり方に一石を投じた。
この数値は、先進国全体で2050年までに80%以上の削減という
目標を踏襲し、妥当性を認めなければならない。
高いハードルを前に、早くも真水による25%削減をあきらめ、
途上国・新興国の削減に対する貢献の代償や排出権取引で
賄おうとする向きが大勢。
環境経営の技術を駆使し、国内のみでの25%削減の具現化を提言したい」

目標は、必要だからこそ設定される。
現在の力量、慣習、インフラ、技術水準では、
簡単には達成できなくても、不必要になるわけではない。
多くの企業は、『必要な目標』ではなく、『できる目標』として
低水準の数値を勝手に設定し、知らずに現状を追認してしまいがち。
まず現状否認からスタートし、温室効果ガス削減に向けて
業務変革を繰り返すことによってのみ、到達できる。
現状否認を継続させるけん引役として、
環境マネジメントシステム(EMS)の役割が、一段と重要

——具体的にはまず何をすべきなのか?

我が国では、EMSが瀕死の状態にある。
今年4~6月、日本適合性認定協会(JAB)による
ISO14001適合組織数が前期に比べ減少に転じ、
7~9月期は2期連続減。
ISO14001やEMSは、『負担の重い看板代』くらいの印象では。
ISO卒業を宣言する例まである。
それは、規格の要求事項についての誤解や曲解によるもの。
システムを正しく構築し、厳格に運用する必要がある」

——どのあたりが間違った理解なのか?

「経営トップの姿勢を例に。
トップは、担当者まかせにしていないか。
ISOでは、トップが継続的改善にかかわるという明文の規定。
消費電力が2%減ったとか、廃棄物処理費用が5%減ったとか、
パフォーマンスに偏重せず、将来への信頼確保が必要。
トップが方針を示して、高い目標を設定する仕組みが必要。
ISOの精神を正しく踏襲した効果的なPDCA(計画・実行・評価・改善)
サイクルを実現させる必要。
EMSの健全化、“第2世代”EMSにバージョンアップしなければならない。
ISO14001が発行され、これまでは練習期間とも言ってよい。
それなりに市民権を得たものの、今のままではいけない」

——企業が参考にできる事例はあるか?

大阪の歯ブラシメーカーが、第2世代EMSに向けて果敢に挑戦。
紙や電気の無駄を省くといった第1世代EMSからの卒業を宣言。
目標として、『温室効果ガスの90%削減』を掲げた。
歯ブラシという製品で、90%削減を実現するにはどうすべきか。
試行錯誤して得られた答えの1つが、ブラシの付いた頭の部分だけを
切り離し、交換できる製品を開発。
柄の部分を捨てず、いつまでも使ってもらうため、
指で押さえる部分に、ネコの肉球のような手触りのアクセントを付けた。
これで、70%までの削減につなげた。
トップマネジメントで動いており、社内に良い意味での緊張関係が
できている好例ではないか」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091211.html

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